日本でのフィランソロフィーのHOW TO


2019年2月16日に日本証券アナリスト協会で開催された第16回PBスクール「海外プライベートバンクとフィロソフィー(社会貢献)研究」に、相続tokyoのスタッフが参加してきました。
当日の模様を全3回に分けてお届けします。

今回は第3講義、公益財団法人パブリックリソース財団 岸本幸子専務理事による「日本でのフィランソロフィーのHOW TO」のまとめです。

分かち合うというお金の使い方

今回お伝えしたいことは、ためる、つかう、ふやす以外のお金の使い方として、「分かち合う」というお金の使い方についてです。
こうしたお金の使い方は、時に儲けたり使ったりする以上の満足感をもたらしてくれます。

特に、ソーシャルという観点が重要となるでしょう。講師にも3歳の孫娘がいるようですが、この孫はおそらく2100年にも生きています。
そして、2100年という時代は地球温暖化により、東京の気温が4度上がっているかもしれません。また子供の貧困も今以上に深刻化しているかもしれません。
彼女の幸せを守るには、彼女への教育や財産を遺すことだけではなく、社会の維持も重要になります。こうした考え方が、フィランソロフィーの要因の1つになります。

また富裕層にとって社会貢献をするということは、第二の人生を拓くことにもなります。大きく稼ぐ人は、お金を稼ぎたいだけではなく、「こういう世界を作りたい」という大志がある場合が多いものですが、その大志はビジネスだけでは満たせない場合もあるからです。

講師の経歴とフィランソロフィーとの出会い

私は民間企業やシンクタンクでの勤務を経て、ニューヨークの資金仲介組織で、ファンドレイズや助成事業を経験してきました。
そして、ニューヨークで出会ったコミュニティートラストでの経験が、原体験となっています。

これは、ニューヨークの富裕層(超富裕層ではない、一般的な範囲の富裕層)による寄付をサポートする財団です。その財団では、壁一面に寄付者のパーソナルヒストリーが飾られており、1人1人の経歴と、築きたい社会、そして寄付内容が記されています。
米国中、世界中からニューヨークへ集まり、アメリカンドリームの結果成功を手にした人たちの社会への愛が可視化された空間に強い感銘を覚え、こうしたものを日本でも作りたいと今に至ります。

そして今は紆余曲折を経て、富裕層のために財団を作るほどじゃないけど、寄付をしたいというニーズに応えている活動をしています。

フィランソロフィーの歴史的変遷

そもそもフィランソロフィーとは、人類愛や博愛という意味であり、フランスだとメセナと言って、芸術支援が中心、イギリスではチャリティーと呼ばれます。
企業や行政と並ぶ、もう一つの社会システムと言えるでしょう。

富の蓄積とフィランソロフィーは関連が深く、元々は家族的な寄付で、富裕層が貧困層へ物品などを施すものでした。
そこに変化を生じさせたのが、石油王ロックフェラーです。フィランソロフィーにもマネジメントを導入し、専門職員を作って自分はお金を出すだけ、後は専門職員がお金の使い方を工夫するという現代的なフィランソロフィーの形を実践・確立させたのが彼だったのです。
またアメリカでは超富裕層以外にも、ニューヨークのコミュニティートラストのような上位数%くらいの富裕層人や、自動車業界のブルーカラーが団体として行うフィランソロフィーなども発展してきました。

それに1990年代からは、信託銀行(フィデリティーなど)による商品としてのフィランソロフィーも開発されています。そして2000年代以降は、ビル&メリンダ財団に代表されるような、自分達がオーナーシップを発揮するフィランソロフィーが活躍を見せはじめています。
2010年、リーマンショックで運用益がなくなり多くの財団や信託が助成金を出せなくなったこともあって、運用益を振り分けるのではなく、運用対象を社会的にしようという流れも生まれました。

日本でのフィランソロフィーの展開と特徴

日本における近代的なフィランソロフィーは、企業から始まりました。

そもそも資本主義とフィランソロフィーは関連が深いのですが、例えば日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一氏など代表的です。今日本には社会福祉協議会が各地の市区町村にあり、地域福祉を担っていますが、この元となる組織も渋沢さんが作ったものです。
なお、渋沢氏は自分個人だけでお金を出すというより、コーディーネータとして多くの資産家に出資させていました。

その他にも各財閥がメインとなって財団が設立されていますし、皇室や皇族が最初にお金を出して、そこへ華族や財閥がさらに出資する恩賜財団の存在感も大きいものでした。
ちなみに、戦前は地方自治体に自主財源は無く、政府からの交付と寄付が財源だったため、財団から自治体への寄付も多くありました。士族階級の資産家による、出身藩への寄付といったイメージです。

しかし、これらの仕組みの多くは戦中・戦後の混乱の中に霧散していってしまいます。
そして戦後は、経済成長とともに自然科学系の研究財団が企業財団として多く生まれる事となりました。今も社会福祉系の財団が少ないのには、こういう背景があります。
ただ、若干とはいえ70年代には福祉系の財団も生まれ、80年代の日米貿易摩擦をきっかけに、「エコノミックアニマル」の汚名返上とばかりに、日本企業にフィランソロフィーの概念が広がっていきます。

現状の日本のフィランソロフィーをまとめますと、企業主体が多く、福祉よりも科学振興に力が寄っています。より社会的な課題の解決に力が振り分けられるためには、女性やシニアが鍵を握ると言えるでしょう。
特に、創業者の未亡人や娘世代の動向が重要となってきます。

富裕層への寄付コンサルティングのポイント

講師による富裕層への寄付コンサルティングを行う場合のポイントですが、まず拠出金額は200万でも100万でも構いませんが、ただ、金額によって適切な使い方(スキーム)が異なるので、そこは注意が必要です。

また、寄付実施後の活動の評価をレポートで寄付者に返すことがとても大切です。ほんの少しでも自分の寄付で社会が変わったという満足感が、継続的な寄付の力になるからです。


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