平成27年度における相続税の調査状況のまとめ


平成28年11月、国税庁から平成27事務年度に行われた相続税の実地調査(税務調査)に関する資料が発表されました。近年国税庁などの税務当局は相続税の課税、特に富裕層への課税強化に力を入れており、そのような方針を明確に掲げています。
そのような背景がある中で、実際に行われた調査の結果がどのようなものであったのか見ていきましょう。結果的には、平成26事務年度までの調査と大きくは変わらないものとなっています。

平成27事務年度における相続税の調査の状況について(国税庁)

調査の概要まとめ

相続税の実地調査は、相続が発生した年にすぐに行われるわけではありません。そもそも相続が発生してしてから相続税の申告期限まで10ヶ月間の猶予があります。また相続税の申告が行われた後に、税務署内での審査を踏まえて実地調査が行われるので、相続が発生した年度から2年ほど経過してから実地調査は行われます。
平成27年度に行われた相続税の実地調査も、主に平成25年度に発生した相続に関して行われました。そのため、平成27年1月1日からの相続税増税(基礎控除の引き下げや最高税率の引き上げ)の影響は、今後の年度の税務調査から反映されてくることとなるでしょう。

国税局や税務署がどのように実地調査の対象を見つけているのかですが、国税総合管理(KSK)システムという名称のシステムで、個人のこれまでの所得や資産の変遷に関する記録を収集・管理しており、その内容と相続税の申告書類を照らし合わせて違和感のある申告を炙り出すということをしています。

実地調査件数及び申告漏れ等の非違件数

実地調査が行われた件数は11,935件と、平成26事務年度の12,406件からわずかに減少しました。平成25年の相続発生件数(死亡者数)は1,268,436人、また相続税の申告が発生した件数は54,421件です。相続税申告をされた方のうち、5分の1近い人たちが実地調査の対象となっていると言えるでしょう。

実地調査の結果は、実際に申告漏れ等の非違があった件数は9,761件と調査件数の81.8%となりました。この傾向は平成26年度の実地調査時とほとんど変わっていません。
今後も実地調査の対象となった場合は、8割ほどの確率で申告漏れなどが見つかる可能性が高いと言えます。そもそも実地調査の対象とならない様、財産漏れなどがないよう相続税申告を行うことが望ましいでしょう。

申告漏れ課税価格

また実際に認められた申告漏れ課税価格ですが、合計して3,004億円となりました。全体の母数が減少しているためか、平成26事務年度調査時の3,296億円よりも減少しています。なお、実地調査1件当たりでは2,517万円の申告漏れが見つかっており、平成26事務年度の2,657万円と大きな違いはありません。

申告漏れ相続財産の金額の内訳

申告漏れが見つかった相続財産の内訳ですが、その傾向はやはり平成26事務年度と変わっていません。まず現金・預貯金等が一番多く、1,036億円(平成26事務年度1,158億円)です。そして土地410億円(平成26事務年度414億円)、有価証券364億円(平成26事務年度490億円)と続きます。

現金の申告漏れが毎年多いですが、例えば家族も把握していない預金があったり、被相続人が相続人に対して行っていた贈与が名義預金として否認されたりした場合なども含まれます。
現金の否認は名義預金とされるものが最も多いと言われており、国税庁の報告でもそれを裏付ける結果が公表されています。名義預金に関しては、生前の対策時や申告前に否認されるリスクがないかきちんと専門家に相談した方が良いでしょう。

追徴税額

申告漏れなどに関する加算税を含めた追徴税額は583億円となりました。実地調査1件あたりでは489万円です。
なお加算税の税率は、過少申告の場合と無申告の場合で異なり期限内申告について修正申告・更正があった場合の過少申告加算税は、50万円以内のものに関して本来の税額の10%、50万円を超える部分に関しては15%になります。また期限後申告・決定があった場合、もしくは期限後申告・決定について、修正申告・更正があった場合の無申告加算税は50万円以内のものに関して本来の税額の15%、50万円を超える部分に関しては20%になります。

重加算税の賦課件数

仮装・隠蔽などがあり、悪質性が高い場合には重加算税の対象となり、本来の課税金額に35%から40%上乗せした分を納税しなければなりません。なお過少申告分に関しては35%であり、無申告分に関しては40%になります。重加算税が課せられた件数は1,250件であり、平成26事務年度1,258件に比べると件数は微減していますが、賦課割合は微増しています。

海外資産関連の調査

ライフプランや資産運用の国際化、また節税目的での海外資産の活用が増えていることから、相続税の適正(公平)な課税のために国税庁を始め課税当局は海外相続財産の把握に力を入れています。
海外資産関連事案に係る実地調査件数は859件と平成26年の847件より微増しています。なお海外資産関連の実地調査では、申告漏れなどの非違件数は117件と実地調査件数の約13.6%です。

今後も、税務署や国税庁は相続税の調査の陣容拡大を含め実地調査に力を入れていく可能性が高いと思われます。余計な負担をしなくて済むよう、申告時にはきちんとした専門家を選んだ方が良いでしょう。

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