平成27事務年度における所得税及び消費税調査等の状況に学ぶ


平成28年10月、国税庁より平成27事務年度における所得税及び消費税調査等の状況に関する資料が発表されました。主に個人事業主や不動産所得を得ている方、また高額所得者の方を対象とした、所得税に関する税務調査の概要レポートになります。

平成27事務年度所得税及び消費税調査等の状況

この情報から、所得税に関する税務調査の最新動向を見ていきましょう。

税務調査の目的

日本の納税制度の原則は、納税者自らが税法を遵守し、自主的に正しく申告や納税を行うことを目指す「申告納税制度」が採用されています(ただし給与所得者の大半は会社が所得税の源泉徴収及び年末調整により申告及び納税を行ってくれます)。納税者個人の自主性に任せた場合、誤った税務申告をしてしまったり、悪意を持って確定申告自体を行わなかったりする人も出てくるため、そうした納税者に対して正しい税額を調べ申告額の是正を行うために、税務調査が行われます。

税務調査の種類

所得税に関する調査は、「実地調査」と「簡易な接触」の2つに分けられ、実地調査はさらに「特別・一般」と「着眼」の2つに分けられます。

実地調査(特別・一般)

通常の一般的な税務調査のことをさします。

実地調査(着眼)

一般の税務調査ですが、税務署が日数を掛けずに簡易的に行われるもののことです。特に不動産所得や小規模事業者の場合に多いものです。

簡易な接触

扶養補正や一時所得の申告漏れなどの確認で、実際の調査ではなく電話や手紙連絡で済まされます。

平成27事務年度の調査状況

平成27事務年度に行われた所得税の実地調査件数は66,016件でした。この数字は平成26事務年度に比較して、3.4%ほど減少しています。
ただ実地調査(特別・一般と着眼の合計)によって確認された申告漏れ所得金額は5,243億円であり、これは昨年に比較して約4.7%増加しています。大口の摘発があったなどの個別事情は分かりませんし毎年の通常の変動と言える範囲ですが、課税当局は結果としては27年度は前年よりも所得税の申告漏れに対して件数を上げることよりも、より悪質なものを確認し把握できる申告漏額を増やす動きをしたようです。なお、簡易な接触によって把握された分は3,542億円です。

調査が行われた66,016件のうち54,673件で所得の申告漏れや経費の修正などがあり、否認が起きています。これは全体の80%を超えており、高い否認率といえます。税務署はあらかじめ何らかの増差(否認事項により所得が多くなること)が見つかるところを実地調査に入っているとも言えますが、一度税務調査の対象となった場合には多くの場合で何らかの指摘がされるものだと言えるでしょう。

加算税の状況

これらの調査による追徴課税額ですが、調査の全合計では1,074億円で、そのうち実地調査全体では798億円、簡易な接触による追徴税額は277億円になります。
この追徴税額のうち、実地調査全体では本税が680億円、加算税が118億円という比率です。一方簡易な接触の場合は本税が270億円、加算税が7億円と加算税はほとんど発生していません。

これは一般的に、税務署からの連絡後に行政指導という扱いでそのまま修正申告を行えば自主修正扱いとなり、加算税の対象とならないからです。
ただ、平成28年の税制改正によって、平成29年からは税務署からの指摘以降に修正したものに関しては、自主申告扱いにならず、加算税の対象となるだろうと言われています。なお加算税の税率は本税の5%か、期限後申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%となります。

税務調査への対策

以上のような調査の状況も踏まえて、税務調査への対策を考えてみましょう。もちろん、一番大切なことは税務調査の対象とならないように注意することですし、そもそも意図的な過少申告や無申告があってはいけません。しかし、例えば経費算入(事業上の必要経費か私的なものか)や自家消費(農家や飲食店などで、販売するのではなく自分たちで消費する分)の売り上げ算定などは、明確な基準を設けづらく、税務署の担当者の方と意見や解釈が分かれる部分でもあります。

まず諸々の支出の経費割合や自家消費の算定金額についてはその金額の根拠をきちんと述べられるようにしましょう。また接待交際費などであれば、いつ誰を接待した時の領収書かを聞かれて答えられなければいけません。もちろん全ての領収書に関して記憶していくことは難しいので、領収書の裏にメモを残すか、別に記録表を書くと良いでしょう。所得税は法人のように口座が事業と個人使用とで明確に分かれていないことも多く、事業上の必要経費か私的なものかの明確な線引きが難しいため、事前準備をしておくといざという時には役立つでしょう。

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