初めて調査が行われたがん患者の10年生存率から分かること


ガン患者の「10年生存率」が初めて発表されました。国立がん研究センターの発表で、ガンを患った人の10年後の全体での生存率は58.2%とのことです。ガンの種類によってかなりバラつきがあり、例えば、甲状腺ガンは90%以上、一方、肝ガンは15.3%や膵臓ガンは4.9%となっています。

2015年から2016年初頭にかけて、女優の川島なお美さんや、ハリー・ポッターシリーズのスネイプ先生役でお馴染みの俳優アラン・リックマンさんなど、国内外問わず多くの著名人がガンによって亡くなりました。また、ガンは日本人の死亡原因の約3分の1を占める死因順位の第1位であり、日本人の2人に1人はガンになると言われていることもあって関心の高い分野です。また、ガンは不治の病と広く認知されていますので、将来のガンリスクに不安を覚える人や、ガンと診断された場合に大きなショックを感じる人は多いでしょう。

しかし、大変残念なことに、多くの人々の関心の高いテーマであるにも関わらず、ガンについての知識はそれほど多くの人が持っているわけではありません。ご自身やご家族の健康のため、そして万が一罹患してしまった場合の生活の質(Quality Of Life)のため、正しい知識を身につけましょう。

そもそもガンとはどのような病気か?

まずは、ガンについての基本的なことをおさらいしましょう。人体は約60兆個の細胞で構成されており、その細胞が分裂を繰り返しながら古い細胞と置き換わっていくことで、人体は維持されます。何度も分裂がされていく中で、分裂がうまくいかなくなり、古い細胞との置きかわりに齟齬をきたすと人体は老いていきます。また、通常は人間の細胞は分裂を繰り返せるリミットが決まっており、それが寿命といえます。一方、がん細胞は特殊な細胞であり、その分裂回数に制限がありません。ある意味で不死身の細胞といえるのですが、人体の構成を無視して異常分裂をすることで、内像や血液を破壊し人を死に至らしめる病気です。

ただ、その発生原因は完全には解明されていません。科学者によって意見が異なります。ただ、最大公約数的なものはあり、細胞内の遺伝子に異常が発生することで、分裂の制御ができなくなること、また遺伝子異常の原因には元々の遺伝素質や、環境要因、生活習慣など様々なものが考えられること、1つの要因だけではなく複数の要因の組み合わせによって発生する場合もあることなどが共通見解とされています。
(なお、最近数万円程度でがんの罹患リスクも測定できるとうたう遺伝子検査サービスが増えていますが、ガンの発生要因自体が完全特定されていないため、検査の有効性に疑問符が投げかけられています。)

一度ガンにかかってしまった場合は、外科的な手術によってそのがん細胞を取り除くか、抗がん剤や放射線などを用いてガン細胞を殺すような方法が一般的です。ただし、治療による副作用の問題も大きく、治療後の生活の質(Quality Of Life)をどう保っていくのかは長く課題となっています。

日本人の2人に1人がガンになるのは本当か

日本人でガンを患う方は多く、1981年以降日本人の死亡要因の第1位はずっとガンが続いており、毎年3割ほどの方がガンによって亡くなっています。また2013年の国立がん研究センターの調査によれば、男性で62%、女性で43%の方が一生涯の中でガンと診断されます。確かに、これは国民病といえる規模でしょう。

ただし、この数字を読み解くには注意も必要です。まず、ほぼ2人に1人がガンになるとはいっても、現役世代のうちにガンとなる可能性は低く、10%にも満ちません。ガン患者のほとんどの方は、60歳を超えて平均寿命が近づいてから罹患しており、そもそもの死亡リスクが高い年齢になった後の話ともいえます。

もちろん、少しでも長く元気に生きたい、生きて欲しいと多くの方は思うことでしょう。しかし、この日本人の2人に1人はガンになるという数字は、特にがん保険の広告とセットで使われることが多いので、保険の検討などをする際には、なってしまった場合の治療費や保障範囲、保険料を含め、冷静に数字に向き合って頂きたいと思います。

10年生存率と早期発見の重要性

冒頭の話に戻り、ガンの10年生存率についても見てみましょう。この数字は国立がん研究センターが2016年1月20日に発表したもので、1999年から2002年にガンと診断された方35,000人の追跡調査になります。これまでも類似の調査はありましたが、調査機関、調査数ともにここまで大規模なものは初めてであり、注目を集めています。

調査の結果、がんと診断された場合の10年生存率は58.2%です。また、5年生存率は63.1%であり、10年生存率とそこまで大きな違いはありません。ガンに罹患してしまった場合は、初めの5年間を乗り越えられるかどうかが勝負といわれる所以です。ただし、この傾向はガンの種類ごとに異なり、胃ガンや大腸ガンは5年生存率と10年生存率に大きな違いがありません。しかし、乳ガンや肝臓ガンや5年経過後も生存率が低下傾向にあり、長期での経過観察が必要とされています。

また、その他のポイントは診断されるまでの進行度と、その後の生存率の関係です。以下をご覧ください。

病期1(がん細胞が筋肉にとどまりリンパに移転していない)
10年生存率:90.1%
5年生存率:86.3%

病期2(がん細胞が筋肉を超えて少し広がっている)
10年生存率:76.3%
5年生存率:69.6%

病期3(がん細胞が広がり、リンパ節まで転移している)
10年生存率:46.0%
5年生存率:39.2%

病期4(がんが他の部位にまで転移してしまっている)
10年生存率:17.4%
5年生存率:12.2%

出所:国立がん研究センター「全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について 10年生存率初集計」(2016年1月20日)

ご覧の通り、発見時の進行度による5年生存率と10年生存率の間の大きな違いはありません。ただし、明らかに5年経過時、10年経過時共に早期発見時の生存率の方が高いです。ガンについては早期発見がとても重要であり、定期的な健康診断が大切といえるでしょう。


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