コロナ禍での相続放棄・限定承認の熟慮期間(期限)の延長


相続発生後の手続きは、機嫌があるものが多く、その期限内に実行しなければ著しい不利益を被ってしまいかねません。特に、被相続人に借金など負の相続財産が多くあるような場合、相続放棄や限定承認の手続きを取りたいとなっても、その手続きの実施期限(熟慮期間と言います)があるのです。
ただ、この新型コロナウイルス感染症の流行の最中、なかなか思うように手続きできないということも多いでしょう。

そのような場合には、熟慮期間の延長申請をすると良いでしょう。以下詳しくお届けします。

「相続放棄」と「限定承認」

一般的に相続というと、現預金や土地、あるいは株券などの財産の相続を想像するでしょう。しかし、相続ではこうした正の財産に限らず、借金などの負の財産も承継されます。
そのため、正の財産よりも負の財産の方が大きい相続も存在し、相続によって相続人は負担を背負ってしまうのです。

ただしこのことには救済措置もあり、それが「相続放棄」や「限定承認」です。
相続放棄とは、被相続人の財産と債務の一切が引き継がれなくなるもので、その相続から関係無い立場になれます。一方限定承認は、相続する正の財産の範囲内でした、負債を引き継がないというものです。例えば、正の財産が5,000万円、負の財産が6,000万円という場合に、正財産5,000万円と負の財産は5,000万円のみ相続するというものです。それに何の意味があるのかと思われるかもしれませんが、例えば住宅とその住宅に紐付いているローンを相続する場合などに使うと良いでしょう。
また、そもそも被相続人の抱える負債がどれだけあるのか分からないような場合も、限定承認の手続きをしておくことで、正の相続財産以上の負担発生のリスクを無くすことができます。

熟慮期間は原則3カ月以内

この相続放棄や限定承認の手続ですが、実行するためには期限内に行わなければなりません。そしてその期限のことを熟慮期間と呼び、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」と定められています。
熟慮期間を過ぎると、後から新しい借金が見つかったとしても、相続放棄や限定承認を選択することができません。相続人は被相続人の財産と債務の一切を引き継がなくてならなくなるため、不安ならやはり限定承認の手続きをしておくと良いでしょう。

「相続放棄」と「限定承認」の手続き方法

各々の手続き方法についても見ていきましょう。

まず相続放棄ですが、これは各相続人が個別に行え、家庭裁判所に以下の書類を揃えて「相続放棄の申述」を行うことで実施できます。
【相続放棄の手続きに必要な書類】
相続放棄申述書
・被相続人の住民票または戸籍附票
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本や除籍謄本
・申述人の戸籍謄本

次に限定承認の手続きですが、こちらも家庭裁判所へ申述することになります。ただし、相続人ごとに個別には行えず、法定相続人全員で行わなければなりません。
(提出する申述書はこちらになります。)
また、手続きも相続放棄より複雑で、家庭裁判所へ限定承認の申述書と相続放棄の際と同じ必要書類を提出し、その後家庭裁判所に認められれば、「限定承認申述受理」の審判が下されます。そして「相続債権者等に対する公告・催告」が行われ(官報によって行なわれます)、債権者に対して名乗り出るよう求められます(個別に知っている債権者には、相続人からも連絡します)。
その後、相続財産は競売または任意売却で現金化され、各債権者の債権額の割合によって公平になるよう配分され、余りが出れば相続人に対して配当されることになります。

熟慮期間の延長

熟慮期間は3ヶ月あるとされていますが、この3ヶ月以内には決めきれないということも多いでしょう。ましてや現在はコロナ禍で、思うように債務の調査も進められないと思います。

もともと、相続放棄や限定承認の熟慮期間には、一定の理由があれば延長が可能であるとされており、法務省の公式見解でも今回のコロナ禍はその一定の理由に該当するとされていますので、期限内に決めきれない、手続きができないという場合はあらかじめ熟慮期間の延長申請をしておきましょう。

その手続きの方法ですが、管轄の家庭裁判所に対して、以下の書類と相続人1人つき800円の収入印紙を提出することで可能です。
相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書
・被相続人の住民票または戸籍附票
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本や除籍謄本
・申述人の戸籍謄本

まだまだこの新型コロナウイルス感染症の動向はどうなるか分かりません。不安な場合は早め早めで手続きを進めてください。


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