相続とは何かと相続発生後の流れ


相続とはどういったもので、どのような財産が相続の対象になるのか、また遺産分割はどのように行われるのかや、相続発生後の流れについて見ていきましょう。

1 相続とは何か?

そもそも相続とは、人間の持っている財産を次世代に受け継いでいく人類の普遍的な行為です。しかし、その法律的な形式は国よって随分異なります。
日本では私有財産制度が認められていますので、持ち主が死亡し所有者がいなくなった財産は、その配偶者や子供などに受け継がれます。なお相続の対象となる財産には、借金などの負の財産も含まれ、日本では相続人(共同相続人)が現預金や不動産などの正の相続財産も借金などの負の相続財産も一括して相続をしますが、国によっては遺産は一度プロベートと呼ばれる財団の状態に移され、そこで遺言執行人や遺産管理人が管理し、債務などの弁済を済ませてから相続人に相続されるという形式を取る場合もあります。

相続は亡くなる人にとっては自分の生きた後のことかもしれませんが、どのように財産を分割するのかや、相続に伴って発生する税金(相続税)の納税はどう行うのかなど、重要な問題がいくつも発生します。また日本では遺産分割については民法、相続税については相続税法によってルールが定められていますので、そうしたルールに則って手続きをしていかなければなりません。

2 法定相続

財産を誰が相続するのかということについてですが、日本では法定相続と言って民法(第887・889・890・900・907条)によってある程度定められており、被相続人(亡くなった人・財産を残す人)が完全に自由に決めることはできません。財産を相続するべき人が法定相続人として定められており、どの人がどの割合で財産を相続できるのかも法定相続分として定められています。

2-1 法定相続人の範囲

法定相続人の範囲ですが、まず被相続人の配偶者は常に相続人となります。そして配偶者以外の親族は、次の順番で相続人となる事が定められています。

第1順位「被相続人の子供」
被相続人に子供(子供が既に死亡している場合は、その子供の子孫)がいる場合、その子供は相続人となり配偶者に加えてここまでが相続人の範囲となります。

第2順位 「被相続人の父母」
被相続人に第1順位の相続人がいない場合、配偶者に加えて第2順位として被相続人の父母(父母が既に死亡しているが、直系の尊属が生きている場合はその尊属)までが相続人の範囲となります。

第3順位 「被相続人の兄弟姉妹」
被相続人に第1順位の相続人も第2順位の相続人もいない場合、配偶者に加えて被相続人の兄弟姉妹が第3順位の相続人として相続人の範囲となります。なお、兄弟姉妹が既に死亡していた場合、その子や孫に相続権が移るということはありません。

2-2 法定相続分

法定相続分に関しては、相続人の範囲が第1・第2・第3順位のどこまでに及んでいるのかによって、変わってきます。

①配偶者と第1順位の相続人に相続が行われる場合

配偶者1/2
子供(2人以上のときは全員で)1/2

※配偶者がいない場合は、子供が全て

②配偶者と第2順位の相続人に相続が行われる場合

配偶者2/3
直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

③配偶者と第3順位の相続人に相続が行われる場合

配偶者3/4
兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

なお、子供同士や直系の尊属同士、あるいは兄弟姉妹同士で分割する部分に関しては、均等に分割される事になります。

2-3 遺産分割協議による調整と遺言による指定

上記の法定相続分は、必ずしもこのように分割をしなければいけないというわけではありません。遺産分割において相続人の間で意見がまとまらなかった場合、法律上はここまでは権利が保障されているものになります。相続が発生した後に法定相続人の間で、遺産分割協議が開かれるのですが、その場で合意の形成ができればどのように分割しても構わないのです。

また被相続人は遺言によって指定すれば、ある程度誰にどれくらいの財産を残すのかを指定する事が可能であり、法定相続人に含まれない相手にも財産を遺すことが可能です。ただし法定相続分には被相続人の意思=遺言でも侵害できない遺留分というものが認められており、配偶者と第1順位の相続人の場合は法定相続分の1/2、第2順位の法定相続人は法定相続分の1/3までは、権利を主張する事が可能です。
(兄弟姉妹には遺留分は認められいていません。)

3 相続や相続税の対象となる財産

そもそも、どのような財産が相続の対象となるのか見ていきましょう。一口に財産と言っても人によって感じるイメージは様々です。基本的に金銭に換算できるものは相続財産に含まれますが、中には例外もあるので注意が必要です。

一般的なイメージとしては、相続財産というと相続人が被相続人から受け継ぐ自宅などの不動産や現預金など正の相続財産ばかりをイメージしがちですが、相続財産は必ずしも正のものばかりではありません。借金などの負の相続財産も存在し、これらも相続の対象となるのです。
具体的には以下のようになります。

3-1 プラスの相続財産

一般的にイメージされやすい正の相続財産ですが、中には請求権の類など見落とされがちなものもあるので注意しましょう。

【主な正の相続財産】
①現預金や有価証券
現金、預貯金、株券、貸付金、売掛金、小切手など

②不動産や、不動産にまつわる権利
宅地、農地、建物、店舗、居宅、借地権、借家権など

③自動車などの動産
自動車、家財、船舶、骨董品、宝石、貴金属、美術品など

④その他
電話加入権、ゴルフ会員権、著作権、各種請求権(損害賠償や慰謝料など)

3-2 マイナスの相続財産(消極財産)

借金などが代表的な負の相続財産となります。

【主な負の相続財産】
①負債
借金、買掛金、住宅ローンなど

②税金関係
未払いの所得税と住民税、その他未払いの税金など

③その他
未払い分の家賃・地代、未払い分の医療費など

3-3 相続財産に含まれないもの

上記のように相続財産は、被相続人に属していた権利や義務などが含まれますが、全ての権利や義務が相続の対象となるわけではありません。具体的には以下のようなものが相続の対象外となります。

①被相続人の一身専属権(民法896条)
被相続人の権利や義務であっても、その一身に専属しているものは相続財産になりません。
“一身専属権”は聞きなれない言葉だと思いますが、これはその権利や義務の内容や性質が、当人だけに帰属して然るべきとされる事柄で、他の人に課するべきではないとされるものを指します。例えば代理権や使用貸借権、また労働者である地位や身元保証人である地位、それに扶養の請求権や生活保護受給権、また親権や信用保証人である地位・根保証債務などが含まれます。
また少し迷いやすい所で、その権利の行使を行うのかを本来の意思によらなければ判断できない権利も含まれ、具体的には精神的損害に対する慰謝料請求権なども一身専属権になります。
(※生命侵害に対する慰謝料は、相続の対象となります。)

②生命保険の保険金や死亡退職金

生命保険の保険金や死亡退職金は、被相続人の死亡によって次世代に受け継がれる財産ですが、相続の対象ではありません。ただし、これらは相続税の課税対象にはなります。
このため税金は取られますが、法定相続の対象ではないので、法定相続分を無視して望む相手に遺すことが可能です。

③祭祀に関する権利(民法897条)
また祭祀に関する権利も相続の対象となりません。被相続人の遺志で託す相手を自由に選べますし、相続税の課税もされません。
具体的には、祭祀を営むための家系図や仏壇・位牌など祭具、お墓などの財産です。

4 相続に関する民法改正の概要

近年の相続に関する法律(民法)は、長年変更が加えられることなくきており、約40年前に施行された法律がほとんどそのまま適用されてきたのです。しかしその間にはパソコンやスマートフォンを始め様々な情報機器の発達や、少子高齢化の進展など社会的に大きな変化が起き、相続の法律も時代に合わないものとなってきていました。
そこで数年前から相続に関する法律改正の機運が高まり、ついに2018年の通常国会に遺産相続などに関する民法改正案が提出され、7月6日に成立、7月13日に公布されました。今回の民法改正では複数の点が改正されており、改正内容によって施行日は異なりますが、早いものに関しては2019年の1月13日からルールが変わっていきます。

具体的に改正のあった7つのポイントを見ていきましょう。

4-1 配偶者居住権の新設

今回の改正の目玉と言われるのが、配偶者居住権と言われる権利の創設です。これは、被相続人の配偶者は現在住んでいる家が相続財産である場合に、そこに住み続けることができる権利です。

この権利は短期と長期に分けられ、まず短期では配偶者は被相続人の死後6ヶ月間は無償で相続財産である住宅に住み続けることが可能です。また長期では、自宅の権利を「配偶者居住権」と「負担付き所有権」に分け、配偶者が「配偶者居住権」のみを相続することで、1軒分丸々相続する場合に比較して他の財産の相続分を増やすことが可能になります。
近年の高齢化社会の中で、配偶者の生活を保護するために、このような権利が法定されることとなりました。

4-2 住居の贈与が特別受益の対象外に(結婚期間20年以上の夫婦の場合)

配偶者居住権と同様、配偶者の生活を守るために行われた改正です。
結婚期間が20年以上の夫婦に限定されますが、配偶者間で住居を生前贈与したり、遺贈したりしてもこれが特別受益と評価されないことになりました。これまではこうした贈与は特別受益として、遺産分割の際に相続財産に戻されて計算されたのですが、そうならなくなったので被相続人は配偶者の生活を守りやすくなります。

4-3 遺産分割前の生活費の引き出し

被相続人の遺産は、法律上は被相続人の死亡と同時に法定相続人全員の共有財産となり、遺産分割協議を終えるまではその処分や利用ができなくなります。当然銀行口座も凍結され、引き出しなどはできません。
しかし今回の改正によって、生活資金や葬儀代などは遺産分割協議前であっても口座から引き出せるようになりました。

4-4 介護や看病で貢献した法定相続人以外の親族の金銭請求

被相続人の介護を相続人の配偶者(多くの場合、長男の嫁)が行うということはまだまだ多くありますが、相続人の配偶者の立場ではどれだけ献身的に、自己を犠牲にして介護を行ったとしても、この立場の人に相続の権利はありませんでした。
しかし今回の法改正によって、被相続人の介護や看病に貢献した親族は法定相続人ではなくとも、金銭請求を行えるようになったのです。

4-5 法務局による自筆証書遺言の保管

今、相続財産の分割をめぐって争う遺産相続争いの件数が増えています。こうした事態を予防するには遺言の作成が効果的なのですが、自分で作る自筆証書遺言の場合、自宅で保管するか弁護士に預かってもらうしかできませんでした。
今回の改正案では、 法務局が遺言の保管を行ってくれるようになったので、負担なく紛失や偽造のリスクを減らせます。

4-6 自筆証書遺言の検認が不要に

これまで、自筆証書遺言の開封は偽造・改ざんの防止という観点から相続人全員が立ち会いのもと、家庭裁判所で検認という手続きが必要でした。
しかしこれは煩雑ということで、今回の快晴で検認手続きが不要となります。

4-7 財産目録のパソコンでの作成

自筆証書遺言は手書きで作成しなければならないのですが、これまでは財産目録も手書きで作成しなければならないため、非常に作成が大変でした。
しかし今回の改正で財産目録に関しては、パソコンで作成したものを印刷したり、謄本や通帳のコピーを用いたりしても良くなったのです。

5 相続発生後の具体的な流れ

最後に、相続発生後の具体的な流れを見ていきましょう。

5-1 死亡届の提出(7日以内)

相続の発生=被相続人の死亡から7日以内に、自治体に対して死亡届の提出を行う必要があります。その際には医師による死亡診断書も提出しましょう。
被相続人の死亡場所が病院であれば、病院側からアナウンスがあります。もし自宅で亡くなった場合は、医師に連絡をとり死亡診断書の作成をしてもらわなければなりません。
そして、死亡診断書の提出と同時に火葬許可申請や埋葬許可申請も行いましょう。

5-2 相続放棄・限定承認の申述(3カ月以内)

相続財産は正の財産だけではなく、負の財産もあるという話をしましたが、相続人の立場であればできれば負の財産は相続したくありません。ただ正の財産だけを都合良く相続するということもできないので、負の財産の方が多そうということであれば、相続人は相続放棄の手続きを行います。この手続きは相続発生から3ヶ月以内に家庭裁判所で行わなければなりません。
なお、相続放棄ではなく相続した正の財産の範囲内でしか負の財産を相続しないというものを限定承認の手続きを行うことも可能です。

5-3 所得税準確定申告(4ヶ月以内)

被相続人に収入があった場合、準確定申告と言って所得税の申告と納税を行わなければなりません。通常の所得税の確定申告は、所得が発生した翌年2月16日から3月15日の間に行いますが、準確定申告は相続があったことを知った日(通常は亡くなった日=相続日です)の翌日から4ヶ月以内に行います。

5-4 遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成(10ヶ月以内)

完璧な遺言があったり、相続人が1人という場合を除いて、相続が発生したら法定相続人同士で集まって遺産分割協議というものを開催し、遺産分割協議書を作成しなければなりません。この遺産分割協議で誰がどの財産を相続をするのか決めるのですが、遺産分割協議は前回一致でなければならず、もし1人でも反対する人がいると話はまとまらず、財産の名義変更もできないままとなります。

遺産分割協議自体には締め切りはないのですが、相続税の納税や各種手続きのことを考えると相続の発生から10ヶ月以内には終えた方が良いでしょう。
特に相続の納税では、遺産分割協議を終えている場合にのみ利用できる特例も多いので、相続税の申告が必要になる場合は、必ずここまでに終えたい作業です。

5-5 相続税の申告・納付(10カ月以内)

相続財産が一定規模の場合、相続税の申告や納税の手続きを行います。この手続きは相続の発生から10ヶ月以内に行わなければなりません。なお、相続税がどの程度の課税されるのかや、申告・納税手続きの注意点などについては別記事にてお届けします。

5-6 遺留分の減殺請求(1年以内)

法定相続人である子ども等には法定相続割合の半分は遺言によっても相続財産として相続できる権利があります。遺留分が遺言によって侵害され、遺留分未満の財産しか受け取れなかった場合に相続人が自身の権利行使のために行える手続きが遺留分の減殺請求です。
遺留分の範囲で遺産を他の相続人から取り戻すことが可能ですが、手続きは、遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行わなければいけません。

5-7 財産の名義変更(遺産分割協議後)

必ずいつまでに行わなければならないのという期限はないのですが、遺産の名義変更の手続きはなるべく早めに行いましょう。
遺産分割協議を行った後にすることになり、不動産なら法務局で登記をしたり、預金の名義変更なら銀行に行ったりと、やや煩雑な手続きが多くなります。


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