不動産は個人所有が良いのか法人所有が良いのかvol2〜法人化のメリットデメリット〜


不動産オーナーの間では、所有不動産の法人化(法人を設立してそこへ自分が所有する不動産を移行させることや、新規の不動産購入を法人を通じて行うこと)に関心が集まっています。その背景には、日本の税制の方向性として法人税は減税に、所得税は増税にという流れがあり、法人化した方が、個人で所有する場合よりも法人で所有した方がトータルでの節税効果があることがあるためです。相続対策としても、株式の形にした方が便がよかったり、税制特例等の効果も踏まえて個人所有と法人所有を組み合わせるなど、様々な観点から検討ができます。

不動産の所有が個人から法人に移った場合、最高税率が55%と高い所得税から、中小法人の法人税の実効税率は約34%ですから(所得800万円以下の部分は10%程税率が下がります)、所得が高くなるほど適用される税率が法人の方が有利になります。高額の不動産所得を得ている人の場合は、税金の支払額が大幅に下がり得るのです。
また不動産所得を法人へ移し、法人を通して給与を受け取り給与所得とすると給与所得控除を活用することが可能になります。給与所得控除は給与収入1200万円が上限ですから、会社員等で他からの所得がないほど有利になります。
相続対策・相続税対策として特に大きなメリットになることとしては、不動産を所有する法人で子など相続人を雇用すれば、不動産所得を給与として渡すことができ、将来の課税財産を減らしていくことも可能になります。

このように不動産の法人化は幾つかの節税メリットがあるものの、税金のことだけを考えて法人化を行っては思わぬ失敗をしてしまいかねません。そこで今回は不動産の法人化に関して、上記の所得税と法人税の税率差や、所得の分散効果以外の面でのメリットやデメリット、そして法人化を行うべきか否かの判断のポイントをお届けします。

【関連記事】
不動産は個人所有が良いのか法人所有が良いのかvol1〜法人化による節税メリット〜

法人化に伴う節税以外のメリット

上記で税金に関する不動産管理会社設立の節税メリットのポイントの一部をお伝えしました。しかし、不動産の法人化には、さらに下記の様なメリットがあるのです。

まず、事業年度は個人であれば1月1日から12月31日の暦年にすることが決まっていますが、法人の場合は好きな時期に決算期を決めることが出来ます。法人の方が金融機関からの融資も受けやすくなるでしょう。損金の繰越期間が法人は個人と異なり、3年から9~10年となります。そのため法人形態の方が所得のコントロールの幅が広がり、節税のためのタックスプランニングも行いやすくなるでしょう。
他に細かい違いとして、法人税では、所得税と異なり建物や設備の減価償却が強制償却ではないので、任意にコントロールできることもタックスプランニングには有利に働きます。

また配偶者や子どもなどの家族を法人の役員に据えることで、オーナー以外の人間も以下のようなメリットを有することが可能です。
・全額所得控除可能な小規模共済に加入できる
・役員や従業員に対して退職金を出すことができる
・役員が加入する保険の一部は経費扱いにできる
・社会保険に加入できる(必ずしもメリットとは言えないケースも)
・(他に仕事をしていなかった場合に会社での役職が付くので)社会的に信用が高くなる

他に、オーナーが亡くなっても株式のかたちで相続がされますので、不動産自体の登記変更が不要なので事務コストや登記コストが削減できます。また借入金の利子を企業の経営が赤字か黒字かにかかわらず、その全額を損金とできますし(所得税の場合は土地に係る借入金利子は損益通算の対象にならない)、会社の株価評価を純資産価額方式で評価する場合に、土地などの含み益に対して法人税額など相当額42%が控除されます。

また、事業承継の際に分割の難しい不動産ではなく、株式で分割が行えるのも大きなメリットと言えるでしょう。

法人化に伴うデメリットやリスク

まず法人の設立費用として、株式会社設立に約30万円弱が発生します。合同会社にすると10万円前後の費用に抑えられます。
また法人地方税の均等割は赤字でも黒字でも発生しますので、赤字法人でも7万円(東京都)の負担が毎期発生します。その負担分以上に節税などの効果がなければ法人化をする意味がありません。
それに事務コストも法人の方が大きく、個人とは区別して法人の会計業務や、給与支給がある場合には社会保険事務、給与支払の源泉徴収や納付などを行わなければなりません。運営上は、法人の方が、手間も増えますし、費用もかさむことにはなります。
また個人の所得税以外に法人税の申告も行わなければならないので業務量も増えますので、税理士報酬の支払いも必要になります。
個人所有の不動産を法人に移す際には、売買価額を恣意的に設定すると受贈益課税などがされる税務リスクがありますので、移転価額も慎重に検討する必要があります。
また、所得税は、不動産所得の赤字は給与所得・事業所得と損益通算できますので会社員の高額所得者は不動産所得の赤字は税金上は給与課税の一部が還付され節税メリットがあると言えますが、法人化すると当然ですが所得税の収支にはなりませんから損益通算は出来なくなります。

リスクの1つと言える点では、相続発生時において、法人が不動産を取得してから3年以上経過していなければ、法人の株式評価に際して不動産について相続税評価額が適用されず「時価」(売買時価)での評価となり不動産所有による相続税の節税メリットが享受できません(個人であれば不動産の取得時からすぐに効果を享受できます)。逆に、法人により不動産を取得して3年経過後は相続税・贈与税のメリットがあり、生前贈与等への活用も検討できます。

不動産の法人化を行うか否かの判断基準

不動産会社を作った方がよいのか、そうでないのか判断ですが、フローの税金(所得税・法人税)やストックへの税金(相続税・贈与税)を合わせ、さらに不動産選定を総合的に考える必要があります。
フローの税金(所得税・法人税)は、不動産所得で1000万円程度以上あるときは法人化を検討すると良いでしょう。
相続対策という観点からは、大きく分けて次の3つのポイントで判断を行うとよいでしょう。

相続発生までの時間

相続対策やタックスプランニングは、長期で対応できるほど自由度や経済効果が生じます。まず1つ目は相続発生までに十分な時間があるのかどうかです。相続発生までの期間の長さで取れる対策の幅は異なるので注意しましょう。

特に大きな注意点は、相続の発生から3年前までに法人が所有した不動産は相続税評価ではなく時価での評価となってしまうことです。そのため、相続税上は、相続の可能性が見えている時期に法人所有にすることは不利になります。
一般的に相続税評価の基準となる路線価は不動産の時価よりも3割程度割安になるように設定されており、また相続不動産の評価には幾つもの評価の特例があります(小規模宅地等の特例、不整形地の評価減、広大地の評価減など)。そのため時価での評価となるとどうしても割高になってしまうことが多いのです。

また不動産所有法人を作り、家族にも不動産収入を分散させることが毎年の資産移転や所得税の分散化や来るべき相続税の対策になるのですが、相続までの期間が短ければそのメリットもそれほど大きくなりません。

相続税の納税額

次に重要なポイントはそもそも本当に不動産の法人化を行うほどに相続税は発生するのかという問題です。上に書いた様に不動産の法人化にはいくつかのリスクやデメリットも存在しますので、そもそも相続税の納税額や納税資金に余裕があるのであれば、無理に法人化を行う必要はないかもしれません。

ただ、節税や納税資金の問題以外に例えば子供の人数が多く、将来の禍根を残さぬよう不動産の共有を避けるために不動産の法人化を行うという選択肢もあります。

不動産所得が分散できるか

そもそも不動産から得られる所得が、オーナーの年間の生活費や借入金などの返済に消えてしまっている様な場合も、それほど不動産を法人化するメリットはありません。あくまで不動産から生じる所得を相続人世代に移転したり、所得税の最高税率よりもずっと低い法人税の税率で法人内に資産として蓄積していったりすることに意味があるからです。
逆にもしオーナーの生活費は給与所得やその他の事業所得、また年金などによって賄えれているのであれば、不動産を法人化してしまうメリットは大きいといえるでしょう。ただその場合も相続時精算課税制度など、他の制度を活用した場合との間で比較を行ってみることが大切です。

以上、不動産の法人化に関してメリットやデメリットのまとめをお届けしました。

このように、不動産所有の法人化は、タックスプランニングでは法人税・所得税、相続税・贈与税を検討し、経済効果のシミュレーションや、不動産選定・管理などの多くの検討事項があります。
相続tokyoでは、具体的なシミュレーションプランなどや様々なツールを今後提供していく予定です。また、適切な専門家等のアレンジをしてまいります。
相続tokyoの運営代表によるプランニングのサポートや税務支援も行っておりますので、相談のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。


【関連記事】
上昇する地価と減少する取引量には注意が必要?2016年第4半期不動産指数
上昇する商業地と下げ止まる住宅地、2017年公示地価発表
不動産投資の参考に〜市街地価格指数の概要と情報の入手方法〜
投資・事業用不動産の売却や買い替えに関する税金
不動産投資をする人は知っておきたいバルブームの背景、食住接近というコンセプト
解説!!SUUMOの「今後、地価が値上がりしそうと思う街ランキング 関東版2016」


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です。
※運営者にのみメッセージを送りたい場合は、「管理者だけに表示」にチェックを入れてください。