分割しづらい財産への対応、共有財産の法律問題を理解する


相続の発生時、現預金など金融資産の遺産分割はそれほど問題になりません。不動産のような財産は半分に切って分けるようなことは難しいですが、1000万円の現金は複数人にいくらずつと定めれば簡単に分けられます。相続分に傾斜を付けるかどうかはともかく、分割自体は容易だからですとなります。土地や建物などの不動産、また船舶などの動産に関しては簡単に分割ができません。
そこでよく用いられる選択肢が財産の「共有」になります。例えば兄弟3人が土地を相続する際に、平等になるよう法定相続割合に応じて3人で共有という形にしたというような人は多いでしょう。
相続についての解説で、よく、共有は、財産を共有した後にその財産をどうするかを巡って相続人同士でトラブルになるので出来れば止めましょうと解説されますが、どういうことなのでしょうか。

今回は共有財産は法律上どのように取り扱われるのかを定めた民法の規定を確認してみましょう。

財産の共有とは?

まず共有とは1つの財産を複数人以上で共同所有することを指します。車やクルーザーなどの動産を共有することもありますし、自宅などの不動産を共有することもあり得ます。
共有財産には所有権をどの程度の割合で有しているのかという持分の概念があります。例えば購入時の費用負担に応じて持分を決定したりします。ただし、合意がない場合や持分が不明の場合は共有者で均等に所有することになります(民第250条)。
結論として、不動産の所有を例にまとめると以下のようになります。

保存行為・・各共有者が単独でできる。

・日常的な修繕(雨漏りの修理など)
・妨害排除請求(不法占拠者を追い出すなど)

管理(利用・改良)行為・・持分の過半数の賛成でできる。

・第三者に賃貸する契約の締結または解除
・共有物の利用方法を決める(共有している別荘を期間に区切って順番に利用するなど)

変更(処分)行為・・全員の賛成が必要

・売却する、増改築(リフォーム)する

法律の定めは誰かが権利を主張したり、ケンカになったりして当事者間で収集が付かなくなったときに裁判所が介入して問題を解決するものです。
実際には、家族等であれば共有でも誰かが責任を持って管理を仕切ることになることも多いでしょうし、方向性の意思が統一されていて特段誰かが不利になるとかがなければ反対する人もいないことの方が多いでしょう。
当事者間で問題が生じてしまった場合にどのように法律で定めがあるかということになりますが、いざという時のためにも法律のルールは知っておいて損はないでしょう。

共有財産の保存・管理・変更

財産を共有した後にその財産を管理していく必要が生じます。また場合によっては売却したいと思うこともあるでしょう。そうした場合の意思決定は持分に応じてどのようにされる法律になっているのでしょうか。

共有財産の変更処分

まず民法には各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができないとあります(民法251条)。この場合の変更とは財産の売却や、不動産であれば増改築を指します。持分に関係なく共有者全員の意見が揃わなければこうしたことが出来ないので、不便ですしトラブルにも発展しやすいと言えるでしょう。
「共有は紛争の種」という言葉もあるのですが、全員の合意がないといけないという、このポイントがそう言われる所以です。

共有財産の保存と管理

財産の売却や増改築などの変更は共有者の全員一致が原則ですが、日常の利用や管理についてはそこまで厳格ではありません。まず共有財産の利用に関してですが、各共有者はその全部、もしくは持分に応じた利用が可能です(民法249条)。例えば2名の人が車を均等な持分で共有している場合、月の前半は片方の人が使い、もう片方の人が月の後半を使うというような取り決めも可能です。
もちろん実際には利用したい時期などが重なってしまう場合もあるでしょう。その場合、民法では共有物の管理に関する事項は、変更を除いて各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するとあります(民法252条)。全員一致ではなくとも結論が出せるので、話が前に進みやすいのです。なお、共有財産の賃貸契約の締結や解約に関する事柄も管理に含まれますので、全員一致ではなく、持分による多数決で解決可能です。

また民法には保存行為は、各共有者がすることができる(民法252条)とあり、日常的な修繕や不法占拠者の追い出しなどは各共有者が個別に対応することが出来ます。

共有財産の費用負担

共有財産にトラブルが生じて、費用負担が発生した場合も考えてみます。例えば賃貸用のアパートなどを共有しており、雨漏りが生じてその修繕をしたような場合です。前項にある通り、こうした日常的な修繕は各共有者が単独で行えますが、発生した費用は民法にも各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う(民法253条1項)とあるように持分に応じて全員が負担します

また民法には管理費用を滞納した共有者がいた場合には、共有者が1年以内に義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができると規定されています(民法253条2項)。

共有を解消するには?

最後に共有の解除方法について確認してみます。
まず単純に共有者の1人がその持分を放棄したときや、死亡して相続人がいないときその持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。一般的に、不動産の放棄や相続人の居ない死亡の場合、その所有権は国に帰属することになりますが共有時の持分はそのように取り扱われません。

また各共有者は、いつでも共有物の分割を他の共有者に請求することが可能です(民法256条)。ただ、不動産にしても動産にも分割は難しい場合が多く、当事者間での協議でまとまらない場合は、分割を裁判所に請求することも可能です。
なお主な分割方法には現物分割、代金分割、価額分割の3つがあります。現物分割は分割可能な財産を物理的に分割することです。一方代金分割は財産を売却し、得た金銭を分割します。また価額分割は売却しないけれども売却額を算定し、一方に持分に応じた売却額分を渡すことで共有を解消する方法です。

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