押さえておきたい投資用不動産の税務②〜確定申告の基本と青色申告2/2〜


不動産投資は事業的規模で行えるかどうかで、青色申告の節税効果を得られるかどうかが変わります。

相続と不動産はとても関連の大きいテーマです。相続財産に占める自宅の割合が大きいということもありますが、相続税の課税対象になる方であれば、賃貸物件などの不動産オーナー、不動産投資家であることも多いためです。また、相続税の対策として投資用不動産の購入をされる方も多くいらしゃいます。

ところが、不動産オーナーの方は物件の購入や相続税の減額のことだけを考えてしまい、その後の賃貸経営についてはあまり考えられていない方も大勢います。
しかし、不動産投資の目的が資産の保全や増加、円満な子孫への移転にあるのであれば、その投資用不動産に関する相続税以外の税務や節税のポイントについても押さえておく必要があります。

【参考記事】
押さえておきたい投資用不動産の税務①〜確定申告の基本と青色申告1/2〜

事業的規模と業務的規模の違い

前回記事にて、確定申告には青色申告と白色申告の2種類があることは述べました。そして、個人の所得税の不動産所得についての青色申告は、さらに、所有不動産の規模に応じて下記のように「事業的規模」と「業務的規模」の2つに分かれます。

・事業的規模(「5棟10室」以上の場合)…業務を大規模に行い、少なくともそれで生計が立てられる程度の規模
・業務的規模(「5棟10室」に満たない場合)…事業と称するに至らない程度の規模

事業的規模は、5棟10室基準と言われており、1棟マンション等であれば5棟、ワンルーム不動産投資等の区分所有であれば10室がなければいけません。不動産投資を始めたばかりの人にとっては、なかなかに高いハードルになります。

青色申告は、複式簿記による記帳や青色申告決算書に貸借対照表・損益計算書の作成などを満たすことで、より多くの優遇を受けることが可能です。不動産所得の場合、「事業的規模」として認定されると、65万円の青色申告特別控除や親族への給与を青色事業専従者給与(事業専従者給与)として経費計上が出来ます(詳細は後述)。

また、事業的規模か業務的規模かの切り分けなのですが、その判定基準は社会通念により判断することとなっています。しかし、それでは曖昧ですので、上述の通り形式的な事業的規模の判定基準として5棟10室という基準が設けられています。
「5棟10室」の判定方法ですが、例えば、※”棟”は一戸建、”室”はアパートやマンションの室数のことを指し、一戸建て1棟は2室扱いになります。例えば、一戸建て1棟とアパート8室でしたら一戸建て1棟は2室なので、2室+8室=10室で事業的規模と判定されます。他に一戸建て5棟でも成り立ちますし、一戸建て4棟にアパート2室などでも成り立ちます。
ほか、一般的に土地(駐車場を含む)の貸付の場合は、明確な規定はありませんが、5件で貸家1室と換算して判定します。駐車場では車5台で1室分という計算になります。

ただし、この規定はあくまで規模が「事業的」か「業務的」かの判定を目的としていますので、例えば6室でも1室の平均家賃が50万円/月で年間の家賃収入が3600万円となり、社会通念に照らしても事業的規模と言えそうな場合はその認定を受けられる場合があります。また、不動産の以外に「事業的規模」と判断される事業を営んでいる場合は、不動産収入部分もその事業に組み込まれる形で事業的規模としての優遇を受けられます。

事業的規模の場合の青色申告の節税効果

①65万円の青色申告特別控除

事業的規模であり、かつ申告書類の要件を満たしていれば不動産所得の決算書を作るときに、収入から経費を差し引いた金額から、青色申告特別控除として、さらに65万円を控除することができます(業務的規模や申告書類の要件を満たしていない場合の控除額は10万円となります)。なお、この控除は年度の途中に開業した場合も満額受けることができます。

単純計算になりますが、例えば所得税率が20%だった場合、13万円(65万円×20%)の節税になります。

②純損失(赤字)の繰越控除

不動産所得の損失の金額がある場合で、損益通算してもなお控除しきれない純損失は、翌年以後3年間(法人は3年間)の繰越控除を行って将来の税負担を減らすことに使えます。また、前年に遡っての繰戻還付を受けるという風にも使えます。

③家族への給与が必要経費にできる青色事業専従者給与

事業主が生計を共にしている家族を従業員として雇用し、必要経費としてその給与を課税所得から差し引くことができます(これが白色申告の場合ですと、配偶者は86万円、その他の親族は一人につき50万円までしか控除できません)。

ただし、経費の対象となるのは労働の対価として相応と認められる範囲の金額に限られます。節税目的で労働実体も無いのに過分か給与を支払っていても必要経費と認められないのでご注意ください。

④30万円未満の減価償却資産を一括で経費に参入可能

減価償却資産(建物などの大きなものからパソコンなども含む)を取得した際、通常は耐用年数に応じて数年間かけて経費化されていきますが、30万円未満の減価償却資産の場合は購入年度にて経費参入が可能となります(白色申告の場合は10万円未満)。

事業的規模の青色申告のために必要な手続き

最後に、青色申告を事業的規模にて行うために必要な手続きをまとめます。

①申請書の提出

まずは、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。なお、基本的には開業後2ヶ月以内、あるいは適用を受けたい年度の確定申告期限(3月15日)までに提出しなければ、その年は青色申告の優遇を受けることはできません(白色申告となります)。

②複式簿記での記帳と決算書類の作成

青色申告でかつ事業的規模の適用を受けるためには、複式簿記による帳簿作成が必要になります。また、1年間の損益計算書(売上と経費を記載)と事業年度の始めと終わり2つの貸借対照表(資産および負債を記載)も毎年作成しなければなりません。これらを決算書として翌年の3月15日までに提出します(白色申告でも帳簿提出は必要ですが、だいぶ決算書などは不要です)。
また、帳簿や受け取った請求書・領収書などの保存義務として、5年間または7年間という期間が定められています。

青色申告は多少の手間の増加を伴いますが、税制特典としては白色申告と比べて有利なポイントがありますので、よく理解して確定申告に備え、損のないようにすることがお勧めです。


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