遺言書の活用や養子縁組、LGBTカップルの相続問題


近年様々なメディアにてLGBTという言葉を目にする機会が増えてきました。レズビアン(Lesbian;女性同性愛者)、ゲイ(Gay;男性同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual;両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender;性同一性障害など)などを総称した略語で、ストレートではない性的マイノリティーを表す略語になります。

欧米を中心としたキリスト教文化圏では長らくLGBTはタブー扱いされてきましたが、20世紀後半にはその存在が徐々に社会的に認められるようになっていきます。そして20世紀の終盤からは同性婚の議論も本格化していきました。21世紀になると同性婚の解禁がヨーロッパで加速します。2015年にはアメリカでも全ての州で同性婚が認められるようになりました。

しかし日本では、徐々にLGBTの存在は社会的に認められるようになっているものの、同性同士の婚姻は法律的にはまだ認められていません。そのため同性のパートナーを配偶者とすることはできず、「相続の問題」が生じてしまいます。

家族として認められるようになったLGBTカップル

現在LGBTの認知や同性婚の推進は世界的に注目を集めています。特にLBGTの人がストレートの人よりも消費意欲が旺盛な場合が多い傾向があることからも、その存在がマーケットとしても注目を浴びるようになりました。また、企業もダイバーシティーの確保や人権尊重の姿勢を示すために、LBGTの方が勤務しやすい職場環境の実現に力を入れているところが多くあります。

また2015年には渋谷区が全国で初めて同性パートナーに対して同性パートナー証明書の発行を始めました。これは婚姻ではありませんが、この証明書があることで例えば入院などの際に家族の代わりに保証人としてサインが出来るようになります。この制度には世田谷区などが追随し、その他の自治体でも議論が始まっています。
生命保険の受取人に同性のパートナーを指定できるようにする動きも出てきています。第一生命保険は渋谷区発行の証明書で、ライフネット生命保険も死亡保険金受取人の異性間の事実婚に準じる「同性のパートナー」も受取人に指定できるよう指定範囲を拡大しています。
電通総研が2012年に行った調査では、日本では約20人に1人に当たる5.2%の回答者が「自分はLGBTだ」と答えているという調査結果が、また、電通におけるダイバーシティ(多様性)課題対応専門組織「電通ダイバーシティ・ラボ」が2015年に行った調査では、LGBT層に該当する人は7.6%と算出されています。この報告をもって、日本人に全体でどれだけのLGBTがいるかは定かではありませんが、少なくない人数がいるものと推察されます。

LGBTカップルの相続問題

上記のように日本でも徐々に認められ始めたLGBTや同性パートナーですが、現在はまだ同性での婚姻関係締結は認められていません。その他の国に比べて議論が進んでいないというのもありますが、憲法第24条に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し・・・」とあり、この条文が同性婚を法的に認めるボトルネックになっていると言われています。憲法の改正は国民投票という手続きを伴う大作業になるからです。
(憲法第十三条で認められている個人としての尊重や、憲法第十四条で認められている方の下の平等を根拠に同性婚を認めるべきであるという意見もありますが、そうしたことも含めて本格的な議論は行われていません。)

そのため、同性婚が認められている欧米諸国に比べて日本では同性パートナーの場合相続の問題が発生してしまいます。法的には同性パートナーは同居している他人でしかないので、自分の死後愛するパートナーに財産を残したいと思ったとしても相続権が発生しないからです。
渋谷区や世田谷区で発行される証明書も、法律上の婚姻ではないので、相続権は発生しません。
現在、法務省により民法の相続法制の見直しがされていますが、LGBTの問題の検討は大きな脚光を浴びていないのが現状です。

LGBTカップルの相続対策

上記の通り何の対策もしなければ同性パートナー間で相続を行うことは今の日本できません。
それでも同性パートナーに相続を行いたい場合の方法を考えましょう。

まず1つの方法は遺言書もしくは死因贈与契約によってパートナーへ財産を遺す法的手続きをしておくことです。遺言書は自筆証書遺言、公正証書遺言書、秘密証書遺言という3つの方法があります。
ただしこの方法には何点もあり、財産額が基礎控除を超え、相続税が発生する場合は法定相続人以外へ遺産を分けた場合に相続税を2割加算するルールがあるため、納税額の2割分の加算課税が発生します。また亡くなった被相続人に父母などの法定相続人がいた場合、遺留分の対象となるため財産を全てパートナーに渡したいと思ってそのような遺言書を残しても、法定相続人が財産の相続を放棄してくれれば問題ありませんが遺留分減算請求をされれば法定相続人に対してその分の遺産は渡さなければなりません。
そうした事のないよう生前によく話し合い問題を解決しておくことが大切ですが、LBGTというテーマは日本ではまだナイーブであり、理解を得るのに時間が掛かるかもしれませんし、話し合い自体が成立しない場合もあります。

そこでもし全財産を確実にパートナーに残したいという場合、現在は養子縁組を活用する方法があります。パートナーを養子にした場合、自分が亡くなった後の財産は異性の配偶者や実子がいない場合全て養子となったパートナーに渡り、他の方に遺留分は発生しません。
この方法にも難点はあり、養子縁組は年上の方が養父母に、年下の方が養子になる形しか認められません。そして養父母が亡くなった場合は前述の通り養子に財産が行きますが、養子が亡くなった場合は実親と養親に平等に相続権が発生します。そのため、法定相続分の1/2の遺留分が実親に残ります。

また、相続税の2割加算の対象にもなります。相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

このように現行法制では同性パートナー間の相続にはどうしても課題が残るため、制度の改正が今後求められていくことになりそうです。


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