マイナス金利下での一時払い終身保険の是非を考える


一時払終身保険は、相続税の計算にあたり故人に掛けた生命保険の受取額につき法定相続人一人当たり500万円までが非課税になることもあり人気が高いですが、マイナス金利導入以降の環境の変化もあり注意が必要です。

近年、特にシニア世代の人の退職金の運用や相続税の節税・納税資金対策として、一時払終身保険が注目を集めていました。一時払終身保険とは通常の保険と異なり最初に掛け金を全額預け入れ、その保障は一生涯続くという保険です。簡単に説明すると、相続税の課税対象になる資産を持っている人に法定相続人が3人いると、500万円×3人の1500万円まで相続税が非課税になりますので、他に生命保険契約がない場合に受取額が1500万円までの保険に入れば、相続税率が30%の資産額であれば450万円が節税できることになります。また、受取人を定め、被相続人の遺志で、残したい人へ.残したい金額を残すことにも活用できます。

従来は、掛け金を最初に全額預けいれる事から運用利回りが高く、定期預金よりは良いとして人気の高い商品でもありました。
しかし、2016年1月末に発表され同年2月から運用を開始された日銀のマイナス金利政策によって保険会社による運用が難しくなってきたこともあり、今後も魅力的な商品と言えるのか再検討が必要となっており、また、保険会社では一時払終身保険の取り扱い自体を停止している会社が相次いでいます。

一時払い終身保険とは

近年、銀行の窓口などでも一時払終身保険は販売に力が入れられてきました。対象者が窓口に行くとセールスの話を聞いたことがあるという人は多いかもしれません。実際に商品の販売実績は好調で、特に2011年以降多くの保険会社がその販売に力を入れ売り上げを伸ばしてきました。
一時払終身保険の概要はまさに名前の通りで、上述の通り、保険料の全額を最初に払い込み、保障が一生涯続き死亡時や重度障害時に保険金を受け取れる保険です。保険料がはじめに払い込まれる事から運用利回りが高く、貯蓄性の高い保険と言われてきました。
販売する保険会社にもよりますが、加入時の年齢制限も厳しくはなく(0~85歳など)、場合によっては健康告知も不要なため、加入しやすい保険といえます。加入時の年齢が上がるほど、受け取る保険金に対して支払う保険金の掛け目が上がっていくことになります。
外貨建ての一時払終身保険は超低金利の日本の感覚だと一見利回りが良いように見えますが、手数料率が高いこともあるので注意しましょう。

資産運用や相続にもメリット

一時払い終身保険の利用メリットも整理してみましょう。まず運用利回りの高さです。生命保険大手の日本生命は2016年4月まで円建ての一時払い終身保険の予定利率を年0.75%にしていました(現在は0.5%、2016年10月1日から0.25%に引き下げると発表されています)。これは同時期の一般的な定期預金の利息、例えば三菱東京UFJ銀行の定期預金の利息年0.02%(現在は0.001%)に比較すると高いと言えるでしょう。そのため、例えば50歳の男性が死亡時などに遺族が500万円の保険金を受け取れるような契約行う場合、440万円前後の保険料を払い込めば良かったのです。
また死亡時ではなくとも、保険を解約した場合にも一時払終身保険は解約返戻金を受け取れます。そしてその解約返戻金は保険加入当初は払込み額よりも少ないのですが、5年前後で払込み額と同額を受け取れるようになり、その後は受け取れる金額は徐々にですが増え続けていきます。
このように運用利回りの魅力が大きい事から、退職金を何割かで一時払終身保険を契約してきたシニア世代の方も多いのです。

また一時払終身保険は、運用利回り以外に、相続発生時の使い勝手の良さというメリットもあります。
例えば銀行預金の場合、相続が発生した場合には被相続人の口座は凍結され、原則として遺産分割協議が終了し遺産分割協議書の作成が済むまでは預金を引き出すことができません。相続の発生時はお葬式や相続発生前の医療・入院費の精算など支出が多いため、故人の預金を引き出せないと不便な場合があります。遺産分割協議もすぐに話がまとまれば良いですが、遺産分割を巡って紛糾してしまったり、一部の相続人が海外にいたりして連絡が取りづらかったりすると簡単に結論がでませんし手続きにも時間が掛かってしまいます。
しかし一時払い終身保険であれば、あらかじめ指定された保険の受取人に保険金の所有権がありますので、遺産分割協議などを経なくとも保険の受取人がすぐに保険金を受け取る手続きに入れるのです。
また、冒頭で説明の通り、生命保険の受取金には500万円までの非課税枠があるため、その分の節税効果も期待できます。

マイナス金利による利回りの低下や販売停止

上記のように様々な魅力のある一時払い終身保険ですが、何点かデメリットやリスクもあるので本当にご自身に取って必要なのかは吟味をしなければいけません。

まず解約返戻金ですが、上記の通り加入から数年間は払い込み金額を下回る期間があります。そして日銀のマイナス金利政策によって、保険会社が一時払い終身保険の予定利率を引き下げていますので、今後発売される商品はこの加入から払い込み金額を下回る期間がさらに伸びたり、返戻金の額がより少額に設定されたりするかもしれません。
日本生命が一時払い終身保険の予定利率を引き下げたことは上述の通りで、生命保険大手では、他に明治安田生命や住友生命、それに第一生命も予定利率の引き下げを行っています、
ソニー生命、第一フロンティア生命(第一生命の子会社)、富国生命や明治安田生命などでは販売停止が報道されています。

また現在の日本経済はまだまだデフレが続いていますが、この傾向が将来も続くとは限りません。安倍政権も日銀首脳部もデフレ脱却を政策目標として掲げ、財政支出や量的緩和を行っています。これらの政策が好奏し、日本経済がインフレ傾向になるかもしれません。また、他のストーリーとして、例えば日銀の量的緩和の出口において制御できない形で悪性インフレを迎えてしまう可能性もあります。
そうなった場合、一時払い終身保険の運用利回りを超えてインフレが進むこともあり得るため、そうなった場合は名目上の貨幣価値の目減りにより実質的には損をしてしまうと言えるでしょう。

いずれにしても保険商品をはじめとした金融商品の契約には何かしらリスクはあるので、自分にとっての目的や経済効果と合わせ適切に理解し認識した上で活用することが大切です。

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