事業承継でM&Aに注目が集まる理由


普段のニュースや報道等では大企業の名前を目にすることが多いですが、日本経済の屋台骨は数の上では大多数を占める中堅企業・中小企業によって支えられています。企業数は全企業のうち99%以上が中小企業ですし、全従業員数の約70%が中小企業で働いています。特に製造業で他で代替の効かない独自技術を持っている企業も多く、大企業に取ってもサプライチェーンを維持するためになくてはならない存在になっています。

しかし現在、多くの中堅・中小企業が経営者の高齢化と後継者の不在という問題を抱えてきており、創業経営者から誰がどのように経営のバトンタッチをするかという点での事業継続が不安視されています。そこで国としても力を入れているのが、M&Aによる事業引き継ぎなのです。

事業承継が問題となる理由

現在、多くの中堅・中小企業で事業の継続や、経営者の代替わり=事業承継が大きな問題となっています。まずはその理由を見ていきましょう。

経営者の高齢化

事業承継が大きな問題となる一番の理由は、日本社会の高齢化とリンクするように、経営者の高齢化も進んでいるからです。1970年代や90年代から今までの多くの中堅・中小企業を支えてきた多くの経営者が引退を迎える世代となっており、東京商工リサーチの2015年の調査では、全国の経営者の平均年齢は60歳を超えています。1990年の54歳と比べて約5歳ほど上がっているのです。

オーナー社長には定年という概念はありませんので、60歳や65歳で引退しなければいけないわけではありません。経営者は高齢になっても、活力があり、気力にみなぎっている方が大勢います。しかしそうは言っても人間ですので、健康的に働ける年齢には限りがあります。
カリスマ性の高い社長が、無理をして社長を継続してしまっては、不測の事態が起きた時に会社が危なくなってしまうかもしれません。世代交代がうまくいかないと、企業の衰退を招いてしまうかもしれません。

後継者の不在

経営者が高齢なのであれば代替わりをすれば良いのですが、現在の問題が複雑なのは代替わりをしようにも後継者が決まっていない、育っていないという場合が多いことです。
帝国データバンクの調査によれば、60歳以上の経営者で後継者が決まっている会社は約半数ほどであり、残る半数は後継者が決まっていないという状況が窺えます。特に建設業、サービス業、不動産行の3業種は70%近くの会社で後継者が未定であり、問題が大きいと言えるでしょう。
後継者選びは決めれば終わりではなく、後継者と定めた後に実際に社長としての能力や手腕の発揮ができるよう、育成期間や引き継ぎ期間も設けなければいけません。

事業承継の方法としては、経営者の子供に引き継ぐ、配偶者や親族に引き継ぐ、親族以外の幹部社員に引き継ぐ、そして第三者へのM&Aというものがあります。

事業環境の悪化

多くの企業で後継者不在となってしまう理由は、それは事業環境の悪化や先行きへの不安感であると言われています。好きな職業に就きたいという子どもの想いや、価値観の多様化、世襲意識が薄くなっている影響もあるでしょう。多くの中堅・中小企業は社歴が長い分、オールドエコノミーに属する古い産業に属していて、日本経済のマクロ成長も止まり人口動態が今後厳しくなっていくことを考えると、海外等へ販路を拡大していったり個別の競争優位を築いていかなくては、成長を描きずらいのも事実でしょう。そのため、特に子供を含めた経営者の親族が会社を継ぐことに難色を示す場合が多いのです。

日本の総人口は2008年をピークに減少しており、消費・生産活動が減ることにより、今後経済規模の縮小が予想されています。人口が減少していてもマクロの経済成長が進んでいれば良いのですが、1人あたりのGDPも1990年代以降ほとんど増加をしていません。残念ながら、このまま生産性の劇的な向上がなく人口が減少に転じれば、間違いなく日本経済は衰退していくことになり、そこでビジネスをしている企業の業績も悪化していく可能性が高まります。
大手企業では海外に活路を見出そうと積極的な海外投資や販路拡大を行っていますが、一部の例外を除き多くの中堅・中小企業には難しい面もあるでしょう。

また、日本の中堅・中小企業は経営者が会社の借金に対して個人保証を行っている場合も多く、会社の業績悪化や倒産によって家屋や貯金などの個人資産も失うリスクを多くの経営者が抱えています。そうした経営者の苦労を見ているので、市場環境や業績悪化の心配が大きい中、後継者を見つけるのが難しいのです(子供に苦労はかけたくないという親心も働くでしょう)。

M&Aという選択肢

もし後継者不在のまま、経営者が亡くなってしまった場合、企業は廃業・もしくは倒産となってしまいかねません。そうなれば雇用の維持が失われてしまいますし、その企業が抱えていた技術や商品によっては取引先にも被害が生じる可能性があります。
そこで、経営者の親族や社員の中から後継者を探すのが難しい企業のために、第三者の企業に会社支配権である株式を移譲し事業を統合していくM&Aに注目が集まっているのです。1990年代には国内企業同士のM&A件数が1000件を超えることはほとんどなかったのですが、2015年には1500件を超えています。
民間でも数多くのM&A仲介企業が誕生してきていて、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクという3社は上場企業にもなっており、この中小・中堅企業のM&Aの仲介により業績を伸ばしています。国も事業引継ぎ支援センターを開設し、事業承継のためのM&Aの後押しを本格的に始めました。M&Aは事業承継のための有力な選択肢の一つとなっているのです。

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