伝統的プライベートバンクの実態~資産運用の哲学と運用の現場~


2019年2月16日に、日本証券アナリスト協会で開催された第16回PBスクール「海外プライベートバンクとフィロソフィー(社会貢献)研究」に、相続tokyoのスタッフが参加してきました。
当日の模様を全3回に分けてお届けします。

今回は第1講義、株式会社アリスタゴラ・アドバイザーズ代表取締役CEOの篠田丈氏による「伝統的プライベートバンクの実態~資産運用の哲学と運用の現場~」での篠田氏の話をまとめました。

伝統的プライベートバンクの哲学

篠田氏はBNPパリバに所属しており、退職後に自分でも運用をするのが楽しみでした。でもその時に付き合いたいと思う金融機関がなかったのです。金融機関にいって経歴を伝えると『あ、プロフェッショナルの方ですね。それならら説明することはないです』と言われました。しかし、これが納得いきません。
本来は、プロかアマかで運用提案が変わるものではないはずだからです。

それで、シンガポールとかにも行ったりしてみました。そもそも金融機関の勤務経験があったから、既に投資したいような商品があったのですが、基本的にシンガポールの金融機関は(日本の金融機関同様)既にある商品リストからの選択しかできませんでした。
リストにあれば買えるけど、なければ買えないということです。

しかし、スイスのプライベートバンクは、イリーガルなもの(法令違反があるもの)以外は基本買えます。
あと日本の金融機関では顧客のために尽くしたいという気持ちがあっても、予算の問題もあって、長期投資を行えない、長くて6ヶ月といったものです。
一方スイスのプライベートバンク、特にジュネーブなんかにあるプライベートバンクは、元々フランスなどからの亡命貴族のために始まりました。
そのため長期で資産を預かっており、その運用益があるので、あくせく手数料を狙う必要がありません。ただ、逆に言うと長期の関係性を大事にしているので、極端な散財家など長期の財産維持が難しいだろう方は、いくら富裕層であっても金融機関側から断ることもあります。

なお、プライベートバンクは富裕層向けなので、庶民には関係ないと思う方もいるかもしれませんが、プライベートバンクなど富裕層向け金融サービスが活性化すると、その影響で一般層向けのリテールも質的に活性化するので、今の日本に必要なことではと思います。

哲学を理念レベルで共有できる人数には限りがある

このような哲学がプライベートバンクにはあるので、その人員はそれほど多くありません。哲学を浸透させようとすると、200人くらいが限界です。

また、通常のリテールでは1人のバンカーが大体400人〜500人くらいを担当しますが、プライベートバンカーの担当顧客数は40人〜50人程度です。代わりに、顧客1人1人に時間を使います。

なお余談ですが、プライベートバンカーにとって最も手間がかかるのは日本や中国などアジアの顧客です。欧州の顧客は放っておいても平気だけど、日本やアジアの顧客は月1くらいで連絡しないとうるさく言われるからです。

資産家・事業家の抱える課題

プライベートバンクを頼るような、資産家や事業家の課題ですが、事業とファミリー(教育と相続)の両面に存在するため、プライベートバンカーは事業の課題に対処しつつ、ファミリーのサポートも行います。

特に欧州は、よりファミリーという視点を重視しています。日本では税金の問題が重要です。日本では税対策で財団を作るが、欧州は相続税がないのに財団を作ります。これは、ファミリーが3代続くと、絶対財産を食いつぶす人が出てくるので、それを防止するために行っているのです。

伝統的プライベートバンクのお金の使い方

また、ファミリーの課題や長期プランニングの視点から、プライベートバンカーは顧客のお金を4つに色分けします。
現在使うお金、近い将来(個人の将来のため)に使うお金、遠い将来(家族・子孫の将来)のために使うお金、社会のために使うお金です。

プライベートバンクの運用

プライベートバンクの運用は、複利を活かした長期運用です。資産をちょくちょく引き出すという発想はありません。

そして、プライベートバンクの言う複利はエクイティー(株式)になります。決してボンド(債券)ではありません。ボンドで持っていると、インフレに勝てないからです。
インフレに唯一勝てるのが、エクイティーになります。

株式市場の長期トレンド

ただ、日本ではエクイティーの人気がそれほどありません。ここ30年、日本だけ極端にエクイティーの利回りが低いからです。
しかし、欧州ではアップダウンはあるものの、長期は成長を続けています。

そこで日本人を含むアジア人向けには、プライベートバンカーはオルタナティブを勧めています。
ファンドオブファンドでやっていて、自分のところの商品だけを勧めるようなことをしません。そもそも、自分達の商品を持たないのです。商品を持ってしまうと、それを売りたい誘惑に負けるからです。
自分たちが商品を作っても、絶対にそれより良い商品を生み出す人はいるので、そこは他人に任せるという発想です。

日本の現場

日本は金融機関ごとに免許が複雑であり、金融機関はトータルなサービスを投資家に提供しにくいという課題があります。また、テーマ投資を推しすぎていて、テーマが終わったらどうなるかを考えていません。

日本の投資家のポートフォリオ戦略

日本に居住して事業を営んでいる時点で、国内リスクを取っています。だからこそ、運用は海外に寄せて行った方が良いでしょう。

またコストに関して、特にヘッジファンドのコストに関しては、パフォーマンスとコスト両方で考えましょう。低コストでもパフォーマンスが低ければ意味がありません。
ヨーロッパは中身の議論もちゃんとしますし、中身が良ければコストも高くなります。

成長する世界経済

30年間停滞している日本と異なり、世界経済は成長しています。ちなみに、日本人はなぜか南米が好きです。

個人的にはヨーロッパに良い商品が多い傾向にあり、そういう意味でも、ヨーロッパのプライベートバンクを使うのは良いでしょう。
例えばクレジットリンク債と呼ばれる商品、これはアメリカだとクレカで店にお金が入るのが90日後、そのため資金需要が凄くあり、クレカの入金を担保にお金を貸すモデルが成り立っています。
このクレジットリンク債は、そうした資金需要にお金を貸し、クレカの入金を担保とするのでリスクも低い商品になります。
またドイツの不動産市場、ドイツだけは東側に未開の地が多く残されており、そこで不動産を担保に債権を発行するモデルも注目されています。

ポートフォリオの考え方

日本の会社はまず商品を作ります。一方プライベートバンクは、まずお客さんありきで商品(ファンドオブファンド)を設計します。

ちなみにですが、プライベートバンカーは100億円とは言わないけれども、本人が数億円は持っています。
だからこそ、100億円1000億円のお金持ちの思考をもトレースできるという強みがあります。

プライベートバンクも色々(現在の動向)

最近、スイスのプライベートバンクでは、アメリカ居住者の口座作りに消極的です。UBS関連で色々と問題が生じた結果、報告書類が多くなって管理コストが大きくなったためです。
これは、香港やアジアの金融機関も同様です。

そのため、富裕層ビジネスは大西洋と太平洋の間に溝ができてしまいました。

なおユーラシアに目を向けますと、中国はスケール感が凄く、1桁大きいと言えます。
1000億円くらいになると上がり感があってリスクを避けますが、100億円くらいの人はレバレッジとって運用します。
これが日本であれば、100億円くらいからレバレッジを効かせた運用はしなくなりますが、感覚が1桁違うのです。

そして、ヨーロッパの人はレバレッジをあまり取りません。そのため、リーマンショックの時も、アジアだと3割負けていましたが、欧州だと1割5分くらいでした。

プライベートバンクのタイプ別の違い

プライベートバンクにも色々あり、小規模の本来的な意味でのプライベートバンク(超富裕層が自家の資産を管理するために立ち上げ、パートナーが無限責任を負うモデル)は減少傾向にあります。
近年は管理コストやIT投資の負担が重く、集約化・大規模化・システム化の傾向にあるのです。

グローバルバンクと呼ばれるUBSなどは、実際は日本の都市銀行のようなものともいえるでしょう。日本の都市銀行も富裕層サービスはしています。
専業型は厳しく、ジュリアスベアのように規模拡大に走ったりしているのです。
無限責任の本来的なプライベートバンクは、今では6行しかありません。

現在は、大規模化して規模の経済を追求するか、逆に凄く小さくして対象を限定するかの二極化です。従業員が200人いない、預かり資産も2000億〜3000億円という所は生き残りやすいです。
しかい従業員が500人いて、預かり資産も1兆円とかだと逆に今はきつい状況です。


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