人類の夢「不老不死」への挑戦、最先端の科学はどこまで近づいたのか


不老不死は太古の昔より人類の夢です。権勢を極めた人物ほどそのような傾向が強いようで、例えば2000年前に初めて中華を統一した秦の始皇帝は、徐福という人物に大金を与え、蓬莱(日本と言われている)へ不老不死の秘薬を探索するための大船団を派遣したと伝えられています。

このような権力者たちの振る舞いは、どちらかと言えば歴史上は「愚かなこと」として語られてきました。しかし21世紀になった現代、人類の科学力は「不死」とまでは行かないまでも「不老」に関しては大きな前進を見せはじめています。

今回の記事では人類の夢の一旦、「不老」や「アンチエイジング」に関してどのような技術が最新テーマとされているのかについてお届けします。

3Dプリンターによる人工臓器の”印刷”

一昔前のSF小説や映画では、人体の機械化=アンドロイドものが多く取り扱われてきました。老化や損傷によって機能を果たさなくなったり衰えてきた人体の部位を、新しいものに取り替えることで不老不死に近づこうというコンセプトです。話題の3Dプリンター技術の発達によって、この発想は現実味のあるものになってきました。

21世紀の産業を根本から変える可能性のある技術として、メディアなどで取り上げられる機会の多い3Dプリンターですが、通常のプリンターが2次元の紙にインクを射出して文字や絵をプリントするのに対して、3Dプリンターは様々な素材を射出形成することで立体的な造形物をまるで印刷するように作成する技術です。
一般的にはプラスチックを射出形成することで構造物を作成するモデルが一般的ですが、射出する素材はプラスチックに限りません。金属を素材にすることもできますし、チョコレートなどの食材を射出して今までにない新たな料理を生み出す例も誕生しています。そして近年では、生体細胞をその他の特殊な素材と合わせて射出し、臓器を人工的に”印刷”する研究も進んでいます。素材として用いる細胞を本人の細胞から培養すれば、免疫系による拒否反応の心配もありません。
既に米ウェイクフォレスト大学教授のアンソニー・アタラ博士により、生まれつき膣が発達しない病気にかかっている女性に対して、人工の膣を製造し移植する手術が複数行われ成功しています。

この技術が今後も進歩していけば、人体の部位によっては、病気や事故による人体の損傷や損失を取り戻すことが出来るようになるかもしれません。がん等によって摘出した臓器の再生が行われる可能性もあります。あるいは、老化した皮膚や筋肉を取り替えることも可能になるかもしれません。

魔法のサプリメント

生活習慣病の中でも食事制限を伴い、悩む人の多い糖尿病の治療実験の中で魔法のサプリメントと呼ばれる物質が発見されました。その名はニコチンアミド・モノクレオチド(NMN)と呼ばれる物質で、インシュリンの作成ができなくなった膵臓の機能回復だけではなく、全身の機能を回復させる可能性があることがわかったのです。

【関連記事】
人気の糖質制限ダイエットはどういうものなのか?

この物質は毒性なく精製することが可能であり、将来的には食品に混ぜたり石鹸に混ぜたりして皮膚や内臓に取り込める可能性があります。

そもそもNMNがどういった物質なのかですが、この物質はもともと人体内で精製されており、この物質から作られるニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)が、人体がその機能を保つのに必要な物質なのです。しかし、加齢とともに人体はNADのもととなるNMNを精製する能力を失っていきます。
つまり人体で精製できなくなった分を外部摂取によって補おうことで、老化を押しとどめる効果が期待されているのです。

このNMNの研究は現在世界中で行われていますが、先鞭をつけたのは日本人研究者の米ワシントン大学教授の今井眞一郎氏と、日本企業のオリエンタル酵母工業(東2:2891)です。NMNの精製は酵母によって行われているのですが、酵母によるNMNの大量精製の手法は今井教授とオリエンタル酵母工業の共同研究の中から誕生しました。

遺伝子改変による若返り

遺伝子改変や遺伝子手術などというキーワードも、SF小説や映画でおなじみの言葉かもしれません。こうした技術の研究も進んでおり、将来は筋肉をはじめとした人体を若返らせ、身体機能を強化させることもできるようになるかもしれません。

そもそもどうやって遺伝子を改変するのかですが、一部のウィルスにはその遺伝子を寄生する細胞に対して送り込み組み込んでしまう性質が確認されています。
ウィルスのこうした性質が、人類をはじめ様々な生物の進化の原因だったのではないかという説もあります。
そうした性質を有するウィルスにIGF-1という遺伝子を組み込み、実験用のマウスに注射したところそのマウスの筋肉が(運動などなく)増加し、しかも老化による衰えも生じなくなったというのです。

人間に限らず動物の筋肉は一定の加齢とともに成長しずらくなり、一定の年齢を超えると急激に衰えます(人体の場合は40代から急激に衰えます)。これは筋肉内の細胞の再生力・成長力が失われるために起きてしまうことなのでですが、IGF-1という遺伝子は細胞の成長を促す遺伝子であり、老化の抑止や筋肉の若返りに効果を発揮していると言われています。

この技術も現在既に筋肉に関する難病患者の治療には利用が開始され始めており、今後の臨床閣下の蓄積や社会的な議論の進展次第では、アンチエイジング目的の利用が許可されるようになるかもしれません。

以上、人体の若返りや不老に関する最新の話題の一部をお届けしました。全体の共通点として、老化防止や若返り目的ではなく、難病や障害の治療の中で見つかった技術にアンチエイジング効果が期待されています。まずは緊急性の高い難病・障害治療が優先されるでしょうが、その過程で臨床実績が積みがっていく中で、20年後、30年後にはこれらの技術がアンチエイジング目的で一般利用可能となる可能性があるのです。

近年、日本の相続の現場では子孫に財産を残すための相続対策ならぬ、長生き対策(仕事をリタイアしたのちの寿命も長いため、その間の生活資金対策)という言葉に注目が集まっています。上記のような技術が一般化すれば、そうしたシニアファイナンシャルプランニングの重要性がより高まるかもしれません。

【関連記事】
食事制限で若返る?〜長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子とは〜
年間3500万円、ガン治療薬高額化の理由?


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です。
※運営者にのみメッセージを送りたい場合は、「管理者だけに表示」にチェックを入れてください。