約40年ぶりに実施される相続分野の民法改正、その内容とは?


現在、1980年以来約40年ぶりに相続分野の民法改正が行われようとしています。前回1980年の改正では、遺言が無い場合の配偶者の法定相続分が遺産全体の3分の1から原稿の2分の1に引き上げられた事が改正の目玉でした。そして今回の改正でも被相続人の配偶者に対する保護の強化がその目玉となっており、残された配偶者が住まいと生活資金に困らないようにするための規定が盛り込まれています。

(※2018年6月19日の衆院本会議で改正案が可決されました。参議院本会議でも問題なく通過すると思われます。)

特に今回改正が行われた理由として、1980年に比較して社会の高齢化が進んでおり、被相続人の配偶者を保護する規定を強化しなければならないほど状況が切迫してきたからと言えるでしょう。具体的な改正内容などを見ていきます。

配偶者の居住権の保護

今回の相続法制改正の目玉といって良いのが、この配偶者の居住権の創設と言えるでしょう。

現行の法制度でも被相続人が所有し同居していた持ち家に、配偶者その家を相続すれば住み続ける事は可能です。配偶者には2分の1の法定相続分があり、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減などの仕組みもある事から自宅の相続は行いやすい状況にありました。

しかし近年の高齢化によって残された配偶者の生活資金確保の必要性は高まってきており、配偶者が住まいを確保するために自宅の所有権を相続するとその分預貯金などの金融資産に対する相続割合が減少してしまい、生活資金に困窮してしまう例も出てきていたのです。
特に男女の平均寿命の違いなどから、夫婦のうち男性が先になくなり女性が残されるという場合が多いのですが、住宅の所有権は男性が所有している場合が多い為、こうした問題は発生しがちなものでした。
例えば配偶者(妻)と子供2人が相続人、遺産は評価額5000万円の自宅と現預金5000万円という場合、妻が自宅を相続してしまうと法定相続分的には現預金に対す請求権はなくなってしまいます。

そこで今回の法改正では配偶者居住権というものが創設されました。この権利を持つ配偶者は、自宅に対して 無償で使用収益する権利を取得します。そしてこの権利は売却を行う事ができせんが、その分財産評価額は所有権より低くなります。先の例で配偶者居住権の評価額が2500万円だったと仮定すると、預貯金に対して2500万円分の取り分を得られる事になるのです。
なおこの配偶者居住権は婚姻期間20年以上の夫婦で、生前のうちに住居を贈与するか遺言によって贈与の意思を示すことで住居を遺産分割の対象から外す事も可能です。

なお上記の制度はあくまでも法律的な婚姻関係にある夫婦にのみ適用される制度です。様々な事情によって籍を入れていない内縁関係の場合や、LGBTのパートナーシップなど法律婚の対象外となる関係性においては認められておりません。
(6月19日の衆院法務委員会では付帯決議も採択されており、「多様に変化する家族のあり方を尊重し、保護のあり方を検討する」と明記されています。そのため今後も制度の変更は続くかもしれません。)

法務局による遺言の保管

遺言には自分で作成する自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言に大きく分けられます。内容の確からしさや、保管性などの観点から公正証書遺言が推奨されますが、そこまではしたく無いと自筆証書遺言で済ませられる方も大勢いらっしゃいます。
そしてこの自筆証書遺言が全国の法務局で保管できることになりました。

これまで自筆証書遺言は自宅の金庫や書斎、仏壇などで保管するか、金融機関や弁護士などに預けるかしていたのですが、相続の発生後にその行方が分からなくってしまうトラブルが発生していました。今後は法務局に預けられるためこうした紛失のトラブルや、改竄などのリスクを下げることが可能です。
なお今回の改正ではこれまで手書きで作らなければならなかった財産目録がパソコンで作成可能となり、家庭裁判所で相続人が立ち会って中身を確認する検認も不要となります。

介護などがあった場合の相続人以外の金銭請求

現在の日本の高齢者世帯では親の介護を子の配偶者、特に息子の嫁が行うという事がよく見られます。しかし子の配偶者は相続人では無いため、どれだけ献身的な介護を行ったとしても遺言などで指定されない限り財産を相続できませんでした。もちろんお金の為だけに介護を行うわけでは無いのでしょうが、全く親なお面倒を見なかった子が財産を相続できて、一番献身的に尽くしてくれた人には1円も入らないという事例に違和感を感じざるえないような事も多かったのです。

そこで今回の法改正では、こうした義理の子の献身的な介護や看護に報いるため、相続人以外が義父母などを介護していた場合に、相続人に金銭を請求できるようにする制度も設けられることとなりました。

以上、2018年中に成立見通しの相続法制の改正についてお届けしました。
また正式成立後に、詳細をお届けしていきたいと思います。


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