流行り出した遺伝子検査ビジネスに突きつけられた疑問符とは?


注目を集めている個人向け遺伝子検査ですが、その有効性に疑問符もつき始めています。

この数年、遺伝子検査や遺伝子検査ビジネスに多くの注目が集まっています。10年前に比較して、遺伝子検査のコストも下がり、敷居が低くなったことから遺伝子検査ビジネスに取り組む企業が増え、関心を持つ人も増え始めています。本サイトをご覧の皆様の中にも、関心を持たれている方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、現在のところ、企業参入の相次ぐ廉価での遺伝子検査には、その科学的な有効性に対して疑問符がつけられています。厚生労働省でも、規制の必要性について話し合う専門家検討会が立ち上がりました。現在主流の遺伝子検査ビジネスとはどのようなもので、個人はどのように向き合っていけば良いのでしょうか。

遺伝子検査ビジネスとは?

遺伝子検査ビジネスとは、その人の遺伝子情報を検査することで、将来の罹患リスクや個人の体質、あるいは潜在的な才能を測ろうというヘルスケアの最先端分野です。10年ほど前までは、個人の遺伝子情報の検査には莫大な費用が必要で、個人向けビジネスとしては非現実的な分野でした。しかし、近年の技術革新や検査項目を絞ることで費用が大幅に下落、敷居が下がったことで、個人向け遺伝子解析サービスに取り組む企業が増加しています。

日本においても、2013年の段階で700もの企業や機関が、遺伝子検査ビジネスを手がけているという報告があります(経済産業省調査)。その後、特に2014年から2015年前半にかけて、ヤフージャパンやDeNAなど著名なIT企業を中心に、遺伝子検査ビジネスへの進出を表明する企業が相次いだことで、世間の注目を集めるようになりました。費用も検査代が数万円〜十数万円ほどですので、健康に関心の強い方や、新しいもの好きの方、病院で勧められた方などを中心に検査してみる人も増え始めています。

なお、そのサービスの幅は広く、癌や生活習慣病などの罹患リスクの検査を行うものや、頭髪の禿げやすさの検査をしてくれるもの、あるいは、その人の隠された才能の発見や、肌質に関連する遺伝子検査から化粧品のお勧めを教えてくれるものまで多岐に渡っています。

遺伝子検査にIT企業が取り組むわけ

遺伝子検査ビジネスに取り組む企業は増えた理由は、関心の高まりだけではありません。遺伝子検査のビジネスの将来的な収益性に、ビジネスチャンスを感じている企業が多いためです。

遺伝子検査のビジネスモデルでは、まず検査料収益が入りますが、それだけがメインではありません。まず、遺伝子の検査結果に基づいて申込者に対してマーケティングが可能であり、健康食品やサプリメント、あるいはダイエット関連ビジネスなどの紹介が可能になります。また、化粧品購入希望者のための最適な商品提案を目的と謳っているビジネスも、ここに含まれるでしょう。

それ以外の大きなビジネスチャンスは検査結果というビッグデータの収集と、製薬企業と共同しての新薬開発です。有名なところとして、アメリカではGoogleが出資する遺伝子検査企業「23andMe」はそのような意図を持っており、日本でもDeNAの行う遺伝子検査ビジネスはそのような観点から取り組まれていると言われています。

投げかけられた有効性への疑問符

このように注目が集まる遺伝子検査ビジネスですが、批判も始まっています。その一番は科学的な有効性への疑問符でしょう。

例えば癌や生活習慣病などは、多因子疾患(単一ではなく、複数の遺伝子の異常やその組み合わせによって生じる疾患)と言われており、また遺伝子以外に生活習慣などの環境要因も大きい分野です。まだまだ研究段階の分野ともいわれており、要因の完全な特定にも至っていません。そのような中、近年参入の相次ぐ遺伝子検査ビジネスは検査コストを下げるために、チェックを行う遺伝子の種類を1種類、あるいは数種類ほどにまで絞っています。そのため、その検査によって本当に信頼できる検査結果が得られるのかに疑問符がついているのです。事実、複数の業者に遺伝子検査を依頼した場合、その検査結果がまちまちであり、何を信じたら良いのかわからないという苦情も寄せられています。

また、これは法律的な問題なのですが、現在の医師法では遺伝性の病気の診断はできません。遺伝子検査で解析を行ってよいものは、後天的な生活習慣病などの罹患リスクにとどまり、遺伝性の病気については、可能性がある程度の診断結果しか伝えられないようになっています。

個人として、遺伝子情報にどう向き合うか?

医療関係や、研究職関連の方のコメントを総合すると、現状では民間企業が廉価で提供している遺伝子検査ビジネスは、「あくまで参考程度」という見方で一致しています。もちろん参考程度とはいえ、少し心配な検査結果が出たことで、生活習慣を健康的なものにするよう見直すきっかけになり得るわけで、筆者も否定する立場ではありません。ただ、良くない検査結果だからといってあまり不安がらず、どうしても心配な場合は病院で受ける一般的な診断の頻度を上げれば良いと思われます。

ただ、今後研究や技術革新が進む中で、将来的に、検査の精度はおそらく上昇していくと思われます。個人として真剣に取り組むのは、科学的なエビデンスが整った後でも良いのかもしれません。

なお、あまり倫理観のない業者に検査を依頼すると、遺伝子検査の過程で入手した個人情報の管理がずさんな場合や、検査結果のマーケティング利用を過度に行い、例えば、プッシュ広告や押し売りが多くなるといった可能性があります。興味があって利用してみる場合には、検査範囲や検査企業の評判などをよく調べた方が良いでしょう。


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