事業承継のありがちな失敗〜事業承継と株式承継の違いとは?〜


未上場会社のオーナー経営者にとって自社をどのように次世代へバトンタッチしていくという事業承継は仕事の総仕上げとして重要なテーマです。
事業承継に失敗する原因の一つは、「事業承継」と「株式承継」との切り分けができていないことにある場合があります。

全国の経営者の平均年齢が上がり、経営者の代替わり=事業承継が日本経済全体としても大きなテーマとなっています。経営者の平均年齢は、2010年にはぎりぎり50歳代でしたが、2011年には60歳を超え、さらに2014年の調査では5人に1人が70歳以上となりました。企業にとって経営者の交代は一大事であり、間違った方法を選択してしまえば企業の経営に大きな悪影響を与えかねません。事業承継に関しての正しい考え方や適切な方法が広く世の中に広がる必要があります。

今回の記事では、事業承継を考えている企業のオーナー経営者の方向けに、事業承継の失敗原因にありがちな事業承継と株式承継の混同についてお届けします。

事業承継と株式承継の違い

「事業承継」という言葉は聞いたことのある方が多いでしょうが、株式承継という言葉は初耳という方も多いと思います。まず、それぞれの言葉の意味をきちんと整理しておきましょう。
事業承継は企業の経営者の代替わりのことを指し、「誰を次の経営者にするのか?」ということがテーマになります。一方、株式承継は、「企業の所有権である株式を誰にどう移すのか?」というテーマになります。
これだけでは意味の違いがよく分からないと思いますので、もう少し説明していきます。

特にオーナー経営者の方にとって、事業承継と株式承継はとても関連深い内容ですが、決して同じことを指すわけではありません。しかし、そうであるにも関わらず、両者を同じものとして混同してしまうことに事業承継の失敗要因が多くあります。
両者は別のものであり事業承継の方法(経営者を誰にどのように引き継ぐか)をまず先に決め、次に株式承継(自分の財産であるとともに会社の所有権である株式を誰にどのように引き継ぐか)の方法を考えるという事業承継の鉄則があるのです。
財産である株式は多くはご自身の相続人に引き継いでいくわけですが、会社の経営は相続人である親族に限る必要はありません。オーナー企業にとって経営の安定のためには所有と経営の一致が望ましい場合もありますが、企業の次世代への存続にとっては、様々な考えや選択肢を検討し、ベストな選択をしていくことが望ましいことです。

事業承継の4つのパターン

事業承継の方法は主に4パターンしかありません。

①親族内承継

オーナー経営者の方の家族や親族が次の経営者となる方法です。創業家が元気でご子息が会社経営を引き継ぐ意思と能力を有している会社や非上場企業の場合に一般的な方法といえるでしょう。この場合は、事業承継と株式承継とは基本的には一致します。

②親族外承継

これは親族に限定せず、社内の優秀な人間に次の経営者になってもらう方法です。企業の存続にとっては、長年会社のために働き、会社をよく知り関係者への人望もある経営者をトップに据えることが良いこともあります。この場合、事業承継と株式承継とを切り分けて考える必要が出てきます。

③M&A

M&Aも事業承継の一形態です。自社の事業をより規模の大きな第三者がM&Aにより引き継ぎ、会社の買収先企業の社長が実質的な次に経営者になります。親族にも社内にも次世代の経営者がいなかったり、将来的な展望等を考えるとき規模を大きくした方が競争力を確保できるような場合、M&Aは有力な選択肢となります。従業員や取引先との関係もありますから、M&Aを見据えたプランニングも必要です。

④廃業

廃業は、次の経営者を決めないという事業承継の亜種になります。この方法は企業に雇用されている方の生活や取引先への影響が大きいため、避けたいと思われる経営者が多いでしょう。ただ、事業の性質上もう伸びる芽がなく、将来に暗い見通ししか描けないのであれば傷が浅い内に廃業するという選択肢も止むを得ない場合があります。

事業承継を検討する場合、基本的には①→②→③→④の優先順位で検討を行う流れが王道です。

事業承継の方法によって株式承継の方針は異なる

次に株式承継の方法について考えてみましょう。ここでのポイントは、事業承継の方法を①〜④のどれにするのかで、株式承継の方針が大きく異なるということです。典型的なのは①と③の違いでしょう。①の親族に会社を継がせる場合、その後継者に株式を譲るわけですが、相続税贈与税の負担を考えると株式の評価は安ければ安いほど助かります。一方、③のM&Aで他社に売却をする場合、会社の株式は1円でも高く買い取って貰った方が望ましくなります。②と④の場合はケースバイケースと言えるでしょう。

このように、株式承継の方針は事業承継の方針に依存しますので、事業承継の方法を決めずに株式承継のことばかり考えるということはあり得ない話です。しかし、ここが注意点なのですが、社外の事業承継の関連事業者(銀行やM&Aの仲介企業など)にとっては、誰を次の経営者にするのかという事業承継についてより、株式の移動を伴う株式承継の方にビジネスチャンスが多いのです。詳細は別記事に譲りますが、M&Aの仲介を成功すると莫大な売却手数料が入りますし、親族に株式承継する場合も金融機関は資産管理会社方式の提案などで融資案件を作ろうとしてきます。

親族に継がせることが良く、会社を売却することがいけないことでないのですが、何が最適な答えなのかは会社ごと経営者ごとの個別事情により異なります。ただ、外部の事業者だとそうした事業承継の本質に向き合わず、自分たちのビジネスを取ることありきでの提案ばかりしてくることがありますので、事業承継を考えるオーナー経営者の皆様には、周囲に流されずに本質や自分の本心、会社にとって何が最適な選択なのかに向き合っていただければと思います。深く経営者と向き合うことの出来るアドバイザーや専門家も増えていくことが望まれます。


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