税務署がやってくる!?〜税務調査で困らないための経営者向けの準備の仕方〜


もし、あなたが企業の経営者や個人事業主で、突然、税務署から税務調査の連絡が来たら慌ててしまうかもしれません。しかし、何か大きな不正をしていた場合はともかく常識的な範囲の経営や税務処理を行っていたのであれば問題ありません。少々大変ではありますが、きちんと準備を行うことで税務調査には対応できるのです。
今回の記事では、税務調査にまだ慣れていない事業主の方のため、その準備のポイントや税務調査でありがちな質問などをお届けします。

税務調査とはどのようなものなのか

最初に税務調査とはどういったものなのか理解しましょう。個人事業主(個人)も法人も必ず毎年確定申告を行いますが、税務調査とはその申告内容が税法的に正しく行われているのか税務署の調査官が実地調査に来ることです。この調査には強制調査と任意調査があり、強制調査の方は一般的にマルサと呼ばれる国税局査察部が大口で悪質な脱税者に対して行う調査のことです。かつて「マルサの女」というヒット映画のテーマにもなったので、ご存知の方も多いかもしれません。マルサが来る強制調査になってしまうと確かに恐ろしい気持ちなるのも仕方ないかもしれませんが、多額の脱税行為をしていなければ対象になることはありません。

通常の場合は、一般的な取引を行っている法人に対して行われる調査は任意調査の方なのでご安心ください。調査にあたっては、原則的には税務署からの事前連絡と日程調整が行われます。何か疑われている場合は、証拠隠滅等を防ぐために事前連絡なしで調査が来ることがあります。会社が何か悪質な脱税行為の隠蔽をしているのではないかと疑われている時や、飲食・小売業などで現金決済で日々の営業と経理を行っているような場合は事前連絡なしで抜き打ち調査ということもあり得ます。事前連絡なしで調査が来た場合、すぐに顧問税理士へ連絡しましょう。税務調査自体は徴税権という国家権力に基づいているものですので、拒否することは出来ません。

調査のタイミングなど

税務調査がどの程度の頻度、タイミングで来るのかについては会社の業態や規模、過去の税務調査の結果によって全く異なります。例えば、特に問題のない法人であれば、10年に1度程度しか来ないというようなことも不思議ではありません。逆に頻繁に問題を起こしているような法人は調査の回数が多くなります。仮装・隠ぺいを伴うような悪質な行為をして税務署に指摘をされると「重加算税」というペナルティを受け、以後、税務調査の対象にもなりやすくなります。税務調査官は重加算税を課すことが仕事としてのポイントになりますので、仮装・隠ぺいではなく事務ミスであっても重加算税の対象にしようとすることがしばしばありますが、過去に重加算税の対象になった納税者は税務署に記録が残りますので、故意でなければ、安易に受け入れないようにすることが賢明です。

また、黒字企業や、輸出などによって消費税の還付を受けている企業、それに成長著しい企業なども不正が行われていないか調べるために税務調査の対象となりやすい企業です。つまり、やり手で利益を上げている経営者ほど、きちんと備えておく必要があるのが税務調査なのです。

この他の例としては、多額の退職金の支払いがあった場合や福利厚生費が多いなど、通常とは異なる支出が多い場合も対象となります。事業承継のタイミングで株式承継のため施作や、資金移動を行った際にも対象となる可能性が高いので、そのような時は特に書類をきちんと整理し、事前に税法上で問題のない取引であるということを証明できるようにしておく必要があります。

友人や知人から聞く「節税対策」は、単に税務調査が来ていないので今まで大丈夫だっただけであったり、税務調査でたまたま指摘がされなったので問題にならなかっただけで、実は極めて危うい手法であることも多いので、きちんと専門家に確かめておくことが無難です。

調査にあたって用意しておくべきこと

基本的な税務調査のための対策ですが、税務調査が行われるということは、調査に行けば追徴課税が出来るのではないかと思われていたり、何かしら税務署から怪しいと思われているかもしれませんので、調査官の疑問に対して明確に答えることができるよう、書類を準備しておくことが大切です。例えば下記の書類を税務調査の連絡が来てから調査当日までに揃えると良いでしょう。

・支出の内容を明確に説明できること(公私混同がないことや、税務ルールの範囲内で経費処理をしていること)
・取引事実を証明できるような契約書
・取引理由や意思決定の流れを説明できる書類(稟議書や取締役会などの議事録など)
・取引の際の参考にした見積書
・見積書と共に用いた参考資料
・会計処理に関する社内規定

怪しい点がない場合の税務調査は、当初数日間を予定していた場合でも1日で終了することがあります。逆に、怪しいと思われたり色々見つかると、宿題も残り期間も伸びることになります。

そもそも論としては、日頃から取引に対して想定される税務リスクはきちんと検証をしておくことが大切です。そして、取引の実態にもとづいて正しい処理を行っているということを、証明できるようにしておく必要があります。

調査で聞かれがちな質問事項

税務調査の当日に聞かれたり、調べられたりすることが多いポイントです。これらのことについては、事前にきちんと答えられるように準備を進めておきましょう。

①社長やその親族の趣味

社長や家族・親族の趣味についても尋ねられることがありますが、これは雑談に見せかけた調査です。会社として損金算入された項目の中に、社長や親族の趣味の品が含まれていないのかを見ようとしているのです。また近年はSNSやブログなどをされている経営者の方も大勢いますが、税務署の職員はそれらの投稿も調べてどういったプライベートを過ごしてる人物なのかに当たりをつけてくることもあるので注意してください。
ありがちなのは、家族旅行を社員旅行として経費処理していた場合、業務ではないとして「役員給与」(役員報酬は毎月同額で計上しないといけないため損金に出来ません)として認定されるというようなケースです。

②社員や役員たる家族への給与の支払いや勤務状況

所得税の所得分散のため、家族・親族の給与を支払うケースは多いと思います。これ自体は適正な節税策なのですが、勤務実態や給与水準についての妥当性は税務調査では確認がされます。オーナー企業では、オーナーの家族や親族が役員や従業員などとして勤務していることがありますが、その勤務状況と支払い給与の金額は見合うものになっていますでしょうか。実質的にはほとんど仕事をしていないのにも関わらず、高額な役員報酬や給与の支払いが見受けられる場合など、不当に高額な部分は損金不算入となってしまいます。

③経理部門の運営体制の関する質問

会社が経理的に正しい処理を行える体制になっているのか、また不正を誘発するような体制になっていないかもチェックされます。近年は税務署から税務だけではなく経理システムや人事システムの専門家が派遣され、他の調査官と共同で調査に当たるほどです。
社内の管理体制が甘い会社ですと、単なるミスに対しても悪意のある隠蔽や偽装ではないのかと疑われてしまいます。日頃から気をつけると共に、税務調査の前にもそのように思われないようきちんと準備をしておきましょう。

④貸倒損失として計上した貸付金の金銭消費貸借契約書

個別論点の例として、例えば、貸付金に対しては、適正利率によって利息が収受されているのかをよく見られます。特に、社長や役員への貸付は利息を取っていないと認定利息が指摘されますし、長年貸付が返済もされずに残っていると役員給与ではないかとの指摘をされることもあります。(逆に、個人は営利を追求する主体ではないので、社長や役員から会社への貸付は無利息でも構いません)
それ以外にも、貸付金が貸倒損失として計上されていた場合は損金算入要件を満たしていたのかどうかや、そもそも実質的な贈与にならないように貸付け期間や利息は適切だったのかなどまで含めて調査で見られます。

最後に、税務調査を受けた会社のうち、7割ほどの会社が誤りを指摘されていますが、その中でも悪質として重加算税の対象となるのは全体の2割ほどになっています。事務処理ミスや見解の相違により多少の誤りが発見されることは仕方ない面もあるのかもしれませんが、悪質な脱税などを行っていなければ、大きな心配はしなくて良いのです。


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