遺産の使い込みに対しても対抗が可能(2018年相続法制改正⑧)


相続の現場では、大きな金額のお金が動くため、残念ながら非倫理的な振る舞いをしてまう人が出てきてしまいます。その1つが、一部の相続人による遺産の使い込みでしょう。残念ながらこれまではこうした遺産の使い込みに対して、対抗するにはかなりの労力が必要でした。
しかし、今回の法改正によって使い込まれた遺産を取り戻すのが簡単になったのです。

起こりがちな遺産の使い込み

遺産の使いこみとは、一部の相続人が被相続人の財産を勝手に処分してしまう行為してしまったり、自分のものとしてしまう行為です。特に同居している相続人や、財産管理をしている相続人によって行われがちです。
使い込まれる財産の種類としては、一番は現預金ですがその他にも不動産や株式、生命保険などの財産が売却され、その収入を着服されたり消費されたりということもあります。また収益不動産からの賃料収入を着服されることも多いです。

こうした使い込みはいつでも起こり得るのですが、特に被相続人が高齢になって介護を必要とするようになったり、判断能力が低下してきたりした時に起こりやすいようです。

これまで解決が難しかったわけ

上記のような使い込みは他の相続人にとっては許せない場合が多いでしょうが、中々に難しい問題です。まず同居親族が使い込みをした場合、その親族が介護なども担当していた場合、他の相続人も負い目がありますし、使い込んだ当人も正当性を感じることが多いからです。
そのため、多少の範囲であれば黙認されることも少なくありません。

しかし、使い込まれた額が極端に大きかったり、別に介護などで貢献していたわけでも無い場合、他の相続人は許せないでしょう。しかし法律的に解決しようとしても、難しい壁がありました。
こうした事態であれば、多くの人が家庭裁判所の遺産分割調停によって解決をしようとしていたのですが、遺産分割調停はそもそも確定した遺産額の中で、どう分割するかを話し合う場であり、使い込みのように遺産範囲の認識が変わってくる問題に関しては取り扱ってくれないからです。

遺産分割調停で話を進めるためには、まずは遺産の範囲を決めなければなりません。一部の相続人が使い込みを行い、かつそのことを認めないような場合、遺産の範囲自体に合意が取れなくなってしまうのです。
家庭裁判所からは、まず自分たちで遺産の範囲を明確にするか、情報の開示が行われない場合その開示を求める調停を開くよう指示されます。

今回の法改正で変わったこと

しかし、上記のようなことをしていては埒があかないため、今回の法改正によって、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関しては、以下のような要点が盛り込まれました。

・遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意によって,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。
・上記の同意に対して、使い込みを行った人物が反対してもその反対は無効となる

この規定によって、これまで解決が難しかった、遺産の範囲をどう認定するのかという問題が解決されることになりましたし、裁判所も以前よりも真摯に向き合ってくれる可能性が高いでしょう。

特に、使い込みをした相続人が生前贈与も受けていた場合には、他の相続人にとってとても有利な変更です。仮に被相続人が親で、その配偶者は既に亡く、相続人が子供2人、遺産は自宅が5千万円に預金が5千万円という時に、同居している子だけが自宅を生前贈与され、さらに預金も4000万円使い込んだという場合、使い込みを証明できなければ、普通に遺産分割協議を行うと同居していない子の取り分は1000万円にしかなりません。

仮に生前贈与の分に関して争いを起こしてそれを特別受益と認めさせても、遺産総額は使い込みを無視した6000万円となり、自らの相続分は3千万円にしかならないのです。
しかし今回の法改正以降であれば、4千万円の使い込みの証明が容易なため、遺産総額は1億円となり、自らの相続分を5千万円まで回復させることができるのです。


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