不動産投資をする人は知っておきたいバルブームの背景、食住接近というコンセプト


2015年以降の相続税の増税(基礎控除の引き下げや最高税率の上昇など)を背景に、ある程度の財産がある資産家や富裕層による「相続税対策を目的とした不動産投資」がブームになっています。相続税の計算の財産評価では、現金1億は「1億円」ですが、1億円で購入した賃貸不動産は1億円の数十%は相続税の評価が下がるためです。
また相続税という背景以外にも、日銀のマイナス金利政策など金融緩和と優良企業への貸出の苦戦によって、銀行など金融機関はアパマンローン(アパート・マンションローン)と呼ばれる不動産投資向けの融資拡大に力を入れており、そうしたことの影響も大きいと言えるでしょう。
不動産会社や銀行員などからの熱心な勧誘や営業を受け、不動産投資への関心を抱いている方も多いのではないでしょうか。

しかし現在の日本は人口・国内経済規模ともに下降トレンドに入ってきており、中長期的には今後は多くの地域で不動産価格の下落や空室率の上昇、家賃相場の下落が予想されています。先行きの甘い見通しや楽観的な想定に基づく不動産投資の失敗は、相続税の節税金額以上の損失にならないとも限りません。ローンで不動産を購入すると、賃料の中からローンの元利を返済していきますが、空室になって賃料がなくなったり、賃料の下落によりローンの返済額より賃料が下がってしまっても、ローンの返済はし続けなくてはいけません。
このようなことを避けるためには、今後も多くの方から好んでもらえるような人気エリアでの不動産への投資が重要です。

今回の記事では、人気の不動産を考える上で一つのヒントなるバルブームについてお伝えします。
これは、あくまでも見方の要素の1つですが、多面的な観点や、自分が得意な視点を養うと外れにくくなるでしょう。

震災以降に加熱が進むバルブーム

まず、バルブームがどういうものなのかを見ていきましょう。

近年、都内の飲食店に関するトレンドに大きな変化が起きていると言われており、それが渋谷や新宿などの繁華街から下町の地元のお店、そしてチェーン展開の居酒屋などではなく個人経営の飲食店などで飲むことを志向する人の増加です。
こうした文脈の中で語られているのが、近年の「バルブーム」です。

バルは元々スペインやイタリアなど南欧の飲食店文化で、食堂とバーが一体になったような飲食店を指します。現地では軽食喫茶店と酒場の中間のような位置付けでその文化が発展し、スペイン人やイタリア人にとって、仕事帰りに気軽に訪れ食事と共に交流を楽しむ「第2の我が家」と呼べるような存在です。
カウンターがあって1人でも入りやすく、カジュアルに飲み食いできるお店というのが基本コンセプトと言えるでしょう。また多くのお店がカウンター内の料理人の方とコミュニケーションしやすいようになっており、店員や店主の方の存在をきっかけにして他のお客さんとの交流も発展しやすいという特長を持っています。
また職場近くのお店に通う場合もありますが、それよりも自分の地元近くのお店に通う場合が多いことが特長です。

特に都心部を中心に近年日本でも、バルを名乗るお店が増えてきましたし、実際にそこへ通う人も増えてきています。また元はスペインバルが発祥ですが、イタリアンバル、和バル、寿司バル、日本酒バル、肉バル、など提供する飲食物の種類に関係なく、上記のような特長を備えたお店が増えているのです。

そしてこうしたバルブームの背景ですが、日本で「スペインバル」を名乗るお店が増えてきたのは2005年ごろからであり、恵比寿のティオ・ダンジョウ(現在は調布に移転)や渋谷のアヒルストアが火つけ役と言われていました。

しかし、本格的なバルブームの浸透は2011年に起きた東日本大震災と福島原発の事故以降かもしれません。震災までは渋谷や新宿など職場に近い繁華街で飲み歩いていた方が、災害時の帰宅の困難さなどから自宅近くのお店を利用することが増加していったのです。
また度重なる余震や原発事故への不安などから他者との交流を積極的に求めるようになり、客と店員の距離や客同士の距離が遠いチェーン店の居酒屋などではなく、地元のバルを志向するようになったと言われています。

特にこの頃にはスマートフォンやSNSの普及が進んだ時期でもありました。自宅近くのバルで飲んでいて、そのことをfacebookやtwitter、Instagramなどでつぶやくと近所に住んでいる友人なども気軽にやってきてくれます。また集いやすい店舗設計がされているのもバルの特長です。
それに2000年代の飲食店業界はホットペッパーなどに広告を出そうとすると広告費の負担が重く、個人経営の飲食店よりも大手のチェーン店の方が有利な傾向にありました。しかし2010年頃からスマートフォンが広く普及し、食べログやRettyのようなクチコミサイトや、SNSなどで情報収集をするようになったため、多額の広告費をかけられない個人経営のお店にもお客さんが集まりやすくなったことの影響も大きいでしょう。

バルのある街が住みたい街?

そして、こうしたバルブームと同一の背景から進むのが、住みたい街の変化です。「良いバルのある街が住みたい街だ」とまで言ってしまうとやや極端に感じてしまうかもしれません。しかい良いバルに象徴されるような、地域の共同体性や他人との適度な距離感、また飲食に関する文化が根付いていることを住みたい街の条件として重視する方が増えていると言われています。食の機会と住環境の接近と言えるでしょう。

良い住宅街・住みたい街に求められる基準が以前のような「閑静な住宅街」というようなものから、飲食などをきっかけに身近な交流を楽しみやすい街に変化している部分があるのです。特に不動産投資の対象となりやすい単身者狙いの物件でその傾向は顕著になっていると言えるでしょう。
大手不動産サイトのHOME’Sを運営する株式会社ネクストは、HOME’S総研という不動産に関する研究部署を設けていますが、そこの所長を務める島原万丈氏は「住むのに良い条件の街は、まず活気のある商店街が近くにあること」と語っています。

HOME’S総研では、本来は中々定量化しづらいはずの「街の魅力」を測るために、「センシュアス度」という指標を設け、下記の8項目の調査を公表しています。

1 共同体に帰属している
2 匿名性がある
3 ロマンスがある
4 機会がある
5 食文化があること
6 街を感じられること
7 自然を感じること
8 歩けること

HOME’S総研 センシュアル度調査

指標を見ると分かりますが、共同体への所属や食文化や街を感じられるかどうかという基準を不動産サイトのHOME’Sでも重視しているのです。
この調査の結果は1位が東京都文京区、2位が大阪市北区、3位が武蔵野市、4位が目黒区、5位が大阪市西区となりました。文京区は俗に「谷根千」と呼ばれる谷中・根津・千駄木エリアは住みたい街としても有名です。また武蔵野市も吉祥寺などは伝統的に住みたい街ランキングの上位であり、上述のようなバルのある街、交流の盛んな街と言えるでしょう。

これから不動産投資に取り組むという場合、実際に投資物件候補のある街を自分で、時に家族や友人を伴って歩いてみると良いのではないでしょうか。もちろん物件自体のスペックは重要ですが、街を歩いてみて自分や同行者は住みたいと感じるかどうかを判断基準の1つにしてみるのも面白いと思います。


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