宗教法人の相続・事業承継問題を考える


宗教法人の相続や事業承継問題を見ていきましょう。

宗教は人間の根幹や倫理観に関する部分でもあり、世界的にとても尊ばれています。しかし、日本における宗教の扱いは欧米圏におけるキリスト教や、中東圏におけるイスラム教ほどに生活の根幹を規定する存在ではありません。
そのため、近年では自身を無宗教だと認識する人も多く、また葬儀や埋葬に関しても伝統的な仏式を選択せず、自由な形態によるものや簡素なものを選択する人が増えてきました。それに近年のワークライフバランス重視の気風の中で、「伝統」や「信心」という言葉をベールに隠されていた宗教界の労働問題など取りざたされるようになってきており先行きが不安視されています。
しかしその一方で宗教法人の相続では税金面の負担は著しく小さく、一般企業の事業承継における株式承継時のような苦労はほとんどありません。

宗教法人の相続は税金面で超有利

そもそも、宗教法人とは昭和26年に施行された宗教法人法によって定められた団体です。そしてその法律によれば、「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、 宗教団体に法律上の能力を与える」と定義されています。

これを簡単に解説しますと、宗教法人とは一定の信仰の元、宗派や教団といった統括する組織が存在し、寺院や教会といった礼拝のための施設
などを所有する団体に対して、法人格が与えられたものと言えるでしょう。宗教法人を新たに設立するためには、その法人の本部がある都道府県知事あるいは文部科学大臣に対して申請を行わなければなりません。
なお宗教法人は税制上の優遇措置なども大きく、また一度認可を受けますと信仰の自由という憲法上その権利が認められた存在であることから、滅多にその法人格が取り消されるようなことがありません。そのため宗教法人の新規設立には厳しい審査や複雑な手続きが多く、簡単ではないと言えるでしょう。

そして宗教法人の相続に関してですが、これは一般的な株式会社の相続よりは社団法人や財団法人の相続に近いものがあります。宗教法人には株式のような持分が無いため、その相続は法人代表者の代替わりという形で行われます。そのため、相続税の課税は発生しません。贈与税も同様です。

宗教法人の税金面での優遇は大きい

宗教法人には相続時に課税が発生しないだけではなく、様々な税制上の優遇措置が設けられています。まず、信者からのお布施など、宗教行為に関する収入は非課税です。おみくじやお守りの販売、また葬儀の執り行ないなどに関する収入も宗教行為にあたるため、課税されません。
また宗教法人は宗教行為とは別に独自の収益活動を行うことも許されており、そこからの収入は法人税の課税対象となりますが、税率が普通の法人の23%に比較して19%と安く、さらに所得が20%控除されるため、実質的な税率はたった約15%で良いのです。

宗教法人の事業承継(代替わり)の行われ方

上にて宗教法人の代替わりは、代表者の交代だけと言いました。基本的に多くの宗教法人が親から子への法人を受け継がせていきますが、都合の良い後継者がいなかったり、法人の運営に問題があって他者を後継者に招く場合もあります。

いずれの場合であっても、まずは宗教法人の責任役員会で後継者を決定しなければなりません。責任役員会は、伝統的な宗教法人であるお寺や神社では檀家さんや氏子さんの代表者たちになります。この人たちの意見を完全に無視して後継者を決定することは難しく、まずは彼らへの説明と説得が重要と言えるでしょう。

事業承継には様々な課題の解決も必要

欧米でも近年、聖職者による児童への性的虐待が報道され、宗教界が聖職者へのカウンセリングを導入するなど一般的な観念に照らせば本末転倒な事件が起きていますが、日本の宗教界も不祥事と無縁ではありません。
伝統的な宗教の場合、特に大きいのは労務問題や税務問題でしょう。信仰上の競技や修行という言葉を隠れ蓑に、過剰な労働の強制や一種の虐待・暴力事件の発生は度々報道されています。また、会計に関してもルールが厳しく無いこともあって、どんぶり勘定で済ませている法人・団体が多いのです。
新興宗教に関しては施設周辺の住民との関係性や、信者の出家などにともなうトラブル・訴訟を抱えてることも珍しくありません。

宗教法人の相続・事業承継は税金面の課題がほとんど無いからこそ、こうした問題にどう向き合うかが重要と言えます。


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