遺留分は原則金銭債権化(2018年相続法制改正⑥)


相続などを巡るドラマなどでも多く出てくる言葉に、遺留分(いりゅうぶん)というものがあります。遺留分とは相続人(ただし被相続人の兄弟姉妹以外)の権利で、被相続人の配偶者と子供は法定相続分の1/2まで、父母は法定相続分の1/3までは遺言などでも侵すことのできない権利として認められているのです。
そのため、もし被相続人が遺留分を侵害するような遺言を残した場合、侵害された相続人は侵害した(財産を法定相続分より多く取得した)他の相続人等に対して、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間の間、遺留分減殺請求という請求行為を行うことができるのです。

ただこの遺留分を請求する対象となる資産が現預金であれば良いのですが、土地など分割が困難な財産の場合、遺留分減殺請求が認められれば、その財産を持分に応じて共有とするこが原則であり、トラブルの種になっていました。そこで今回の法改正で、原則的には金銭債務化されることになったのです。

特定の人物に遺産を集中させる訳

そもそも遺留分が問題となる相続は、法定相続分通りに分割をしていないからです。特に高齢者や地方の相続では、戦前の長子相続制度が文化として残っていたり、先祖代々の土地を分割したくない、また営んでいる事業に関する財産を後継者に集中させたいなどの理由から、特定の人物に財産を集中させる場合があります。

他の相続人もそれで納得してくれれば良いのですが、お金が絡んだことのためどうしてもそうもいかず、遺産分割や遺留分を巡る争いに発展してしまうのです。
なお、被相続人の方が特定の人物に遺産を集中させたい場合は、公正証書遺言を作成し備えておきましょう。そうした確かな証拠がなく、遺産分割協議を行った場合、揉める可能性がより高くなります。
特に、残す財産が現預金など簡単に分割できるものなら良いのですが、土地や事業用資産など分割が難しいものの場合、こうした事態は起こりやすいです。

遺留分の原則金銭債権化

上記のような背景があって、今回の法改正では、遺留分は原則金銭債権化されることになりました。
これまでの遺留分減殺請求では、遺留分権利者が遺留分減殺請求を行うと、分割されている遺産が現預金であれば良いのですが、土地などの場合、その土地に対して物権的効果が生じ、対象物は相続・遺贈を受けた人と遺留分権利者の共有となっていったのです。
ところが今回の法改正にて、新民法1046条により、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができるとされたため、原則的に土地や株式などの資産に対する遺留分の解決は金銭で行われることになったのです。
そのため、不動産や株式などの対象となる資産は相続や遺贈を受けた方の単独所有のままとなります。

従来から遺留分権利者の多くは、共有という形ではなく、金銭を貰うことによる解決を望んでいました。共有財産の分割を行うのも大変ですし、共有したままでは財産の売却などの際に共有者全員の合意が必要になるなど、大変なことが多かったからです。
また個人や中小企業の事業承継に関しても、事業用資産が他の相続人と共有となる事態を避けられるようになったので、経営に安定をもたらすと言えるでしょう。

金銭をどう用立てるかが課題

この変更による課題は、財産を多く相続した相続人や受贈者が、金銭債権となった遺留分の支払予算をどう用立てるかということになります。ただ今回の法改正に合わせて、支払いを一定期間猶予してもらうよう、裁判所に請求できることになったため、対応のしようはあるでしょう。
また、相続の前の段階から、将来を予見して相続人が支払い費用を貯めていたり、被相続人がそのための現預金を貯めておくなどの努力も大切です。

生前贈与の対象期間も10年に制限される

また、今回の法改正では遺留分を計算する際の根拠となる遺産総額に関しても、これまでのように相続開始前に行われた生前贈与の一生分を含むという形ではなく、相続開始前から10年前までに行われたものが対象であるというふうに変更されました。
生前贈与は特別受益として、不公平を無くすために遺産分割の相続分や遺留分の計算では遺産に含めて計算されるのですが、やはり期限なくというは現実的ではなく、遺産分割を巡る争いの原因にもなっていたため、今回のような改正が行われました。

ただし、仮に10年以上前の贈与だったとしても、贈与者と受贈者ともに他の相続人に損害を与えることを知った上で行われたような贈与に関しては、遺産分割の対象となるとされています。どこまで適用されるかは今後の判例などから明らかになっていきますが、注意が必要と言えるでしょう。


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