相続税の税務調査が入りやすい相続の特徴


2015年の相続税の基礎控除引き下げ以降、相続税の申告対象者は増加し、現在は年間約120万件発生する相続全体のうち、約8%に当たる年間10万件の相続で相続税の申告書提出が発生しています(税制変更前は約4%)。そして相続税の税務調査が発生する割合は変わっていませんが、申告者の増加に伴って税務調査の対象となる方も増加していく可能性が高いでしょう。

現在の日本の課税トレンドは相続税や贈与税などの資産税と消費税を引き上げ、法人税を減税する方向にあります。赤字が続く日本の国家財政を健全化させるためには増税が必要ですが、企業の国際競争力を維持するためには法人税は上げられません。そこで消費税増税を行いたいのですが、その際に国民感情を宥める手段として、政治的手段としても富裕層に影響の大きい資産税の増税がセットになると言われています。
こうした背景もあり、相続税や贈与税を逃れるための財産隠しなどはもとより、相続税の基礎控除を超えていそうな世帯では相続時に申告の督促を行うなどして申告漏れが起きないようにするなど、税務署や国税局は大変厳しい目を向けています。

本日の記事では、相続税の税務調査ではどのように対象が決まっていくのか、またどのような相続が税務調査の対象となりやすのかについて見ていきましょう。

税務調査対象とするかどうかを決める申告審理

相続税の税務調査は、相続税の申告後すぐに行われるわけではありません。冒頭にお書きしたように、全国の税務署には年間合計10万件の相続税申告書が提出されます。その全ての相続で詳細な税務調査を行えるほど税務署や国税局にマンパワーはありません。そこで、まずは申告審理というその相続税申告を税務調査の対象とするか否かを振るい分けが行われるのです。
税務調査件数は平成27事務年度で11,935件ですが、うち81.8%で申告漏れ等が指摘されています。そのため、財産額が大きく、税務署から見て間違いがありそう・あるいは税務署内で税務署が収集している情報と照らして申告漏れが見つかるだろう、という相続税申告が税務調査の対象になりやすいと言えるでしょう。

その税務署内での事前調査がどのように行われるのかですが、基本的に被相続人の生前の収入(個人の収入や相続財産など)を国税のデータベースで確認し、そこから税金と生活の必要経費を差し引くことで、想定される蓄財金額を求めます。また不動産購入などの大きな支出がなかったかも確認します。
こうした過程を踏まえて求められた想定相続財産額と、実際に申告された相続財産額の差分を検証していくのです。当然、実際に申告された相続財産が想定される相続財産に比較して少ない相続が税務調査の対象となりやすくなります。
また、その他に税務署は相続人(配偶者や子供)の預金口座や証券口座難度の調査も行っており、相続人の財産が不自然に多い場合には名義預金の可能性があるため調査対象に選ばれやすくなります。名義預金とは、例えば預金等の名義は相続人のものになっているが財産の実質所有者は被相続人であるとみなされる資産を言い、相続税の税務調査で財産申告漏れが指摘されることが最も多い項目です。

税務調査の対象となりやすい相続の特徴

ここではより具体的に相続税の税務調査対象に選ばれやすいとされている相続税申告の特徴を見ていきましょう。

①課税対象遺産総額が3億円以上

特に東京国税局の管轄地域の傾向として、相続財産総額が3億円を超えると税務調査の対象となりやすい傾向があると言われています。もちろん3億円以上の相続財産があれば必ず税務調査の対象となるというわけではありませんが、相続財産が多い場合には必然的に財産漏れのあった場合の金額も大きくなりやすいため調査選定されやすいと言えますので、注意した方が良いでしょう。

②預金通帳の動きに不明瞭な点が多い

税務署は相続人・被相続人の預金の動きを銀行に照会して確認することが出来ます。基本的に被相続人の生前の預金の動きは亡くなる3年〜5年前まで遡って調べられます。そしてその際に不自然な送金や出金や、贈与税の申告のない多額の資金移動があると、名義預金の存在や財産隠しによる過少申告が疑われるのです。
(被相続人が亡くなる3年前までに行われた贈与の財産は、相続財産に含まれ相続税の対象となります。)

③資料と申告書の内容が一致しない

税務署は被相続人の生前の収支状況を把握しようと、銀行や証券・保険会社に対して照会を行います。そうして把握した生前の収入や蓄財金額と、申告された相続財産に著しく乖離がある相続は調査対象に選ばれやすくなります。
単純に浪費家だったという場合もあるでしょが、こうした相続の場合は注意しましょう。

また、税理士印がないと、申告内容に誤りが生じやすくなりますから、やはり税務署でのチェックが入りやすくなると言えるでしょう。

④相続税の申告書に添付された資料の不足・不備や申告誤り

取引相場が明確な金融資産以外の自社株や、不動産・動産の類は相続税申告の際に評価額を求めなければなりません。そして評価額の計算では意見が分かれることも多いため、評価の根拠となる添付資料をつける場合があります。
こうした添付資料が不足していたり、申告内容のチェックで誤りが発見されたりすると税務調査の対象とされやすくなります。

⑤家族名義の現預金チェックがされていない

相続税の申告漏れでは、その多く(30%〜40%)が名義預金の申告漏れとなっています。そのため税務署も名義預金の確認には目を光らせており、相続税申告の際に税理士によって念入りな調査が行われていない場合は、税務調査の対象となりやすくなります。

⑥海外財産の関連する相続

近年、経済のグローバル化の進展に伴って海外に財産を持つ人も増加してきました。当然海外財産に関しても正直に申告し、納税を行うことが求められますが、残念ながら中には海外財産は捕捉されづらいだろうと過少申告を行う人も存在します。
現在財産の海外移転に伴う脱税行為には、各国の課税当局は連携して防止していこうという国際的なトレンドも生まれており、日本の税務署も海外財産に目を光らせるようになってきました。
こうしたトレンドにはテロ組織の資金源特定のためという理由もあり、今後強化が予想されています。

税務調査の対象となった場合の心構え

もし税務調査の対象となってしまった際の心構えなのですが、見解の相違について主張するべきことは主張するとしても、税務調査自体に対して非協力的な態度を示したり、ましてや税務調査をされることを不満に思って国税調査官や税務署職員に当たったり罵倒したりするようなことはしてはいけません。税務調査は国家権力が背景にあり、質問検査権もありますし、何よりも税務署職員は何か不都合なことがあるから隠したり抵抗するのだと思いますし、人情としても「やってやろう」という気を起こされてしまいますので、結果として損をするのは納税者側です。

元国税局職員の秋山清成氏が書かれた「税務調査官の着眼力II 間違いだらけの相続税対策」という本の記述によると、基本的に国税局や税務署の人間は正義感が強く、脱税のような悪いことをしている人間を取り締まることにやりがいを感じています。そして、脱税のような悪いことをする人間は、後ろ暗いところがあるという認識を持っているので、調査に対して非協力的な姿勢を示されたり、罵倒されたりするとかえってやる気を燃やす性質があるとのことです。
そしてだからこそ、非協力的な姿勢とは逆に「どうぞ、どうぞ。何でも調べてください。」という前向きな、協力的な姿勢で臨まれると、国税調査官達は肩透かしを喰らって「絶対に摘発してやるぞ!」という気が削がれるという側面もあるようです。

ただそうは言っても、税務調査の経験豊富という納税者は少ないので不安になってしまい、余裕をもって「どうぞ、どうぞ。」という心境にはなれない人も多いと思われます。
そのような時は自分1人で抱え込まず、相続税と税務調査に強い専門家である税理士に相談し、頼りましょう。
相続税申告において、そうした税理士に心当たりがなく困っている方に対しては、我々相続tokyoでも良い税理士の紹介を行っております。よろしければお気軽に、お問い合わせよりお尋ねください。


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