退職金に関する税金の優遇措置とタックスプランニングへの利用法


法人オーナーや会社経営者にとって、個人や企業のタックスプランニング、もしくは事業承継を行っていく上で「退職金」の活用は重要なテーマです。
なぜなら退職金は所得税法上で様々な優遇措置が設けられており、法人(企業)から個人への資金移動を行う手段として適しているからです。

今回の記事では退職金に関する優遇措置や法人税との関係を見ていきます。

退職金の所得税上の優遇措置

まず、退職金の所得税に関する優遇措置から見ていきましょう。

基本的に退職金とは後払いの給与という扱いになりますので、法人から受け取った退職金は、受け取った本人の所得税や住民税の課税対象となります。支払った法人では支払時に損金算入されます。
所得税では、個人がどのようにお金をもらったかに応じて所得区分が分けられています。給料や役員報酬は給与所得という所得区分になりますが、退職金は退職所得という所得区分になり、区分が分かれています。
ここで、個人が受け取った退職金(退職所得)は、通常の役員報酬(給与所得)とは異なりいくつかの控除や特例が認められているのです。

キーポイントは、①退職所得控除、②課税対象が2分の1、③分離課税(税率は総合課税)の3点です。例えば、勤続年数30年の会社役員が1億円の退職金を支給された場合、手取りは8千万円以上になります。
1億円を給与でもらった場合、給与所得の累進課税の給与所得の最高税率55%と住民税10%で5千万弱の税金が掛かり、手取りは5千万円ちょっとになります(給与所得控除のみ考慮)。
1億円の支給で手取りが3千万円位も変わってくることになるのです。そのため、法人オーナーのタックスプランニングでは退職金のもらい方がすごく重要になってきます。

以下、順に退職所得の計算の内容を見ていきましょう。その際に下記の退職所得の計算式を参考にしてください。

【退職所得の計算式】
(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

上記の式で導き出される退職所得の金額が退職金の課税対象金額です。

①退職所得控除

日本の所得税は超過累進税率を取っているため、収入金額よって適用される税率をかけた金額が納付する所得税額になります。その計算の際に基準となる金額は総収入額ではなく、収入から各種控除などを差し引かれた後の「所得」が基準となります。

退職金の場合は、収入から差し引かれる控除(=退職所得控除)が通常の給与所得控除よりも遥かに大きくなるのです。

【退職所得控除額】
・勤続年数20年以下の場合
40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)

・勤続年数20年超
800万円+70万円×(勤続年数−20)

②所得1/2の圧縮

一般的な給与であれば、控除を除いた金額が所得となり、所得税の課税対象金額となります。しかし、退職金の場合は控除が行われた後にさらに1/2の係数がかけられ、その金額が退職所得となるのです。課税の対象となる金額が大幅に下がるので、納税金額も大きく下がることになります。

③給与所得などとの分離課税

また、通常の所得であれば年間を通して合算された金額が課税対象となります。しかし退職金に関してはそうはなりません。その他の給与等の収入と計算が分けられ、分離課税になっています。
日本の所得税が採用している超過累進税率では、所得金額が大きくなれば大きくなるほど段階的に高い税率が適用されます。しかし、分離課税されている退職金はその年の給与所得と合算されないために、単純に給与所得等と合算された場合よりも超過累進税率での低い税率が適用されることになります。
分かりやすい数値例で言うと、給与を1億もらっていた人に不動産収入が追加で2000万あると、不動産と給与は所得が合算されますので、その2000万に55%の税率が掛かり1100万円の税額になります。分離課税の退職金では、給与を1億もらっていたとしても、2000万の退職所得が、所得税率は下記表の通り40%ですが所得が低い部分には段階的に低い税率が適用されますので、その分を調整するのが控除額になりますが、2000万円×40%-2,796,000円=520万円の税額になります。

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退職金を受け取ったとき(退職所得) 国税庁

法人税の観点からみた退職金

次に法人税の観点から見た退職金の取り扱いを見ていきましょう。

事業承継などに関する退職金の場合、所得税の安さを活用して企業からオーナー個人へ資金移動を行うような使われ方が一般的です。また、後継者として、例えばご子息などの身内にする場合、新社長の仕事のしやすさを考えて一部の年配の役員には勇退してもらう、ということがあるのですが、そうした年配の役員に対しても一定金額以上の役員退職金を用意する必要が生じる場合があります。
(親族内で承継を行う場合、親族外の古参役員が新社長に協力的でない、ひどい場合は邪魔をしてくるというようなことは残念ながら時々あります。)

代表取締役である社長をはじめ役員への退職金を役員退職金というのですが、役員退職金は要件を守れば損金参入が可能です。その分は法人税の課税対象となりません。

役員退職金=最終月額報酬×役員勤続年数×功績倍率
(功績倍率は役職ごとに異なりますが、一般的に最大でも3が限度と言われています)

上記の計算方法を「功績倍率方式」といい、役員退職金の算定方法として代表的なものとされています。上記の式の中では功績倍率が曲者で、明確な規定があるわけではありません。ただ過剰に大きな数字を適用しても税務調査の際に認められず、最大でも3倍ほどが一般的な数字となります。逆に、功績倍率を3以上にすると、その功績について合理的な説明が出来れば必ず否認されるわけではありませんが、税務調査の対象にはなりやすくなると言えます。

以上が退職金の所得税上の優遇や法人税との関係になります。このような退職金の特性を活用したタックスプランニングについてまた別記事にてお届けしてまいります。


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