2018年の相続法制改正の背景と改正の内容


2018年(平成30年)7月6日、俗にいう相続法制に大きな変更が加えられました。これまで、1980年(昭和55年)に法定相続分や代襲相続に関する規定か変更されて以来、実に約40年ぶりの大改正であり、大きな注目が集まっています。

この間、相続法は若干の見直しが行われる程度で大きな変化は加えられていなかったのですが、約40年の間に社会の変化は著しく進み、段々と以前のままのルールでは、現状に対応しきれないことが増えてきたため、数年前から法務省による改正の準備が進み、無事今年(2018年)の7月に法改正が成立したというわけです。
実際の新法の施行は2019年、もしくは2020年からとなりますが、どのような背景のもとどんな改正が行われたのかを見ていきましょう。

高齢化社会を意識した法改正

今回、改正が行われた背景の1つが社会の少子高齢化です。多くの方がご存知のように、日本では今世界でも最大のスピードで少子高齢化が進んでいますが、平均寿命も大きく伸びてきています。
例えば、1980年の平均寿命は「男性が73.35歳・ 女性が78.76 」でした。しかし2017年には「男性が81.09歳・女性が87.26歳」と大きく伸びており、さらに国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、2060年には平均寿命は「男性が84.19・女性が90.93歳」にまで伸びると予想されています。

このことは相続にも大きな影響が出ており、依然と比較して相続発生時にのこされた被相続人の配偶者や子供なども相続人が高齢化してきているのです。そのため、特にのこされた配偶者の生活保護をどのように行っていくのかということが大きな問題になり始めています。

相続争い(争続)の増加

また、近年の相続の特徴として、相続争い=争続がとても増加しています。下記は裁判所へ持ち込まれた相続争いの件数になりますが、増加傾向が見て取れるでしょう。

裁判所資料より

もちろん、裁判所に持ち込むほどでは無いけれどもめてしまったという例はこの何倍、何十倍も存在しています。年間の相続発生件数(死亡者数)は約130万人ですので、決して少なく無い割合で揉め事や諍いが発生しているのです。
「うちは資産家では無いから、相続争いは関係無いではない」と考える方もいるかもしれませんが、司法統計によれば相続の75%は5000万円以下の遺産をめぐって起きていることも押さえておきましょう。

そして今回の相続法制の改正は、上記のような問題に対応するためのものになっています。

法律の施行時期

なお、新しく成立した相続法制の施行時期ですが、改正内容によってまちまちです。しかし2019年1月に以下にある遺言をめぐる法律が施行され、2019年7月までに大半の法律が施行、2020年7月には全ての新法が施行されることになります。

実際の法改正の内容

それでは、実際の法改正の内容を見ていきましょう。

①配偶者居住権の新設

まず、今回の改正の目玉と言われるのが、この配偶者居住権の新設です。これは相続発生後の被相続人の配偶者の居住場所と生活資金の問題を解決するためのもので、2020年7月までに施行予定です。
内容は相続発生後、遺産分割前(ただし最低6ヶ月の間)、被相続人の配偶者は相続財産に属する自宅に遺産分割の結果に関係なく無償で居住する権利を有するという配偶者短期居住権と、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物に、家賃なく住み続けることができる(ただし、日常の修繕費などは必要)配偶者居住権の2つがあります。

【関連記事】
配偶者居住権の新設(2018年相続法制改正①)

②20年以上の配偶者への自宅贈与

もう1つ、配偶者の居住場所と生活資金を確保するための方策として、婚姻生活が20年以上となる配偶者への自宅贈与は、遺産分割の対象から除外されることとなりました。このため、配偶者の居住場所の確保には居住権の活用と生前贈与の2つが可能であり、状況によって上手く使い分ける必要があります。
なおこの法律は2019年7月までに施行予定です。

【関連記事】
20年以上の配偶者への自宅贈与は遺産分割の対象外に(2018年相続法制改正②)

③遺産分割前の預金引き出し

相続発生後、被相続人の預貯金は凍結されてしまい、遺産分割が終了するまでは引き下ろしができませんでした。しかし2019年の7月までには、一定の割合の範囲なら、葬儀費用や相続人の生活資金のために、預貯金を
引き出せるようになります。

【関連記事】
遺産分割前の預金引き出し(2018年相続法制改正③)

④自筆証書遺言作成の簡便化

2019年7月までに、自筆証書遺言の作成時に、財産目録などのパソコンやワープロでの作成や、書類の添付が認められるようになります。また、2020年の7月までには、法務局による遺言の預かりも開始されます。

【関連記事】
自筆証書遺言作成の簡便化(2018年相続法制改正④)

⑤義父母の介護への特別寄与

2019年7月までには、配偶者の父母の介護に貢献した場合、特別寄与料の請求が可能になります。現在でも相続人による請求は可能でしが、よくある”長男の嫁”などの介護への貢献は保証されていませんでした。
今後はこうしたことも保証の対象となります。

【関連記事】
義父母の介護が報われる「特別の寄与」((2018年相続法制改正⑤)

⑥遺留分は原則金銭債権化

これまで、遺留分減殺請求をした際に、対象となる資産が土地などの場合は持分に応じて共有となってきました。しかし2019年7月以降は遺留分は原則金銭債権となり、土地の共有などはされなくなります。

【関連記事】
遺留分は原則金銭債権化(2018年相続法制改正⑥)

⑦債権者を保護する規定

特に登記の優先と呼ばれることが多いですが、被相続人に債務などの負の財産があった場合に、以前よりも債権者の回収が行いやすいように法改正されています。

【関連記事】
債権者を保護する規定(2018年相続法制改正⑦)

⑧遺産の使い込みに対しても対抗が可能

これまで、他の相続人や親族によって遺産の使い込みが行われても、法的に対抗をすることが困難でした。家庭裁判所の遺産分割調停では、遺産総額が確定している前提で行われるため、使い込みによって遺産総額がわからなくなると、それは調停の範囲外だったからです。
しかし、今回の法改正でこの問題にもメスが入っています。

【関連記事】
遺産の使い込みに対しても対抗が可能(2018年相続法制改正⑧)


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