不動産は個人所有が良いのか法人所有が良いのかvol1〜法人化による節税メリット〜


不動産オーナーにとって所有する賃貸不動産を法人化するかは重要なテーマです。

日本の税制は、所得税の増税傾向と法人税の減税傾向が明確な方向性として示されているため、不動産オーナーの間で所有不動産を法人に移転させ、所得税の税率ではなく法人税の税率を適用させることで資産を多く残すことへの関心が高まってきています。所得税の超過累進課税の最高税率は法人税率より高いため、個人の所得税が多い人は法人での所得にした方が税金が安くなるからです。
また、不動産を所有する法人で配偶者や子など相続人たる親族を雇用し給与などを支払えば、所得の分散効果による節税も期待できます。

しかし、不動産の法人化は不動産オーナーにとって決して万能の節税方法というわけではありません。様々なリスクやデメリットも存在するので、それらを正しく理解することが大切になります。
今回の記事では、不動産の個人所有と法人所有では税の扱いがどのように変わり、どのような節税メリットが見込まれるのかを見ていきましょう。

不動産の法人化による節税メリット

不動産を法人化させることによる、節税メリットにはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

個人と法人の税率差

2013年度税制改正によって2015年から所得税は所得4,000万円超の部分には45%の税率が適用され、住民税と合わせて約55%課税されるようになりました。日本政府は膨大な債務を返済するために消費税の増税を志向しており、そのために過半の国民を納得させるための方法として、富裕層や高額所得者向けの課税を強化しています。そのため、所得税の最高税率が今後さらに上がることはあっても下がる可能性は低いでしょう。
しかし、その一方で法人税の実効税率(法人税、法人住民税、法人事業税の実質的な負担率)は低下傾向にあり、平成28年度税制改正によって遂に大企業の法人税の実効税率は30%を切り29.74%となりました。日本企業の国際競争力の維持・向上は日本経済全体にとっても政府にとってもその根幹を支える重要なテーマであり、法人税率が諸外国よりも高いと日本から企業が出て行ってしまうことになるのは困るので法人税率は諸外国との対比で低くしていかなくてはなりません。そのような流れの中で、法人税の実効税率は30%未満にすることが課題となっていましたが実現化され、今後も法人実行税率は現状維持かさらに下落する可能性が高いと予想されます。
所有不動産からのフロー収入をストックし、資産を蓄積・増加させていくことを考えた場合この税率差は大きな違いとなります。

家族への給与支払い

1人が所得2000万の場合の所得税は520万4000円ですが、2人で各人が所得1000万では所得税は1人につき176万4000円で2人合計で352万8000円になり、30%以上も税金が節税できます。「所得分散」により、高い税率も回避され、超過累進課税の低い部分の税率の適用が2人に分散されるためです。
上記のような所得税(と住民税の合計)と法人税(法人実効税率)の税率差の他に「所得分散」も考えることが重要です。所得税でも不動産を5棟10室以上所有している場合には青色事業専従者給与の支払いが可能ですが、法人の場合は5棟10室という基準はありませんし、本人や家族を雇用し給与支払いを行うことによる所得の分散効果を得やすいというメリットも存在します。
また、さらに、給与収入には1人1人に給与所得控除があるため、オーナー1人に収入を集中させるよりも複数人に給与を支給する方が合計での控除額が大きくなります。また、所得税は超過累進税率となっているため、これまでのオーナーに適用されていた税率よりも適用される税率が低くなるように家族の給与を調整すれば、その分の節税効果を享受することができるのです。

給与所得控除と所得税の税率は以下のようになっています。

平成29年給与所得控除

(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下
3,600,000円超 6,600,000円以下
6,600,000円超 10,000,000円以下
10,000,000円超 2,200,000円(上限)

 

平成29年所得税率

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

法人を通さなくとも、不動産を法人所有せずに、個人事業のまま青色申告を行って家族を雇用し、青色事業専従者給与として支払い金額を損金にして所得の分散を行うことは可能です。しかしこの方法の場合、事業的規模として5棟10室以上の不動産を所有している必要があったり、家族が青色事業専従者と認められるためには生計を1つにしていることなどの要件があるため、使い勝手が悪いのです。
なお、法人での雇用であれ、青色専従者であれ給与に見合ったきちんとした勤務実態がなければなりません。青色専従者への給与が過大であると、過大部分の経費算入(損金算入)が税務調査で否認される可能性があります。しかし青色事業専従者の場合は年のうち6ヶ月以上はこの事業に専従するものという制限もあるので、年の内3ヶ月分手伝って3ヶ月分の給与を貰うというような柔軟な運用も行えません。

家族への給与支払いの相続税への影響

所得の分散は将来発生する相続の際に相続税にも影響を与えます。法人化など何の対策も行わなければ不動産から発生する所得はオーナーの元に溜まっていくため、積みあがった資産は、将来の相続時には相続税の対象となります。
しかし、法人から相続人に給与を支払っていた場合、オーナーの資産の蓄積が抑えられその分相続人への所得移転が進んでいき、相続時に課税対象となる資産が減少します。このように、代々への資産移転をしていきやすくなります。

その他の税務上の違い

ここではより理解を深めるための参考として、不動産を個人所有する場合と法人所有する場合の税に関する違いをまとめてみましょう。

所得税や法人税などの違い

税率
(個人)
・個人の所得に対する税率の最高額は55.945%(復興所得税:所得税率×1.021を含む)
・賃貸が事業的規模の場合は別途事業税が発生
(法人)
・資本金1億円以下の中小法人に対する実効税率は年400万以下の部分には21.42%、年400万超 800万以下の部分には23.20%、年800万超の部分には33.80%
・資本金1億円超の大法人は平成28年度の実効税率29.97%

損益通算
(個人)
・不動産所得は、事業所得・給与所得と損益通算が可能(雑所得との損益通算は不可)
・不動産譲渡益は分離課税になり、不動産譲渡損以外との損益通算は不可
(法人)
・法人所得は全て合算で計算するため、すべての損益が通算される。例えば、法人に他の所得がある場合、不動産売却時の損失と損益通算可能

損失の繰越
(個人)
・青色申告者に限り、3年間まで赤字の繰越が可能
(法人)
・青色申告者の中小法人は事業の欠損金を9~10年間まで繰越可能
・ただし、赤字でも住民税の均等割は発生(東京都では年間7万円)

所得分散効果
(個人)
・個人事業主から事業専従者に支払う給与のみ、所得移転可能
(法人)
・法人から個人へ支払う給与は原則として損金に計上可能(勤務実態があることは前提)
・また、個人が法人から受け取る給与には給与所得控除の適用が可能
・ただし法人から個人やその他の法人などへの配当金は損金にならない

相続税や贈与税などの違い

評価の引下げ
(個人)
・相続税評価額によって、時価よりも安い場合が多い路線価方式や倍率方式などで評価
・不整形地や広大地などには評価減の特例もある
(法人)
・自社株式の評価の際に、純資産価額方式では個人と同じく相続税評価で土地を評価(相続税の課税資産の対象は法人株式になり、自社株評価となる)
・ただし、相続開始日以前の3年以内に取得した土地等については時価で評価”

小規模宅地の評価減
(個人)
・被相続人の居住用小規模宅地を相続人が居住用に相続する場合は小規模宅地の評価減の特例(200%まで50%)が適用可能
(法人)
・小規模宅地などの評価減の特例は存在しない

含み益
(個人)
・相続開始時点で不動産の価格が取得時よりも上昇していた場合、その時点の相続税評価額で評価
・不動産価格が上昇し含み益が生じた場合、「時価純資産-簿価純資産」相当額の37%を控除可能

納税猶予
(個人)
・納税制度猶予の適用はない
(法人)
・他の事業も営んでおり、資産保有会社などに該当しない場合は、オーナーが所有する自社株式対して納税猶予制度の活用の検討が可能

贈与
(個人)
・不動産の贈与時には不動産取得税及び登録免許税が発生
(法人)
・不動産を所有する自社株式の贈与は、不動産自体の所有者は変更がないので、不動産登記になんら変更がないため不動産取得税及び登録免許税の対象とならない

このように、不動産所有の法人化は、タックスプランニングでは法人税・所得税、相続税・贈与税を検討し、経済効果のシミュレーションや、不動産選定・管理などの多くの検討事項があります。
相続tokyoでは、具体的なシミュレーションプランなどや様々なツールを今後提供していく予定です。また、適切な各種専門家等のアレンジをしてまいります。
相続tokyoの運営代表によるプランニングのサポートや税務支援も行っておりますので、相談のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。

以上、不動産を個人所有から法人所有とする場合の税に関するまとめをお届けしました。
次回の記事では税以外のメリットとデメリットの比較、また法人化を行うべきか否かの判断のポイントについてお届けします。


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