2015年は2013年に比較して富裕層・超富裕層ともに20%以上の増加


国内の民間企業で最も富裕層動向の研究をしているのは、株式会社野村総合研究所(以下NRI)でしょう。そのNRIより、2015年の国内富裕層同行に関する調査レポートが発表されました
レポートによれば、2015年は2013年の調査に比較して、富裕層世帯数の増加していること、また相続税対策への関心が高いことが見受けられます。

日本の富裕層は122万世帯、純金融資産総額は272兆円

今回は、同レポートを参考に、国内富裕層の直近動向を見ていきましょう。

富裕層の定義

本論に入る前に、NRIによる富裕層の定義です。

世の中には複数の富裕層に関する調査や研究があり、その調査や研究ごとに様々な指標が存在します。ただ国内的にも国際的にも資産額1億円(100万ドル)という数字が基準になっている場合が多いと言えるでしょう。
今回のNRIの調査では、世帯ごとに保有する純金融資産(※)の多寡で富裕層か否かを判断しており、1億円以上5億円未満を保有する世帯を「富裕層」、5億円超を保有する世帯を「超富裕層」と定義しています。また純金融資産5000万円以上1億円未満を準富裕層と定義しています。
(※純金融資産とは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの保有する金融資産の合計から、負債を差し引いた金額)
海外の調査では、フランスのコンサルティング企業キャップジェミニが行っている調査が有名ですが、純金融資産に加えて不動産資産(土地・建物)を足し合わせた純資産額が100万ドル以上を富裕層と定義しています。

なお、国税庁は明確に富裕層という階層を定義してはいません。しかし以前発表されていた高額所得者番付(高額納税者公示制度、一般に言う長者番付)では納付する所得税額が1,000万円以上の人(=所得が概ね2000万円以上)を発表していましたし、2015年の所得に基づく確定申告から導入された財産債務調書制度では、所得2000万円以上かつ資産3億円以上の方に調書の提出が義務付けられています。
そのため、所得者の上位0.4%に当たる所得2000万円以上の人がある種の富裕層として定義づけられている可能性が高いでしょう。
また、明確な基準は公表されていませんが、「重点管理富裕層」という継続的な監視対象とする富裕層がリストアップされていると報じられています。

2013年から2015年にかけての変化

さて今回、発表されたNRIの調査結果ですが、富裕層が114.4万世帯、超富裕層が7.3万世帯となっており、2013年の調査から富裕層は20.0%、超富裕層は35.2%増加しています。

図1:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数
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図2:純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移
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(出典:NRI「日本の富裕層は122万世帯、純金融資産総額は272兆円」)

この表の通り、2011年以降、2013年・2015年と富裕層・超富裕層の世帯数が伸びていることが分かります。この増加の背景ですが、2012年末に誕生した安倍政権によるアベノミクスによる日本株高・円安によるところが大きいでしょう。一般的に資産額の多い人ほどリスク許容度も上がりますから、株式や投資信託などのリスク性資産の保有割合が大きくなります。そのため景気変動や株価上昇の影響を受けやすいのです。
特に今回は2013年の調査では準富裕層だった人たちの中で富裕層の上昇した人と、富裕層から超富裕層に上昇した人が多く、そのためそれぞれ世帯数が増加しているものと思われます。

また2016年の株式相場も途中下落はありましたが、11月の米大統領選とトランプ氏の当選以降活況が続いており、年初並みか若干の上昇で終わりそうです。2016年の調査があった場合は、横ばいか微増の可能性が高いでしょう。

拡大する相続税の生前対策

2013年から2015年の間には、2015年1月1日からの相続税の税制改正もありました。相続税制の変更により、基礎控除の引き下げや最高税率の上昇など特に富裕層・超富裕層に対する課税強化が行われています。
そのため、財産額の上昇も相まって相続税対策のニーズはより高まっている可能性が高いと言えるでしょう。
実際に今回NRIが富裕層調査の一環として行われた全国の企業オーナー(配偶者と合わせて金融資産1億円以上)に行われたアンケート調査でも、下記の引用文にあるようにその傾向が見て取れます。

企業オーナー経営者の富裕層・超富裕層の生前贈与の意向に関して、「相続税のことを考えると、できるだけ早く生前贈与を進めたい」という考え方に対して、「そう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」と回答した割合が合わせて47%でした。また「自分の財産の大半を生前贈与することには抵抗がある」という考え方に対して、「そう思わない」もしくは「どちらかといえばそう思わない」と回答した割合が合わせて31%でした

このように、富裕層の方の間で相続税の生前対策ニーズが高まっている可能性が窺えますが、だからこそ注意もしなければなりません。例えば引用文中にあるような生前贈与は暦年贈与で1回辺りの贈与額を調整することによる基礎控除の活用や相続税と贈与税の税率差の活用などで確かに節税効果が生まれます。
しかしこうした手法に注目が集まり、実際に活用する人が増えているために税務署なども目を光らせており、贈与が成立していないような場合は相続税などの申告後に贈与実績を否認される場合も今後増えてくることが予想されます。贈与の成立の基本事項は下記記事で解説しております。

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