ドイツの相続税制と課税対象者


今回の記事ではドイツの相続税制について見ていきます。

ドイツと日本との歴史的な関係としては、江戸時代末期に、ペリーの黒船以降開国路線の中で1861年に結ばれた日普修好通商条約の締結にまで遡ります(同時のドイツの名称はプロイセン)。その後の日独関係は特に険悪ではないものの、政治的に特別友好的ということもありませんでした。
しかし当時のドイツは、近代化を成し遂げたばかりという状況が日本と似ており、それでいて医学や工業分野の高い技術も有していたので、日本は積極的にドイツの学問や制度を真似していきます。大日本帝國憲法の作成時にも、ドイツの政治制度が参考にされました。

そうした背景もあって、今も日本とドイツの間の結びつき強く、現在もドイツはヨーロッパで最大の貿易相手国であり、4万人以上もの邦人が在留しています。またその人数も緩やかにですが上昇を続けているのです。


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1 課税対象者

まずは、ドイツの相続税ではどのような場合に課税対象者となるのかを見ていきましょう。
相続税には大きく分けて遺産課税方式と遺産取得課税方式という2つの潮流があります。
遺産課税方式は被相続人(故人)が課税対象、遺産取得課税方式は相続人が課税対象となります。そのため遺産課税方式の国の場合は主に被相続人のステータス(国籍や居住地など)に着目することで、その国において相続税の課税対象となるかどうかがわかります。一方で、遺産取得課税方式の国の場合、被相続人に加えて相続人のステータスも重要になってくるのです。
ドイツは遺産取得課税方式を採用しているため、被相続人と相続人の状況を総合的に鑑みて、課税対象者となるか否かが変わります。なお、日本もドイツと同じ遺産取得課税方式を採用しており、米国や英国は遺産課税方式を採用しています。

1.1 無制限納税義務者

無制限納税義務者とは、財産の所在を問わず(国内財産も国外財産も)全ての財産が課税対象となる人のことを指し、ドイツの相続税性においては被相続人のステータスを問わず、ドイツ国内に住所を有する相続人は無制限納税義務者となって国内外全ての財産が課税対象となります。
この条件を満たしていない場合でも、下記の条件を満たしていれば無制限納税義務者に該当します。

・ドイツ公法に基づき雇用され給与を得る個人(公務員)
・前述の個人の親族
・相続開始時においてドミザイル(居住)を有する国において制限納税義務者に該当する者
・恒久的な居住地がドイツ以外の低課税国である場合又は恒久的居住地を有しない場合
・多くの経済的利益をドイツ国内で得ている(被相続人又は贈与者が、ドイツ法人の株を多く保有している)場合
・ドイツから出国する以前 10年以内に最低5年間、ドイツの無制限納税義務者に該当する場合

1.2 制限納税義務者

制限納税義務者とは、全ての財産が課税対象になるわけではなく自国(ドイツの相続税制においてはドイツ)国内の財産のみが、相続税の課税対象となる人のことを指します。

相続開始時点において、相続人がドイツ国籍を保有せず、相続開始前5年間ドイツに住所を保有しておらず、かつ、ドイツ国籍を保有していなかったという条件を満たすと制限納税義務者となり、ドイツ国内にある財産のみがドイツの相続税制の課税対象となります。
例えば海外赴任などでドイツに駐在しており、現地の金融機関に資産を残していたという場合は、被相続人と相続人ともに日本に帰国済みの日本人であったとしても、その財産はドイツで課税されます。
(外国税額控除の制度があるので、ドイツと日本との二重課税は行われないように調整がなされます。)

2 相続税の計算方法

課税対象者がわかったところで、どのように相続税が適用されるのかも見ていきましょう。ドイツは日本と同じく遺産取得課税方式を採用しているため、相続税計算の流れは類似しています。しかし適用税率に関しては、法定相続人においては誰が取得しても適用税率は一律となっている日本と異なって被相続人との関係に応じて変わってきます。

2.1 相続税の計算方法

まず相続税の計算方法は、下記のような流れになり、日本での相続税の計算の流れと酷似しています。

①相続や遺贈によって相続人が得た財産から相続した債務を控除し、純価額を求める
②また相続時に伴って取得した財産意外に、相続開始前10年以内に被相続人から贈与を受けた財産を取得当時の価値で加算し、一定の調整を行って最終的な課税価格を求める
③法定相続分にしたがって、各相続人で按分する
④個人の状況ごとに発生する控除などの調整を行って、個別の課税価格を求める
⑤各相続人の課税価格に対する適用税率によって各相続人の税額を算出し、それを合計することで相続税額を求める

3 相続税の適用税率と基礎控除

ドイツにおける相続税の適用税率と基礎控除についても見ていきましょう。これはドイツの相続税性のユニークな特徴なのですが、相続人と被相続人の関係性に応じて3タイプの課税タイプを設けており、適用税率や基礎控除が変わります。被相続人と近い相続人は税負担が軽く、そうでない相続人は重くなるようになっています。

3.1 3タイプの課税タイプ

Tax class 1
1.配偶者
2.子及び継子
3.2.に列挙された子及び継子の直系卑属
4.死亡による取得の場合に限り,両親及び祖父母

Tax class 2
1.課税クラスⅠに分類されない場合に限り,両親及び祖父母
2.兄弟姉妹
3.兄弟姉妹の一親等の直系卑属
4.継親
5.子の配偶者
6.配偶者の両親
7.離婚した配偶者

Tax class 3
その他全ての取得者並びに負担付贈与

3.2 課税タイプごとの基礎控除

・配偶者又: 50万EUR
・子、もしくは子が死亡している場合(代襲相続の場合)の孫:40万EUR
・子が生存している場合の孫:20万EUR
・上記以外のTax class 1:10万EUR
・上記以外のTax class 2:2万EUR
・上記以外のTax class 3:2万EUR

3.3 課税タイプごとの適用税率

基礎控除後課税価格 Tax class1 Tax class2 Tax class3
75,00 EUR以下 7% 15% 30%
300,000 EUR以下 11% 20% 30%
600,000 EUR以下 15% 25% 30%
6,000,000 EUR以下 19% 30% 30%
13,000,000 EUR以下 23% 35% 50%
26,000,000 EUR以下 27% 40% 50%
26,000,000 EUR超 30% 43% 50%

以上、ドイツの相続税制についてその概要をお届けしました。

国際相続は複雑な論点が発生することが多く、専門としている税理士に依頼した方が良い場合が多いので、注意してください。相続tokyoでも専門家のご紹介などを行っていますのでお気軽にお問い合わせください。


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