リスク運用定番化なるか〜企業型確定拠出年金の運用利回り〜


老後資金準備のためという理由で資産運用に関心を持ち、実践する人は年々増えています。しかし、まだ個人のファイナンシャル・プラン上でリスクをとって資産運用を行うことには知識や経験もなく抵抗が大きいという人も大勢います。将来必要な資産を既に築いている人や、多額の財産や不動産を相続する予定がありキャッシュフローが確保されている人、給与による貯蓄などで確保できる目処がある人は無理にリスクをとって運用する必要はないかもしれませんが、現実には資産や収入に余裕がある人ほどきちんと資産運用にも取り組み、より豊かなライフスタイルを実現しており、きちんと資産運用やタックスプランに取り組まない人との差はより開いていく傾向があります。

近年は多くの一般の会社員でも、気付かぬ間にある程度リスクをとった資産運用を行わなければならない状況が生じてきました。老後資金として企業年金制度を運用していた会社の多くが、確定給付に近い退職適格年金から「確定拠出年金」へと制度を切り替え、2000年から比較して企業型確定拠出年金の加入者が500万人近くまで増加しているからです。

今回の記事では企業型確定拠出年金の現状と、求められている運用利回りについてお届けします。

企業型確定拠出年金とは?

まず企業型確定拠出年金がどのような制度なのかについて確認をしましょう。
民間企業にお勤めの方の場合、年金はまず国民年金(一階部分)と厚生年金(二階部分)に加入します。両者合わせた退職後の支給金額は、厚生年金が所得によって掛け金と支給金の両方が変わるため一概には言えません。しかし合わせて月23万円前後が平均的な支給金額になります。国民年金は全ての国民に加入が義務付けられており、厚生年金は全ての給与をもらう給与所得者(会社員)に加入が義務付けられています。
上記に加え、企業年金制度を運用している会社にお勤めの方の場合は、いわゆる三階建として企業年金の支給金額が加わります。企業年金のルールや支給金額は運用を行う企業ごとに異なっているのでどのような制度で運用しているのかを含めてよく確認をした方が良いでしょう。

企業年金には確定給付型確定拠出型があり、確定給付型は会社が年金用の掛け金を会社が拠出して運用し、あらかじめ支給金額も決まっているというものです。従業員への支給(給付)の金額があらかじめ確定しているので確定給付と言うわけです。資産運用リスクは会社が負担します。支給金額は会社ごとに運用を行なっているため、会社にとって運用利回りが良ければ少ない掛け金で年金の支給ができますし、逆に運用成績が悪ければ支給金額の負担が想定よりも増えてしまうことになります。
一方、確定拠出年金は会社が掛け金を負担することは同じですが、支給金額の保証はしません。そして掛け金の運用は個人が行うという仕組みになります。会社から運用原資となる拠出金の支給の金額が確定しているので確定拠出と言うわけです。資産運用リスクはそれぞれの従業員が負担します。

実は両制度とも比較的新しい制度で、確定拠出年金は2001年、確定給付年金は2002年に制度が開始したばかりです。それまでは退職一時金や退職年金を退職適格年金制度というものを利用して用意する企業が一般的でした。これは現在の確定給付型に近く、最大時は1000万人以上の加入者を抱えました。しかし、この制度は年金運用に関する監督・指導体制が不十分で、従業員への情報開示にも問題がありました。90年代はバブルの崩壊から運用に失敗する企業も多く、従業員の受給権保護の観点から、2012年に完全に制度が廃止されました。なおその6割は確定給付年金や確定挙手年金など他の制度に移行しましたが、4割は解散・消滅しています。

現在は企業が運用リスクを抱えることや、それに伴う事務負担の増加を嫌がり、確定拠出年金を選択・移行する企業が増えています。

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(出典:厚生労働省発表資料)

個人が抱える運用リスク

確定拠出年金は個人が運用リスクを負わなければなりません。もちろん、選択肢としてはリスクの高い運用を行わずに、運用により資金を増やすことが出来ないことになりますが国債や預貯金な振り分けるという選択肢も存在します。貯蓄だけでリスクを取らないことには制度設計上の課題もあり、多くの企業が年2%程度の運用利回りを想定して制度を作っているのです。つまり、この利回りを下回れば以前の退職適格年金制度時に比較して従業員個人の支給金額が低くなってしまうのです。

しかし、これまで資産運用に携わってこなかった人が安定的に2%の運用を行うには相応の投資リテラシーを身に付けることが望まれます。2015年10月1日の日経新聞の朝刊では、2007年に確定拠出年金を導入した食品大手のキューピーの例が掲載されていますが、運用益がほぼ0(リスク運用を行なっていない)集団が形成されていると言います。また格付け投資情報センターの調べでは、2014年末時点で4割の加入者の運用利回りが年率1%に届いていないとのことです(2014年全体では年率換算で4.8%)。

このような状況に対して危機感を感じている企業も多く、例えば計測・制御機器を取り扱うアズヒルでは社内の運用セミナーを年間100回近く開催、ファイナンシャルプランナーとの個別面談もセットし啓蒙に力を入れています。
また、よりドラスティックなことを行う企業も出てきており、電気大手の東芝では確定拠出年金のデフォルト商品に債券や株式を組み合わせた一定のリスクがある投資信託を組み込みました。デフォルト商品とは加入者が商品を選択しない・できない場合に自動的に選択される商品なので、非常に積極的な施作と言えるでしょう。

ソニーや電通といった日本の名門大企業も続々と確定給付年金制度から確定拠出年金制度に移行しています。
退職給付債務は大企業にとって財務上の大きな検討課題になっており、企業にとって経営の健全と財務の安定性確保のためにも、今後ますます確定拠出年金への流れは続いていくことが見込まれます。

資産運用は、適切な知識と取り組み方を覚え、正しく行えば、長期的に利益の果実を受け取れる可能性の高いものです。ただ、失敗してしまうと資産を取り戻すのは容易ではないですし、見に付くには経験値も必要です。
人によって状況は異なりますが、政府や金融庁も国民の資産形成の自助努力に向けての政策や取り組みをしており、時代の流れとしてリスク運用は身近になってきています。早いうちから情報収集や勉強に勤めた方が良いでしょう。

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