押さえておきたい投資用不動産の税務④〜開業の届けと開業費の節税1/2〜


不動産投資を始める際には、開業の届けを出さなければなりません。

相続と不動産はとても関連の大きいテーマです。相続財産に占める自宅の割合が大きいということもありますが、相続税の課税対象になる方であれば、賃貸物件などの不動産オーナー、不動産投資家であることも多いためです。また、相続税の対策として投資用不動産の購入をされる方も多くいらしゃいます。

ところが、不動産オーナーの方は物件の購入や相続税の減額のことだけを考えてしまい、その後の賃貸経営についてはあまり考えられていない方も大勢います。
しかし、不動産投資の目的が資産の保全や増加、円満な子孫への移転にあるのであれば、その投資用不動産に関する相続税以外の税務や節税のポイントについても押さえておく必要があります。

以前の記事で、個人で不動産収入(不動産所得)がある場合の所得税の確定申告の基本事項と節税のために取り組むべき青色申告についてお伝えしました。

不動産投資を始めるということは、不動産賃貸事業を営むということであり、毎年の確定申告の前にまず開業の届けを出す必要があります。そして、前回お伝えした青色申告の申請も同時に行いましょう。青色申告をするためには「青色申告承認申請書」を所管の税務署へ提出する必要があり、遅くとも開業の日から2ヶ月以内が期限となります。提出が遅れてしまった場合は、確定申告期限までに提出すれば翌年分から適用可能です。
まだ不動産投資を始めていない、あるいは準備中の方にとって、確定申告のためにすることは不動産を購入してからでも良いのではと思われる方もいるかもしれません。しかし、開業の前に発生する費用である「開業費」も初年度の確定申告時に経費申請が可能であり、重要な節税ポイントです。

今回の記事では、個人が不動産投資を始めた開業の際に必要な手続き等の節税のためのポイントをお伝えします。

【参考】
押さえておきたい投資用不動産の税務①〜確定申告の基本と青色申告1/2〜
押さえておきたい投資用不動産の税務②〜確定申告の基本と青色申告2/2〜
押さえておきたい投資用不動産の税務③〜名義で変わる所得税〜

開業時に必要な手続き

不動産事業を始めるにあたって税務署等に届けなければならない書類があります。

ワンルームなどの区分所有から始める不動産投資では、開業届と青色申告承認申請書の提出が重要なポイントです。
不動産所得の青色申告では、5棟10室基準がありますので、経費算入ができる取得費等により初年度の不動産所得が赤字になる見込みの場合は10万円控除も関係がありませんので1年目から気にする必要はないかもしれません(10万円控除は所得が黒字の時のみ差し引けるもので、赤字の場合には差し引けるものがないので影響がありません)。
*5棟10室基準については「押さえておきたい投資用不動産の税務②〜確定申告の基本と青色申告2/2〜」での解説を参照下さい。

減価償却方法は、建物の減価償却方法は従来より定額法のみで、さらに平成28年度の税制改正により平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物の減価償却方法について、定率法が廃止になり、定額法のみになっています。定率法の方が早期に減価償却費を多く取れ所得を抑えられるメリットがありましたが、減価償却方法ではあまり気にする必要はありません。

消費税は、課税事業者になることによる消費税還付スキームも度重なる税制改正により基本的に封じられていますので、不動産投資を始める当初はあまり気にしなくていいでしょう。不動産投資の場合には、居住用不動産は賃料収入は消費税が非課税ですが、商業施設や駐車場などの賃料収入の場合は消費税の課税対象となり収入が1000万円を超えると「課税事業者」になります。該当する可能性がある場合は詳しく確認しましょう。

ポイントは上記ですが、以下、順に不動産事業開始時に必要な税務署への提出書類を確認していきましょう。

①個人事業の開廃業届出書

事業開始の日から1ヶ月以内(その年の1月15日までに開業した方は3月15日まで)に提出する必要があります。

②所得税の青色申告承認申請書

前回お伝えした税務上の優遇の多い制度です。
原則、承認を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合には、開業の日から2か月以内)に提出する必要があります。
(*上述の通り、不動産所得の場合の「5棟10室基準」も理解しておきましょう)

また、相続により賃貸不動産を取得した場合は、下記のようになっています。
・被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以後に業務を承継した場合)→業務を承継した日から2か月以内
・被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日)→死亡の日から4か月以内
・被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日) →その年12月31日
・被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日) →翌年2月15日

③青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告に基づいて、家族などを専従者として雇用しその給与を経費認定するために必要な届出で、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日までが提出期限になります。
ただしその年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内が提出期限になります。

青色事業専従者給与の額等を変更する場合には、遅滞なく提出する必要があります。
(*上述の通り、不動産所得の場合の「5棟10室基準」も理解しておきましょう)

④所得税(消費税)の納税地の変更に関する届出書

ご自身がお住まいの住所以外に事業所を持ち、その所在地等を納税地とする場合などに届け出が必要です。なお、届け出は所轄の税務署に申告します。開業時以外にも変更がある場合は随時届け出が必要になりますが、指定を受けている方は除きますのでご注意ください。

⑤所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却資産の償却方法および棚卸資産の評価方法を選定する場合に届け出が必要で、開業時ではなく、開業年分の確定申告期限(翌年の3月15日)までに提出します。
経費認定される減価償却資産や棚卸資産の計算方法を決めるための届け出で、定率法で減価償却できるものは定率法として提出するのが基本ですが、平成28年4月1日以降取得の不動産においては減価償却方法は建物も附属設備も定額法のみになっており、届出がなければ定額法になりますし、不動産事業において棚卸資産が生じるケースは少ないですから、備品が多いなどの場合には確認事項として頂ければと思います。

なお、減価償却資産は直接販売とは結びつかないが事業を行う上で必要となる資産(建物や設備が大きい)のことで、棚卸資産は後に販売することを目的としている商品や材料などです。それぞれ不動産事業に当てはめますと、減価償却資産は不動産の建物部分(土地は資産ですが、減価償却の対象になりません)など、棚卸資産は例えばご自身の持つ不動産内で同時に飲食品の自動販売機経営も行い、そのため仕入れた飲食物などが該当します。

⑥給与支払事務所等の開設の届け出

この書類は従業員の雇用の日や、事務所等の開設、移転又は廃止の1月以内に提出が必要です。なお、従業員の雇用がない場合は不要です。
(*親族への給与の支払いについて影響がありますので、不動産所得の場合の「5棟10室基準」も理解しておきましょう)

⑦源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

本来であれば、従業員を雇用し給与を支払う場合、所得税を源泉徴収し翌月10にまでに支払う必要があります。しかし、それでは業務の負担になるため、雇用人数が10人未満ならば年2回の源泉所得税の納付で済むという特例制度です。申請は随時可能ですが、申請後のものしかこの特例の対象にはなりませんのでご注意ください。

⑧消費税課税事業者選択届出書

誤解されていることも多いのですが、消費税が一般消費者ではなく、その消費者に財やサービスを提供する事業者が納税義務者となります。そして事業規模によっては、課税事業者となるか免税事業者となるか選択可能であり、課税事業者となる際に必要な届け出となります。免税で済むのであればその方が望ましいと考えられる方も多いのですが、消費税には事業者への還付制度もあり、課税事業者であった方が有利な場合もあり得ます。
※消費税については別記事にて詳細をお伝えいたします。


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