新事業承継税制の実務と留意すべき事項


2019年2月7日に行われたビジネス会計人クラブ(以下BAC)の定例会では、事業承継税制がテーマとして扱われ、中小企業庁事業環境部財務課長の松井拓郎氏による講演や、「新事業承継税制の実務と留意すべき事項」をテーマとした税理士や弁護士の方々よるパネルディスカッションが行われました。

相続tokyoのスタッフも定例会に参加しましたので、当日の模様を2回に渡ってレポートしたいと思います。
そして今回は、後半に行われたパネルディスカッション「新事業承継税制の実務と留意すべき事項」の模様をお届けします。

Contents

新事業承継税制の実務と留意すべき事項

このパネルディスカッションは、実際の事業承継支援の現場で活躍する弁護士や税理士の方がパネリストやコーディネーターを務め、実務の現場から感じる新事業承継税制に関する留意事項をディスカッションするというものです。

なお、パネリストのお二人は現在は民間所属ですが、以前は中小企業庁に所属しており、政府の中から制度設計を行う立場にもありました。
このパネルディスカッションでは、そのような視点も盛り込まれています。

パネリスト紹介

伊藤良太氏(ベインズ法律事務所 代表 弁護士)
北澤 淳氏(税理士法人 山田&パートナーズ 税理士)

コーディネーター

玉越賢治氏(税理士法人タクトコンサルティング 代表社員 税理士)

1.一般措置と特例措置

雇用要件確保が完全撤廃でないのはなぜか?

行政的に、雇用要件の完全撤廃は行えないし、今後もそれが行われる可能性は低いとのことでした。

一般措置から特例措置への乗り換えが出来ないのはなぜか?

現在、一般措置から特例措置への乗り換えはできず、先に制度を活用して事業承継を進めていた人の方が、税負担が重くなってしまっています。
しかし、一気に事業承継を行うことを促すことが目的だから今後も乗り換えは多分認められないので、それを前提とした支援をして欲しいとのことでした。

2.先代経営者等(贈与者)

分割して贈与することは可能か?

後継者にいきなり全ての権限を渡す事に不安を感じ、複数回での分割贈与を希望する人がいるが、贈与は一括でなければならず、複数回にすると初めの1回しか認められないとのことです。

複数の株主から1人の後継者へ贈与する場合の注意点

上記のように複数回に分けられないため、複数の株主から1人の後継者へ贈与する場合は同一年中に行う必要があります。

先代経営者からの承継の後に、先代経営者以外からの承継は同日でも良いか?

構わないが、都道府県の調査で本当に先代からの承継が先か証明できるか問われることがあるので、別日にした方が無難とのことです。

同族内筆頭株主が複数いる場合、誰が第1種の贈与者となるのか?

それぞれを第1種として良く、その場合特例承継計画を2枚書いて、それぞれを代表者とします。ただどちらかを第1種とし、もう片方を第2種とした方が無難とのことです。

複数承継者について

複数の株主から第1種贈与を受けることは可能です。しかし、やはり都道府県の調査や、5年間の期間が延長することを考えると、第1種と第2種に分けた方が無難とのことです。

持株会社が認定を受ける場合の子会社の代表者も交代必要か?

必須ではないとのことです。
ただし、持株会社の後継者となった子が、結局子会社から親を追い出す場合もあるので注意が必要です。

3.後継者(受贈者)

後継者が複数いる場合、全員が先代経営者からの贈与を受ける必要があるのか?

これは必須ではないとのことで、お父さん(先代)からは長男が、お母さんから次男がというふうに承継された場合も、全員が対象者となります。
ただし、この場合は長男が1種で次男が2種になります。

なお、特例措置では後継者が3名まで認められるようになりましたが、1名場合が全体の8割であり、複数後継者の場合はほとんどが夫婦だそうです。

後継者が複数いる場合はどうなるか?

筆頭要件は同一でも構いません。しかし、複数要件では贈与後に贈与者よりも受贈者の方が多くの株式を有していることという要件がありますので注意が必要です。

複数の贈与で、合計10%で良いか?

適用できずとなります。第1種のみで10%の要件を満たさなければなりません。

複数後継者で、後継者以外に後継者より株を持っている人がいる場合は?

そもそも前提として、仮に後継者が3人だとして、全員が要件を満たしていないと、全員が適用を受けられません。そのため、後継者以外の人物より持ち株数が少ない人は適用外となります。

複数後継者で、1人だけ代表者退任したら?

退任した人だけ納税すれば大丈夫です。

後継者以外の同族関係者が、5年以内に後継者の株式数を上回った場合

これは適用の打ち切りに該当するので注意が必要です。親族の持株要件に注意して、後継者の株式を超え得る事態が起きないか調べておきましょう。相続によって株式の集約がされて、稀にこのような事態が起こり得ます。

第三者からの贈与の注意点

株式分散している場合で、経営に関係の無い第三者(以前の勤務者の相続人など)から贈与を受けた場合、相続によって受け取ったものとみなされるので、その第三者の相続に参加することになります。
そうした人たちの相続財産を見れることになるので、向こうの負担になる事から特に注意が必要と言えるでしょう。

また、第三者から第三者の相続人への相続時なら、低い株価を選択できるか、事業承継税制の適用では高い株価になり、それが相続財産総額を引き上げるので、向こうの相続税の課税額が増えるかもしれません。

第三者への贈与の注意点

同族過半数要件など、それぞれの要件が注意点になる、つまり50%は贈与する必要がある。ただ、親族外に贈与することは稀です。また、娘婿などが後継者の場合は、離婚リスクに注意しましょう。

複数承継は夫婦の場合が多いですが、実体の無い配偶者が代表者となった場合、これまで税務署の確認は緩かったのですが、件数も増えてきたので今後は分かりません。

4.対象会社、対象株式

株式の制限はどうなるか?

完全議決権株式のみが制度の対象であり、議決権に制限のついた株式は対象外となります。

黄金株の取り扱いで、後継者が複数いる場合はどうなるか?

まず、特例を受ける後継者以外の人が黄金株を持っていては適用対象になりません。
もし後継者の誰かが持っている場合は大丈夫です。

その他の種類株式や属人的株式の注意点

まず、完全議決権株式のみが制度の適用対象となります。そして属人的な定めがある場合、定めの適用後で要件を判定することになります。

※支配権対策として種類株の利用と、事業承継税制の相性は悪いので、要注意

5.特例承継計画、特例認定申請、マニュアル

事前確認制度は復活したのか?

事前確認制度ではなく、事前確認制度とは異なるより経営計画的な制度が誕生した。

特例承継計画の期限

H35年3月31日までに提出なので、確認は後でもいい。

提出時の要件は?

提出時、先代経営者が代表者であったか代表権を持っており、事業計画があることです。

特例承継計画提出前の相続開始は構わないか?

構いません。

提出後の計画変更は可能か?

構わないが、認定支援機関のチェックがその都度必要となります。

特例後継者の追加方法

変更申請が必要です。
ちなみに、事業計画の変更は別に出さなくても構いません。

見込額を記載した書類と贈与方法(暦年か精算か)が変わっても良いか?

構いませんし、書類の修正も不要です。

6.贈与から相続への切り替え、一般措置適用者

10年の適用期間経過後の相続開始の扱いは?

特例措置の相続への適用が認められます。しかし、まずは贈与から入ったほうが良いでしょう。

一般措置の残りの株式について、贈与者の死亡時に特例措置の適用は受けられるか?

できません。
一度でも一般措置の適用を受けている場合、特例措置の適用を受ける事はできないのです。

一般措置の適用を受けている現代が、5年経ったので次代へ特例措置で贈与できるか?

可能です。

7.相続時精算課税制度を選択した場合

贈与者より受贈者が先に亡くなった場合

猶予中の税の免除は受けられます。
今回の閣議決定で、後継者が先に死亡した場合の不利益は排除されました。

8.民法との関係

相続開始前1年以内の贈与と遺留分

侵害しないと考えて構いません。
この民法特例はこれまで使われていませんでしたが、最近使われることが増えてきました。

贈与して、10年間生きればそれは逃げ切れるのか?

逃げ切れるかもしれないけれども、遺留分侵害者に損害を与える事を分かっていたら難しい。
特に、専門家が提案していたり、資料があったりすると後から否認される可能性が高い。


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