自筆証書遺言作成の簡便化(2018年相続法制改正④)


遺言の作成方法には、自分で作成を行う自筆証書遺言と、公証役場に属する公証人に作成してもらう公正証書遺言の2つがあります。自分で作成するためミスも起きやすい自筆証書遺言に比較して、公正証書遺言はミスや紛失の心配がないため、専門家の間では公正証書遺言を勧める方が多いのですが、公正証書遺言作成のハードルが高いことや緊急時の作成の難しさなどから自筆証書遺言をお手軽に作成できる状況も求められていました。

そして2018年に行われた相続法制の改正では、自筆証書遺言の作成が簡便化されたのです。詳細を見ていきましょう。

遺言の作成形式の変更

まず大きな変化ですが、はこれまで全文を自筆で書かなければいけなかったのが、財産目録はパソコンやワープロでの作成が可能になり、不動産登記事項証書や通帳のコピーの添付も可となりました。これまでは財産目録も自筆しなければならなかったので、この点が大きな負担だったのですが、大きく改善されたと言えるでしょう。
特に資産家にとっては記載項目が多くなりがちなので、作業がかなり簡便化されるはずです。

ただし、偽造防止のために印刷した財産目録への署名捺印は必須となっています。その点は注意してください。

法務局による預かりも開始

またもう1つの大きな変化は、これまで自分で保管するしかなかったのが、法務局によって預かってくれるように代わったことです。公正証書遺言であれば、元々原本は公証役場が預かってくれますので、保管や検索が簡単だったのですが、自筆証書遺言の場合保管場所がわからなくなって家族が見つけられなかったり、邪な考えを持った人物に偽造・改ざんされるリスクもありました。

しかし、法務局での預かりが始まればこうした心配は大きく下がるでしょう。
なお、法務局に預ける際にはその内容を担当事務官が審査してくれます。内容の不備があれば指摘してくれますので、そういう意味でも安心と言えるでしょう。

またこれまで自筆証書遺言の開封には、家庭裁判所による検認が必要でした。これは偽造や変造を防止する目的なのですが、法務局に預けられた自筆証書遺言に関しては、このプロセスは省略できます。
さらに、相続人は遺言の検索や写しの交付も受けられ、相続人の誰か1人が閲覧すれば他の相続人にも連絡が行く仕組みがさいようされる予定です。

それでも自筆証書遺言の作成には注意が必要

ただ、これらの点を考慮したとしても自筆証書遺言の作成には注意が必要でしょう。
遺言書の本文と別紙や財産目録などの間で書式や作成日が異なったり、場合によっては書いているペンが違ったりするだけでも、争いの原因になることがあります。特に一部の相続人に過剰に有利だったり不利だったりした場合、そうしたことは避けられません。両方を重ねて割印をするなどすれば良いですが、そこまでは気が回らない人も多いでしょう。

その点、公正証書遺言であれば法律のプロである公証人が作成に携わってくれるので、内容の不備のチェックまで踏まえたアドバイスをしてくれます。当然、第三者による改ざんや紛失、未発見などのリスクも少なく、安心な方法といえるでしょう。
公正証書遺言の作成には2人以上の証人の存在や、数万円の事務手数料の発生など、気軽なものとは言えませんが、自力で自筆証書遺言を作成する作業もかなり煩雑なものなので、それを思えば大差はないとも言えます。

特に資産家の方で、かつ相続人が複数いる方の場合は自筆証書遺言よりも公正証書遺言を選んだ方が良いでしょう。自筆証書遺言はあくまでも緊急時の対応であり、普段から相続についてよく考え余裕を持って公正証書遺言を準備するというのが王道と言えます。


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