導入から約1年〜マイナス金利の功罪と影響(後編)


2016年1月末に導入が決まり、2月から運用が開始されたマイナス金利政策も実現から約1年が経過しました。マイナス金利政策の影響を見る後編の今回はマイナス金利政策が個人へ与えた影響についてです。

【前編記事】
導入から約1年〜マイナス金利の功罪と影響(前編)

個人への影響は?

銀行貯金の利息の低下

マイナス金利の分かりやすい影響として、これまで銀行が預金につけていた利息も利率が大幅に引き下げられました。これまでも預貯金の低金利は続いて来ていたのですが、さらに下げられました。例えば三菱東京UFJ銀行では普通預金の金利0.02%が0.001%へ、また300万円以上の10年もののスーパー定期の利息は0.105%から0.01%に下がりました。もともと低水準の金利で、多くの国民の感覚として大きな違いはないかもしれません。それでも1000万円の定期預金を預けた時に、年に10万円が1万円の利子の受け取りに下がるという影響が出ています。
気になるのは、利子にも「マイナス金利」が適用され、銀行預金をするとお金が目減りしてしまうのではないかという点かもしれません。
ただ、日本よりも先行してマイナス金利政策を導入しているヨーロッパではECB(European Central Bank=欧州中央銀行)がスイスで▲0.75%、スウェーデン▲1.1%など大幅なマイナス金利を導入していますが、個人の銀行預金のマイナス金利の導入までには至っていません。また日本では法律によって個人の銀行預金にマイナス金利が設けられるような事態は制限されています。そのため、個人預金へのマイナス金利の適用の可能性は今後も低いと見て良いでしょう。
しかし、今後もマイナス金利の範囲拡大や日銀による利率のさらなる低下が行われるようなら、利率のさらなる低下や、ATM利用手数料等の値上げなどでの利子とは違う形での預金者への負担増が行われるかもしれません。

保険商品などの運用利回りの見直し、販売停止

その他に、大手生命保険各社が保険商品の予定利率の引き下げなど、資産運用に関する分野でも影響が出ています。

大手生命保険の日本生命は、2016年の4月以降、新規で販売される一時払い終身保険に関して、予定利率をこれまでの0.75%から0.5%に引き下げています。一時払い終身保険は契約時に1度に保険料を支払い、その後死亡時か重度の障害を負った場合に保障を受けられるという保険です。途中での解約も可能で、一定期間を過ぎた後であれば解約返戻金は掛け金よりも高額になります。その増え方が銀行利息よりも魅力的なため、退職金などの運用方法として人気があったり、相続税の生命保険料控除(500万円×法定相続人)としても活用ができる保険商品だったのですが、第一生命、明治安田生命、住友生命などの大手生命で一斉に利率を引き下げています。

また生保だけではなく、損保でも似たような動きがあり、損害保険大手の東京海上日動火災や損害保険ジャパン日本興亜は積み立て型の傷害保険の一部を販売停止しました。積み立て型の傷害保険は、事故などの際に保障を受けられ、契約が終わればかけた保険料と同額の返戻金があるという保険です。

運用利回りの低下が予測されることから、上記のような保険商品の販売停止や利率引き下げが行われているのです。

住宅ローンの利率低下

個人にとって最も嬉しいのはこの住宅ローンの引き下げでしょう。

長期金利の低下を受けて、住宅ローン金利も記録的な低下をしています。住宅ローン金利は2011年頃には10年固定で2%を超えていましたが、例えばフラット35は2016年7月、ついに0%台に突入しています。また、りそな銀行など、WEB申し込みの借り換え限定で0.4%というプランも発表しました。今後住宅の購入を考えている方には大きな追い風となったと言えるでしょう。

ただ、ローンの借り換えに関してはそれほど進んでいないようです。住宅ローンの利用者は1200万人いると言われており、MFS(東京・千代田)の調査によればその6割もの人が借り換えによって100万円位以上の出費削減効果があると試算されています。しかし、実際にローンの借り換えを行われている件数はそれhど多くありません。年間の借り換え人数は平均で15万件と借り換えメリットのある人のうち3%ほどでしかないのです。特に2000年から2011年の住宅ローン金利が高い記事にローンへ加入した方には借り換えメリットが大きい可能性が高く、当てはまる人は検討をした方が良いかもしれません。

国民生活への影響は

国民生活への影響としては、結果的に、景気が浮揚して給料がどうなるか、という話になるかと思います。
影響経路は、①マイナス金利(を含む金融緩和) → ②設備投資や住宅購入の積極化・銀行融資の拡大 → ③世の中の景気が良くなりデフレ脱却・景気回復 → ④給料増加 というのがマイナス金利やその他の政策により総合的にどこまで影響があるかどうかになります。③④までいくことが身近な所(生活)でのマイナス金利の影響ということになるかと思いますが、②の道半ばといったところが現状であるかと思われます。従って、金融サービス(ローン金利、保険、MMF)には影響が直撃していますし、マイナス金利が継続すると銀行収益や運用利回りを低下させるので金融業界(銀行や保険会社)に勤めている人にはボーナス等に悪影響が出ることはあるかもしれません。

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