中堅・中小企業の後継者不足を背景に増加したM&A


国内企業同士のM&Aが増加しています。下記は国内企業同士(IN-IN)のM&A件数ですが、2000年以降大きく増加しており、リーマンショック後の時期は一時減少したものの、近年また増加してきています。

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出所:株式会社レコフデータ

ここまでM&Aが増加した背景にあると言われているのが、中堅・中小企業の事業承継ニーズです。上場している大手企業・大企業と異なり、未上場の中堅・中小企業は支配株主(同族株主)が社長を兼ねているオーナー企業が一般的です。こうした会社は社長の子供や配偶者、親族が後継者となることが多かったのですが、近年は後継者不足に悩む企業が増えてきました。そのため、M&Aによる企業売却が事業承継の有力な選択肢となってきたのです。

M&Aによって事業承継を行う場合、どういったメリットや特徴があるのかを見ていきましょう。

M&Aという選択肢

以前の記事でもお伝えしましたが、多くの中堅・中小企業が後継者の不足に悩まされています。一般的には社長の子息がまず一番の後継者候補になりますが、少子化によって候補となる「社長の子供」の人数が減少しています。また時代の変化から経営環境や就業環境も変化しており、社長の子息たちの中には自分が就いた仕事が充実して親の会社を継ぐ意思がない場合や企業経営のリスクを背負いたくはないと思う人も大勢います。
子息などの親族に会社を継がせることが難しいのであれば、会社を支えてきた幹部役員・社員を後継者に据えるという選択肢もあります。しかしその場合も幹部役員・社員に会社の株式を購入する資金がなかったり、そもそも社長を任せられるような人材が社内にいなかったりということがあります。(近年、キャッシュフローが安定している優良会社には、次代の経営を担う役員・社員が出資するSPCに銀行が融資をして株式を買い取るという事業承継も増えてきていますが、この話は別記事にてお伝えします)

そうした時に、M&Aによって第三者に売却をすることは、有力な事業承継の選択肢となるのです。事実、冒頭のグラフにある通り、M&Aの件数は増加しています。

経営上もメリットが多いM&A

M&Aが増加している背景は、親族内承継や親族外(社内)承継に難しい側面があるからだけではありません。企業を取り巻く経営環境は年々厳しくなってきていると言われていますが、そうした環境の変化に耐えて企業を存続させるためにM&Aは規模の利益の追求という面もありポジティブな役割を発揮することも多いのです。

例えばM&Aによって大手企業などに買収されたり、資本の提携が進んだりした場合、親会社の信用力により財務力が強化されることがあります。有利子負債が減少すれば今まで支払利息に当てていた分の収益が改善されますし、資金に余裕ができれば大胆な攻めの経営にも転じられます。またそうでなくとも資金繰りに悩まされることが減るだけで、経営陣の時間リソースの節約にもつながります。雇用の維持が守られれば、従業員にとってもハッピーかもしれませんが、一方で、経営の効率化や環境変化にさらされるかもしれません。

財務の強化以外にも、買収企業と販売ルートや調達ルートなどの共有化することで、営業・調達の両面で以前よりも有利にビジネス展開できることもあります。企業グループ全体の調達量が多くなることで、以前よりも強気に値下げ交渉に臨めますし、販売ルートの共有は営業力の強化や効率化につながります。
またM&Aのタイミングに合わせて不採算部門を整理したり、その部分だけ別に売却したりすることで、得意分野に事業を集中するようなことを行えばより経営は強化されます。

売却側の事業承継ニーズ以外に、買収先企業にもこのような経営上のメリットがあるからM&Aが成立し増加していると言えるでしょう。特に地域経済に根ざした事業を行っている会社でこうした経営上の目的によるM&A(と業界再編)は活性化しており、製造業だけでなく、人口と企業数の減少に悩む地域金融機関同士の合併や、店舗や立地を押さえることが重要な調剤薬局チェーンや、診療報酬の改定などから経営が厳しくなってきている病院同士の合併による広域展開のグループかなど、広い業界で模索がされています。

社員の雇用の確保など

そもそも他に事業承継の選択肢がないのであれば従業員の雇用やオーナー一族の経済的安定を守り事業を存続させるために、最終的にM&A(企業売却)は有力な選択肢となるでしょう。しかしM&Aには上記のような経営上のメリットも大きく、件数の増加により日本全体で知見も徐々に蓄積がされ、以前には多くの人が抱いていたような「乗っ取り」や「敵対的買収」というイメージに代表されるようなものとは限らないため心理的な抵抗感も緩和されてきており、事業承継に悩まれている経営者の方は真剣に検討するケースも増加してきているという背景もあります。

事業承継に問題意識を持っている経営者は大勢いますが、実際に具体的な計画を持って準備を進めている経営者はごく少数と言われています。「子供に後を継いで欲しい」という思いが強い方の場合、良い後継者がいなければ葛藤して悩まれると思うのですが、M&Aという選択肢にもこのようにメリットが多いのだということを理解しても良いでしょう。また財務が優良な会社であれば、会社の株式を売却することで、オーナーには多額の現金が入ってくることが多く、ご自身の引退後のセカンドライフの充実や家族への今後への支援(贈与・相続)に使うことも可能です。

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