息子・娘は後継ぎになってくれるのか?年々困難になる親族への事業承継


オーナーや親族等の一族が経営権を握るような非公開の中堅・中小企業の場合、創業者一族、特に現経営トップの子供が後を継いで経営を引き継ぐ事は一族経営の同族会社では多く見られることです。ただ、近年はそうした親族による事業承継が困難になってきたこともあり、親族以外への事業承継を行うことが増えてきています。

なぜ親族への事業承継が困難になってしまったのか、その理由を見ていきましょう。

事業承継が大きな問題となっている理由

そもそも事業承継がここまで大きなテーマとなっている背景を見ておきましょう。
日本経済の屋台骨は大企業ではなく中堅・中小企業によって支えられていると言っても過言ではありません。そして、そうした中堅・中小企業の中で経営者の世代交代期を迎えている会社が多くあるのです。戦後の1955年頃〜1975年頃の高度経済成長期の頃は創業された会社が多かったのですが、この時期に創業された会社のオーナーが引退時期を迎え世代交代期を迎えているものの、経営者の交代が進まず事業承継に悩んでいる企業が多いのです。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-12-17-13-55-11

【会社の設立登記件数:中小企業庁発表資料より】

親族内での事業承継の減少理由

少子化による後継者不足に子ども自身の事情

大きな理由として、日本の少子化によって後継者の候補となる経営者の実子の人数も減ってきているという事情があります。現在事業承継を考えている経営者の世代(60代〜70代)では、未婚率も極めて低いため子供がいないと言う例は少ないと思われますが、それでも従前の世代より出生率は下がってきており、子供の人数が多い場合は稀です。
会社の経営は子供がいれば継がせられるというものではありません。子供に意欲と資質の両方が求められますし、資質があっても大企業で活躍していると家業以外にやりがいを見いだしていることもあるでしょう。現在は職業選択に自由意思を汲む考えも広がっています。兄弟が多ければふさわしい人物が1人くらいいる可能性もありますが、兄弟の数が減るほど可能性も下がっていきます。

また、経営者の子供自身が、親の仕事を継ぎたいと思っていないという場合も多いでしょう。もちろん事情はそれぞれのファミリーによってまちまちですが、現在の生活基盤を捨ててリスクもある経営の世界に飛び込みたくはないということもあるでしょう。
創業経営者の息子や娘は多くの場合きちんとした教育を授けられますので、比較的高学歴な人物が多く、就職先も一流企業が多くなります。30代〜50代くらいになればその会社の中で出世もしています。そのため今の仕事にやりがいを感じ生活が安定している場合が多く、それらを捨ててしまうことには二の足を踏んでしまうのです。

個人保証などの問題

また、経営者の子供が親の後を継ぐのに戸惑う理由として、会社の銀行等からの融資における個人保証の問題があります。それなりの規模の会社の経営者であれば悠々自適だろうと思うかもしれませんが、子どもは、親が事業や個人保証のプレッシャーのなかで苦労している姿を見ている場合もありますし、交流のある経営者一家が事業に失敗し個人保証があったため財産を失ってしまったようなことも見聞きしてきているのです。

現在、中小企業庁では個人保証は企業の中堅・中小企業の活性化を阻害してるとして、経営者の支払い能力を考慮した減免制度やガイドラインの策定を進めています。ただそうしたことの効果が出るまでどうしても時間はかかるでしょう。

事業の将来性への不安

個人保証に関連して、会社の事業の将来性に不安を抱えているため、今の生活を捨ててまで親の後を継ぐことはできないというのもよくある理由です。日本経済はバブル崩壊以降のここ20年近くほとんど経済成長をしていません。そのような状況の中で少子高齢化が進んでおり、東京と沖縄以外の地域は人口が減少に転じています。
このことは地域経済に根ざした事業を行っている企業にとっては需要の縮小により大きなダメージになりますし、地域を相手にした事業を行っているわけではなくとも、競合との競争激化や成長余力の確保、人材採用が難しくなるなど、経営課題が多くなります。

税負担の問題も大きい

上記のようなことのほかに、会社を継ぐことに対する意欲と資質の両方を兼ね備えた後継者候補がいたとしても、大きな問題が1つ残り、それは会社の株式を円滑に後継者に移転するときの税負担の重みです。日本の相続税制では超過累進税率により3億円を超える相続では45%、6億円を超える相続では55%もの税率が定められています。未上場であっても中堅規模以上の企業のオーナー一族であれば、株式の資産価値を含めた相続財産額は最高税率の水準を上回ってしまいますので、この大きな税率により掛かる税金が子供に会社を継がせる際に問題になるのです。

こうした税金の問題に関しては、事業承継税制の活用や、自社株評価の圧縮や税効果を考慮した株式承継方法などを専門家に相談し、進めていく必要がありますが、自社株対策は事業の拡大とは相反するものでもあり、事業活動自体の制約にもなりかねません。

企業をオーナー経営者の子供に継がせるためには、これらの課題を解決しなければならないため、やはり難しい場合が多いのです。

【関連記事】
親族内承継、親族外承継、M&A〜事業承継の3つの方法〜
法人オーナーのための生命保険と死亡退職金を合わせた相続対策


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です。
※運営者にのみメッセージを送りたい場合は、「管理者だけに表示」にチェックを入れてください。