上昇する地価と下落する家賃、不動産市場の今を読む


まず、長期的な地価動向を探るため、ここ30年ほどの日本における地価トレンドを振り返ってみましょう。日本の地価は80年代後半のバブルの盛り上がりとともに上昇しその後はバブルの反動により大幅に下落し、2000年代前半の好景気の時には都市部に限定して上昇し、2008年のリーマンショック後の不況時にまた下落しました。そして2012年末の安倍内閣誕生以降の株高や、2013年に2020年東京オリンピック開催決定、また爆買いに象徴されるようなインバウンド(外国人旅行客)の増加によって近年都市部の一部に限定してではありますが、地価の上昇が続いています。

しかし、その一方で都市部を含めて家賃相場は上昇しておらず、むしろ下落傾向にあるとも言われており、地価と家賃の乖離現象が進んでいます。

地価は上昇しているのか?

まず地価トレンドの確認方法を見ていきましょう。地価に関する研究や情報分析はいくつかの団体で行われていますが、最もよく参照されるのは、一般社団法人日本不動産研究所のデータでしょう。

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以前の相続tokyoの記事でも、この団体が作成した市街地価格指数についての記事をお届けしたことがあります。

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今回も日本不動産研究所の提供するデータから、都心不動産価格の参考となる不動産住宅価格指数について見ていきましょう。「不動研住宅価格指数」は、首都圏の中古マンションの売買成約価格情報をもとに作成されており、公益財団法人東日本不動産流通機構より日本不動産研究所に提供された情報を活用し作成されています。
自首都圏のマンション価格の動向を知るのに良い資料と言えるでしょう。

この数値は2000年1月1を100としてそこからの増減を表しており、近年は以下のようなトレンドを描いています。

2010年12月 83.35
2011年12月 78.34
2012年12月 76.44
2013年12月 80.32
2014年12月 84.09
2015年12月 87.50
2016年10月 88.34

参考:「不動研住宅価格指数」10月値の公表について

2010年から2011年にかけて大幅に下がっていますが、これは2011年3月11日東日本大震災や福島原発問題の影響が大きいためでしょう。その後、アベノミクスが盛り上がり、2020年の東京オリンピック開催も決まった2013年以降は上昇を続けています。

バブル期を超える銀行の不動産向け融資

2016年11月に、日本銀行が2016年4月から9月の国内金融機関による不動産業向け新規融資を発表しましたが、融資額は5兆8943億円となり、前年比で16%増加していました。年度の上期としては1989年上期の5兆円強を上回り、過去最高の水準となっています。
不動産購入は銀行ローンを元手に行われることが多いため、こうした銀行の不動産向け貸し出しの増加も、地価の上昇に拍車をかけていると言えるでしょう。

銀行がここまで不動産向け貸し出しを増加させている理由として、1つはマイナス金利政策にあります。日銀の行ったマイナス金利導入などによる大規模緩和を背景として、資金の貸出先の確保のためアパート建築向けや不動産投資信託向けなどの融資が増えているのです。
これは首都圏以外に地方も含んだ話になりますが、2015年の相続税制改正によって基礎控除の引き下げと最高税率の引き上げが行われた結果、相続税対策のためにローンを組んで不動産購入をする人が増えました。一般的に不動産は現預金に比べて相続税評価額が低くなるため、その不動産の市場価格と同額の現預金を相続する場合に比較して、課税される金額が下がる場合が多いのです。
こうした相続税を背景とした不動産向け融資の拡大には、金融機関や不動産会社側からの営業が拡大しているというのも大きいと思われます。

当然ですが、不動産はそこに住んだりオフィスや店舗として活用したいという方がいなければ収益を生みません。上記のような事柄を背景に増加している不動産の供給が、不動産への需要を上回っている可能性もあるのです。
今後、人口が減っていくトレンドの日本で、ローンで建てたアパートの空室率の上昇等によりローン返済に苦しむ事例が増えていくことが懸念されます。

下落傾向にある家賃

上昇を続ける地価に対して、家賃相場は下落ないしは横ばいを続けています。家賃相場の確認には例えば消費者物価指数による統計(CPI家賃)などが用いられますが、首都圏の木造住宅の一畳あたりの家賃は2008年の4177円から2013年の3911円へと下落していますし、同じく非木造も2008年の5442円から2013年の5138円へと下落をしています。

参考:総務省統計局 消費者物価指数(CPI)

またリクルートが運営するSUMOが取り扱う、実際の首都圏の中古マンションの売買データや賃貸契約の締結をもとにしたIPD/リクルート住宅価格指数では中古マンション価格は上昇しているものの、入居家賃は2015年1月を100として、2016年11月は首都圏全体では100.4とほとんど変わっていないという現状が窺えます。

相続税対策と不動産は非常に密接な関係にありますので、不動産動向もしっかりと踏まえ、失敗のないプランニングをしていくことが重要です。


参考:リクルート住まい研究所 IPD/リクルート住宅価格指数

株式会社タスの2016年10月発表のレポートによれば、東京都全域の空室率:11.61%と高く、また2015年の3月を境に特にアパート系物件の空室率が上昇しています。
純粋な資産運用目的でも、相続対策としても不動産投資を検討する場合は注意が必要と言えるでしょう。

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