小規模宅地の特例の見直しなど】2018年税制改正における相続税関連の変更②


アベノミクスを掲げ、経済成長を重視している安倍政権は、成長軌道を確かなものとし、さらに今後の超高齢化社会の到来を見据え、「生産性革命」と「人づくり革命」による「一億総活躍社会」の構築を政権の重要テーマとし、今回の税制改正にもその内容が反映されています。
多様な働き方を促進するため、これまで給与所得控除が受けられず不利とされてきていた個人事業主と給与所得者の税制上の格差を埋めるために、給与所得控除の縮小と基礎控除の引き上げをセットにした個人所得課税の見直しや(※1)、デフレ脱却のため企業に設備投資や賃上げを促すための法人税改正などがそれにあたります。
(※1所得税改正に関しては、実質的な生活費や遊興費などの一部を経費算定している個人事業主も大変多く、現実に即していない、将来のさらなる給与所得控除引き下げ=実質増税のための布石だという批判も存在します。)
また、納税環境の整備や、国際的なICT化に対応していくため、様々な税制において電子申告を推進するための措置が新たに講じられています。

そして、資産税関連に関しては、中小企業の代替わり促進のための事業承継税制の改正や、近年問題視されていた一般社団法人や小規模宅地の特例を悪用した租税回避手法への封じ込めを目的とした改正が行われました。

2018年度税制改正によって行われる相続税制(資産税)関連の変更の中でも、小規模宅地の特例の見直しなどに関してみていきましょう。

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小規模宅地の特例の見直し

小規模宅地の特例は、相続税申告を行うことと被相続人が住んでいた住居を相続人も使い続けることを前提に、相続時の宅地(居住用宅地は330平方メートルまでの一定の限度面積あり)に対する評価額が80%減される制度です。また貸付事業用宅地なども、一定の限度面積に関しては、評価額が50%〜80%減されます。
ただ現行制度では、家なき子特例というルールを使い、相続人が元々宅地を所有していて小規模宅地の特例の適用対象でないような場合でも、自分が所有する法人に土地を売却したり相続人の子供に土地だけ贈与を行ったりして、小規模宅地の特例にあやかるような場合がありました。
また、貸付事業用宅地の評価減に関しても、相続税対策のためだけに、直前に駆け込んで不動産賃貸業を始める節税手法が、課税の公平性にかなっていないとして問題視されていました。

このため、下記のような改正が今回の税制改正にて行われます。

家なき子特例の見直し

被相続人と同居はしていないが、自分自身も自分の持ち家に居住していない者(家なき子)が、被相続人の居住宅地を相続した場合に、小規模宅地の特例の対象となる特定居住用宅地等の特例の対象者から次の者が除外されます。

①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
②相続開始時において居住用の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

このような規定を設けることで、持ち家のある相続人がその土地を売却したり、相続人の子などに贈与したりすることで、被相続人の居住宅地を相続した際に小規模宅地の特例を悪用できるケースを防止します。

貸付事業用地特例の見直し

貸付事業用宅地の評価減の対象範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地が除外されました(ただし、平成30年3月31日以前に貸付事業に供していた土地については、従前の取り扱い)。
近く相続が発生しそうで、相続税対策のために貸付事業用宅地の評価減の活用を検討していた場合は、平成30年3月31日に間に合うよう対策を急いだ方が良いかもしれません。

その他の改正内容

その他の改正内容は以下にまとめさせていただきます。

土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設

土地の相続が行われたら、法務局に出向いて名義の書き換え(相続登記)を行わなければなりません。しかしこの作業を行わなくても土地を利用し続けることもできるため、名義の書き換えを行わないまま相続人が死亡してしまい、また次の相続が発生するような場合があります。

こうした状態の解消を促進するため、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に、上記のような場合の死亡したものを登記名義人とするための手続きにかかる登録免許税が免除されます。

外国人の出国後の相続税納税義務の見直し

平成29年度税制改正において、日本に10年超滞在した外国人が出国後5年以内に行った相続や贈与については、国外財産に対しても相続税・贈与税が課税されることとなりました。
しかし、例えば仕事の引退後に母国に戻った後にすぐ死亡してしまったような場合、国外財産にまで課税されるような事態は酷であり、財産が多い傾向にある高度な技能を有した外国人が日本での就労を避ける原因にもなってしまいます。

そこで、外国人が出国後に行った相続・贈与に関しては、原則として国外財産に関しては課税対象ではなくなります。

特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設

文化庁長官の認定を受けた形で、美術館に寄託していている美術品の相続に関して、相続人も被相続人と同様に寄託を継続した場合、当該美術品に係る課税価格の80%に相当する相続税の納税が猶予されます。

農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

農業保護の観点から、特定の農地(生産緑地)の相続では相続税の納税が猶予される制度が存在します。その制度に対して、以下のような変更が行われることとなりました。

・被相続人や相続人が実際に耕す農地以外に、都市農地の賃借の円滑化に関する法律(仮称)等に基づく場合、一定の貸付農地も相続税の猶予対象に
・三大都市圏の特定市以外の生産緑地は、猶予のための条件が現行の営農継続20年から終身へ変更
など

以上、平成30年度(2018年)税制改正における相続税制の変更についてお届けしました。
本記事で取り上げた家なき子特例への制限追加と、一般社団法人への相続税の課税が特に大きな変更といえるでしょう。この変更で、相続のプランニングが大幅に狂ってしまったと困っている人もいるかもしれません。そうした場合は状況を確認するためにも、相続に詳しい税理士に相談することが大切です。

相続tokyoではタックスプランニングのサポートも行っていますので、お気軽にご相談ください。


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