遺言作成のすすめ①〜相続争いに有効な遺言の力〜


法律上の手続きで行う遺言(いごん)とは、故人(被相続人)が自分の財産を相続人等の誰にどのように遺産を残すかの意思を定めることを言います。遺言は法的文書で、遺書は法律上の効果とは関係なく自由に想いを綴るものだと思っておけばいいかと思います。
遺言を作成することは、遺産分割をめぐる争い、いわゆる争続を防ぐ手段として有効と言われています。
なぜ遺言の作成が相続争いの防止に効果があるのかを見ていきましょう。

【関連記事】
遺言作成のすすめ②〜相続争い対策以外にも有効な遺言の力〜
遺言作成のすすめ③〜せっかくの遺言が揉め事の原因に?遺言作成の注意点〜
遺言作成のすすめ④〜公正証書遺言作成の流れと注意点〜
遺言作成のすすめ⑤〜公正証書遺言作成の流れと注意点〜自筆証書遺言作成の流れと注意点

相続争いの増加

近年、遺産を誰にいくら分けるかという遺産分割をめぐる家族・親族同士の争いの件数が増加しています。一方で、そうした将来の悲劇を防ぐために遺言の作成を行う人が増えてきています。司法統計によれば2013年~2015年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数は、1万2千件~1万3千件ほどになっています。この件数は10年前に比べて3割ほど増加しており、遺産分割で争うことになる人たちの増加を表しています。

本来であれば遺産分割を巡る「相談」は、まずは、相続人当時者同士でどのように遺産を分けるかを話し合う遺産分割協議にて話し合われます。この遺産分割協議は遺言書のない相続で、法定相続人が複数人いる場合は必ず行われるもので、遺産分割協議がまとまれば問題ありません。
しかし当事者間で遺産分割協議の話がまとまらない場合、家庭裁判所での調停に持ち込まれ、それでも決着しない場合は家庭裁判所での審判、抗告があればさらに高等裁判所での審理に持ち込まれることになります。

上記のように遺産分割協議の決着が付かない場合、誰がどの財産を受け継ぐのかを確定できないので遺産の名義変更は行えません。被相続人の死亡に伴って銀行口座は凍結されますが、遺産分割協議がまとまらなければその解除も行えないのです。
また基本的に家庭裁判所で調停が始まった時点で、家族間や親族間の関係性は修復不可能にまで悪化すると言われています。また裁判まで持ち込んでも取得財産額が大きく増えることはほとんどありません。
こうした遺産分割を巡る争い悲劇は、適切な遺言書の作成により法的に防ぐことが出来ます。

遺産分割がまとまらないことは、相続税の手続きにも悪影響を及ぼします。
相続税は、いったん法定相続分で相続したと仮定して申告・納税を行う必要があります。相続税の計算上では、法定期限までに遺産分割がまとまり、配偶者の税額軽減(配偶者控除)や自宅等を誰が引き継ぐかが確定していないと小規模宅地等の特例が受けられないなどのデメリットが生じます。このような特例は、法定期限までに未分割での申告と「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署へ提出し、申告期限から3年内に分割が決定すれば適用可能となりますが、当初申告での納税を多く納めないといけないですし(3年以内の分割により修正申告で返してもらう)、面倒さや事務負担が大きくなります。

遺言の有効性

遺言の作成は相続争いの防止に効果を発揮するのは、法的に正式な形式で作成された遺言があれば、相続人はその内容に従うしかないからです。遺言さえあれば相続人は遺産分割協議による話し合いを経ることなく、相続の手続きを進めることが可能です。
確かに遺言で相続人の1人に全ての財産を相続させるなど遺留分の侵害があると思われる場合などは、相続人がその内容に不服があり、侵害された分の遺留分の補償を遺留分を侵害して財産を取得した相続人に対して求める遺留分減殺請求という手続きを行うことは可能です。そもそも遺留分を侵害しない遺言内容にすべきではありますが、法定相続割合の1/2は遺留分といって相続人が最低限受け取れるという権利があります(兄弟姉妹には遺留分はありません)。
しかし、仮に揉めるとしても、遺産分割協議の段階で揉めるのと、遺留分減殺請求を行って揉めるのには大きな違いがあります。
なぜなら遺留分減殺請求は、一旦、遺言に沿った遺産分割や相続税の申告が終わった後にしか行えないからです。

遺産分割協議を終えるには相続人の全員の合意が必要であり、1人でも反対者がいると話がまとまりません。その結果、遺産分割がまとまることを前提に受けることができる各種特例(配偶者の税額控除や小規模宅地の特例)などを受けることができません。また上述のように相続や名義変更も行えません。
しかし、遺言がある場合は遺言をもって遺産分割協議書に変えられるので、上記のような心配は発生しません。相続税の申告や、遺産の名義変更などのの手続きを相続人の中で反対者がいても、一旦終えることが可能です。
また遺産分割協議の内容への反対は、合意をしなければ良いだけなので主体的な負担はほとんど生じません。しかし、遺留分減殺請求の場合は不服のある相続人が自分から主体的に訴えの手続きを行わなければならず、その違いもあります。ただNOと言って印を付かなければ良い場合と異なり、主体的に手続きを行うというのは面倒くささの問題もあって実行に移せる人は多くないのです。

このように、遺言の有無によって相続争いの発生可能性は大きく変わると言えます。

【関連記事】
遺言書の活用や養子縁組、LGBTカップルの相続問題
遺言信託の利用を勧められたら申し込む前に考えたいその注意点


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です。
※運営者にのみメッセージを送りたい場合は、「管理者だけに表示」にチェックを入れてください。