遺言作成のすすめ②〜相続争い対策以外にも有効な遺言の力〜


前回は、法的な手続きとしての「遺言書」について解説しました。
相続に伴う争いの増加に伴い、相続時の遺産の分け方で争いにならないようにする対策に有効だと言われる遺言の作成に関心を持つ方が増えてきました。遺言作成の効果は相続争いの防止に限定されません。

今回は、相続争いの心配があるとき以外に、どのような場合に遺言を作成した方が良いのかなどを見ていきましょう。

【関連記事】
遺言作成のすすめ①〜相続争いに有効な遺言の力〜
遺言作成のすすめ③〜せっかくの遺言が揉め事の原因に?遺言作成の注意点〜
遺言作成のすすめ④〜公正証書遺言作成の流れと注意点〜
遺言作成のすすめ⑤〜公正証書遺言作成の流れと注意点〜自筆証書遺言作成の流れと注意点

遺言の作成が特に求められるケース

財産の分け方に希望がある場合

前回記事の通り、遺言作成の効果は、相続人の遺留分を侵害しない範囲であれば、誰にどのように財産を分け与えるのかを被相続人の意思で決めることができることです。

例えば家業として会社事業を経営しているような場合や、大規模な賃貸不動産経営を行っているような場合、次世代への財産の維持や税金対策を考えた相続のためには適切な分配が欠かせません。
過度な依怙贔屓は望ましくないかもしれませんが、相続人の中で特に老後の面倒を見てくれた方や、介護の面倒を見てくれた人がいる場合、その人に多めに財産を残したいと思われることもあるでしょう。

法定相続人以外への財産の遺贈を希望する場合

法定相続人以外に遺産を渡したいという時にも、遺贈を行うと遺言を残しておかなければいけません。
遺贈(いぞう)とは、遺言により被相続人の財産を相続人に相続させることを言います。誰にいくら自分の財産を相続で残すかは、遺言者の意思で決めることが出来ます。

財産がたくさんある場合、法定相続人以外にも財産を遺したいと思うことはあるでしょう。
例えば財産を築く過程でお世話になった人がいて、その人やその方の親族にご恩返しをしたいという場合もあるでしょう。
また財産の一部を自身の信頼できる団体などに寄付し、社会のために役立てたいという考えの場合もあるかもしれません。

子の認知など、身分に関する事柄があるとき

独身であれ既婚であれ、まだ認知していない子がいる場合に、その子に遺産を残したいという場合は遺言を書かなければなりません。何らかの事情があって生前に認知ができないのであれば、遺言で子の認知を行うしかないからです。

後見人の指定などが必要な場合

相続人の中に、認知症や知的障碍者の人などがいる場合、遺産相続に関して後見人を誰にするのか指名したいという場合もあるでしょう。そうした時、遺言によってその指名が可能です。
特に近年は平均寿命が延びた結果、相続の発生時に相続人たる子が高齢者となっている場合がありますし、配偶者が認知症になっているということもありえます。そのような場合は、事前の対策が必要になります。

問題がなくとも遺言の作成を行った方が良い理由

上記のような事情がある場合、遺言を作成した方が良いでしょう。しかしその逆に、例えば相続人には子供が1人いるだけで、その子も元気であり、他に財産を贈りたい相手もいないという場合は特別に遺言を作成する必要はありません。
しかし、そうであっても遺言の作成には以下のような効果があります。

財産の棚卸

相続のためにはまず被相続人にどのような財産があったのかを把握しなければなりません。しかし何の手がかりもない場合、この作業は本当に大変です。どの銀行にいくつ口座があったのかなども情報も自宅にある通帳などの書類から調べていくしかありません。その他に保険や株式、不動産などの把握も必要です。
金融機関の口座が分からないため相続税申告時に財産をもらしてしまい、相続税申告後に税務署の金融機関照会で発覚して追徴課税を受けてしまうこともありえます。
こうした相続人の負担を減らすには、財産について知っている本人が簡単なものでも構わないので財産目録を作成して残してあげるしかありません。遺言を作成する過程で必然的に財産の把握を被相続人も行いますので、それを文章にして残してあげることで相続人の手間を減らしてあげることができるのです。

遺言執行者の指名

また、相続人の状況等によっては、相続手続きを執り行う遺言執行者を事前に指名しておくことが良い事もあります。相続の発生時、相続人は被相続人のことを思って悲しみに暮れながら葬儀などを執り行っていかなければなりません。それと並行して相続のことも進める負担は大きく、遺言執行者の指名がそうした負担の軽減に役立ちます。

付言事項による「想い」の相続

遺言に記載する内容は、財産の分け方や遺贈、認知などの身分関係に関する事柄などを記載し、法的な拘束力を生じさせる法定遺言事項と、法的拘束力はないけれども相続人対して自分の思いを伝え残す付言事項に分かれます。家族や親族への感謝、また今後への願いなどを記載することは重要なこと言えるでしょう。
また遺産分割などで傾斜のある分け方を遺言で指定した場合、付言事項でそうした理由や背景が語られているかどうかで相続人の納得度は大きく変わってきます。

【関連記事】
遺言書の活用や養子縁組、LGBTカップルの相続問題
遺言信託の利用を勧められたら申し込む前に考えたいその注意点


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です。
※運営者にのみメッセージを送りたい場合は、「管理者だけに表示」にチェックを入れてください。