贈与税・相続税の時効を待つことはできるのか?


刑事上の事件や、民事上の権利の請求などには「時効」というものが存在し、対象となる出来事から一定期間を超えると刑事事件であれば公訴権(警察や検察が犯罪者を捉え訴える権利)が消滅しますし、民事事件であれば債権者はその債権に対する権利を失います。

犯罪事件の被害者や正当な権利者にとっては時にやりきれない思いを抱かせてしまう制度です。しかし、刑事の場合長期間の時間経過は、証拠などの散逸を招き冤罪の危険性を高めてしまいます。また民事の場合も長期間の時間経過は新たな現状を生み出し、その保護の必要性を生じさせますし、正当な権利者でも一定期間、その権利行使行わなかった者を保護する必要は無いという考え方が存在します。

このような背景から時効というものは成り立っているのですが、時効制度は税法においても存在し、相続税や贈与税も一定期間税務署などからの請求が無い場合、時効を迎え納税の義務がなくなります。

相続税や贈与税の時効期間

相続税や贈与税の申告を行い、税務署が相続や贈与による財産の移動を把握できなかったり申告に対する調査を実施せず、課税措置が行われない場合、国税通則法72条1項と相続税法36条の記載によって相続税は5年、贈与税は6年で時効を迎えます。

【国税徴収法72条1項】
国税の徴収を目的とする国の権利は、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって、時効により消滅する。
【相続税法36条】
税務署長は、贈与税について、国税通則法第70条(国税の更正、決定等の期間制限)の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正若しくは決定又は賦課決定を当該各号に定める期限又は日から6年を経過する日まで、することができる

こうした点だけをお伝えしますと、相続の財産隠しや贈与の行為を隠れて行って相続税や贈与税の負担を免れたいと思う人も出てきてしまうかもしれません。ただ、無申告者を逃がしていたら真っ当に納税している人にとって公平でなくなりますし、課税当局としても、そうしたことがないよう、税務署は不動産取引や金融機関の取引に目を光らせています。隠ぺい行為や意図的な無申告や過少申告といった脱税が見つかった場合には、本来の課税金額以上の多額の追徴課税(重加算税で35%の加算や延滞税など)や多額にわたる場合には刑事上の懲罰の対象となってしまいます。
税務署に見つからないようにするにはどうしたらいいか、というのは一定数の人たちには関心があるテーマでしょう。各種税目(法人税、所得税、消費税、相続税)で多額な金額を脱税するとニュースになりますし、どのような脱税が摘発がされているかは分かりますが、脱税で逃げ伸びた人はニュースにもならないし表にも出て来ませんので、どれだけの人がどのような方法によって逃げ切っているかは分かりません。
ただ、多額の金額を脱税していて、そのお金を使う際(不動産取引その他高価な買い物や金融機関の入出金や有価証券取引履歴)には足がつきますので、結局お金を使えない(動かせない)ことにもなりますので、摘発の不安とも戦いながら、また、時効を果たし課税を免れたとしても、その後において課税当局に厳しいマークを受けることにることは必至ですから、果たして本当に得なのかどうかもよくよく考えるべきでしょう。
もちろん、相続tokyoは、過大な税金を納めることはもったいないと思いますがルールの範囲内で最小限の適切な納税は国民の義務として全うすべきであるというスタンスです。

時効の成立が難しい理由

どうして上記のような相続税や贈与税の時効の成立は難しいのか、その理由を見ていきましょう。

悪意がある場合、時効期間は相続税・贈与税は7年に延長

相続税は5年、贈与税は6年の時効期間ですが、悪意を持って相続隠しや贈与隠しを行っていた場合相続税は2年、贈与税は1年間国税徴収権の時効までの期間が延長されます。
すなわち、相続税・贈与税ともに7年が時効になります。無申告である場合の時効は7年であると思っておけばいいでしょう。

【国税通則法73条3項】
国税の徴収権で、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税又は国外転出等特例の適用がある場合の所得税に係るものの時効は、当該国税の法定納期限から2年間は、進行しない。

【相続税法36条4項】
第1項の場合において、贈与税に係る国税通則法第72条第1項に規定する国税の徴収権の時効は、同法第73条第3項(時効の中断及び停止)の規定の適用がある場合を除き、当該贈与税の申告書の提出期限から1年間は、進行しない。

税務署による監視の目

時効の期間が7年であるのなら、7年間贈与や相続を隠せば良いのではないかと思われる方もいるかもしれません。確かにそうした側面はあるのですが、一般の方が税務署に対して高額な財産の移動を隠すのは難しいと言えるでしょう。

税務署や国税局は、各種支払調書を始め様々な制度や手法を通し、富裕層や高額所得者の特定を行い、重点管理富裕層という形で見張っています。そのためそもそも相続や贈与の隠匿を行うインセンティブを有する人は、始めから税務署などの監視対象となっているのです。
その上で税務署は銀行調査などの権利を有しているため、銀行口座に怪しい動きがある場合はすぐに露見してしてしまうでしょう。確かに現在の住所地などから遠く離れた地銀や信金などにある口座などだと税務署側も調査しきれない場合もあると言われていますが、それらも今後はマイナンバーによる監視の対象となっていきます。
上述の通り、不動産取引や金融資産の動きも監視の対象となっています。

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普通の人がすぐにバレなさそうだと思いつく方法はタンス預金(現ナマ)を抱えるという方法です。タンス預金によって受け取った財産をその後もタンス預金し続けるなら良いですが、それはかなり物騒な状態ではあります。そしてもしそうした財産を銀行などに預けようとした場合、そうしたところから税務署に露見する可能性が高まります。貸し金庫だから安全ということもなく、隠した財産を貸金庫から回収して銀行を出たとたんに待ち構えていた税務職員に捕まったという話も存在します。

極端な荒技も

そして最後に、税務署基本的にこうした時効を認めたがらず、極端な”荒技”に走る場合もあるという事も覚えておいてください。

実際にあった事例では、ある人が親から住宅の取得資金数千万円の贈与を無申告で受け、そのまま時効成立期間が経過したことがありました。税務署はその親が被相続人となる相続の発生時にそうしたことがあった事に気づいたのですが、時効成立期間が過ぎていたため、税務署そもそもこの資金移動は贈与ではなく子への「貸し出し」だったとし、債権として相続財産に含まれるとしたのです。
当事者は税務署に反論し、国税不服審判所や一般の裁判にも訴えたのですが、税務署側に贈与だと主張するのであれば、贈与である証拠(契約書など)を示せと主張され、そうした書類もない事から裁判でも敗訴し、課税が確定してしまったのです。

このような納税者側が善良とは言えないケースの場合、贈与である証拠を示せないのと同様、貸し出しであったという証拠も示せないのですが、こうした場合、国税不服審判所や裁判所も社会正義の観点から税務署側の主張に流されやすいでしょう。

時効前の発覚には重いペナルティー

時効狙いの相続や贈与の隠匿を防ぐため、加算税や延滞税などの制度も存在します。つまり時効を狙って相続や贈与の隠匿を行っても上記のように途中で露見した場合、通常通り納税を行った場合に比較して余計な負担を強いられてしまうのです。

加算税

申告しなかった場合=無申告加算税(金):年15%〜20%
※申告期限から2週間以内は発生せず。それ以降でも指摘前に自己告すれば5%。

申告した税金が少なかった場合=過少申告加算税(金):年15%
※指摘前に自己申告すればかかりません。

悪質と認定された場合=重加算税(金):年35%(期限内の場合)、40%(期限後申告の場合)

延滞税

延滞利息である延滞税は、納付するまでの日数によって下記の通り。

【納付期限から2か月以内】
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年2.7%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年2.8%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%
原則として年「7.3%」ですが、、平成12年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」の割合となります。
また、平成26年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「特例基準割合(注3)+1%」のいずれか低い割合となっており、具体的な割合は、上のとおりとなります。

【納付期限から2か月超】
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%
原則として年「14.6%」ですが、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となり、具体的な割合は上のとおりとなります。

善良な国民の皆様におかれましては、税務申告は適正に行い、相続税対策はもっと真っ当な方法で行うことを推奨します。
相続tokyoでは真っ当な節税や財産管理のご相談やアドバイスや各種専門家のご紹介をしておりますので、お気軽にお問い合わせからお尋ねください。


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