相続におけるセールスコンサルティングにはどういったものがあるのか?


数億円単位や数千万円以上の資産があり、相続についての悩みを抱える立場では、様々な業種の営業マンやコンサルタントから税金対策(相続税対策)や資産運用で「お勧めの提案」があると言い寄られてきます。しかし、その提案が「本当に」自分のためになるのかはよく考えましょう。

世の中にはセールスコンサルティング(コンサル型営業)という言葉があります。課題解決型営業と言われる営業の方法で、何か商品を販売する営業ありきではなく、あくまで顧客の悩みや課題の解決を志向し、そのために必要があればソリューションとしての商品を販売する、という営業手法です。ひたすら商品説明に熱を帯びたり押し切り型の営業では顧客との信頼関係も得られず営業効果も悪いので、顧客の課題を見い出し、問題解決をするような商品やサービスの提案をするというものです。
一見とても顧客のためにもなり、うまくやれば営業成果にも繋がりそうで商品提供側からも合理的に思えるかもしれませんが、特に個人向けにコンサルタントやコンサルティングを謳って提案をしてくる相手には、相手のビジネスとの利害関係への注意を持って接しましょう。実はコンサルタントや相談へのアドバイザーを名乗っているだけで、販売したい商品ありきの営業だったという場合も多いのです。個人は、企業との情報格差が大きく、判断も個人の主観や感覚で行ってしまいがちなので、実際の問題解決になるかどうかではなく、問題解決になりそうな営業トークに誘導されてしまいやすいからです。説明を聞いてもよく分からないので、提案内容の良し悪しではなく、営業マンが良い人そうかで決めてしまいがちです。企業としても、自社の利益を最大化することが使命ですから、非難に値することではなく、商品やサービスの購入側の個人がしっかりと判断しなくてはいけません。

相続におけるセールスコンサルティング

2015年1月の相続税の実質的増税以降、特に都内で個人宅を所有している人を中心に相続への関心が高まりました。これまでも相続税の対象であった資産家の方々も、さらなる負担増加の不安を感じて対策へ関心を高め、多くの雑誌等での特集が組まれています。その結果で起きたこととして、金融機関を始め様々な事業者の相続ビジネスへの強化や新規参入、相続コンサルタントを名乗る人の増加です。実際に相続に対する情報提供へのニーズや対策の必要性も高まっているので、求められているサービスが増えるのは自然なことと言えるでしょう。

顧客の側はこの状況に多少の注意をしなければなりません。それというのも、金融機関や相続事業者の提案が必ずしも顧客の状況に対して客観的な分析と提案を行っているとは限らないからです。新規参入の事業者や担当者の場合は、サービスの質に不勉強なところがあるかもしれません。金融機関(銀行・証券会社・保険会社)や不動産業者のビジネスモデルは、顧客からの相談に対して相談料を貰う士業(弁護士や税理士、司法書士、行政書士など)と異なり、顧客の相続における課題を解決することを目的とした商品の販売収益です。
FP(ファイナンシャルプランナー)などを名乗る業者も注意が必要です。本来、FPは顧客からの相談料やコンサルティングで収入を得ることが望ましい立場ですが、販売業者が営業で顧客から敬遠されることを避けるための隠れ蓑としてFP、相続アドバイザー、資産コンサルタントなどを名乗るケースもあるからです。

この場合、営業マンの提案商品が顧客の状況にフィットしていてその課題を解決できる最善のものであれば問題ありません。しかし、営業マンの最終目的が商品販売ありきである場合、収益上の観点から必ずしもその提案商品がベストではない顧客に対して販売をすることがあるのです。むしろ、顧客が自主的に購入し難いものを売ることこそが営業マンの腕の見せどころであるとも言えます。
営業マンは「お客さんのためだから」「後で後悔しないように」と余計なことを言って顧客が購入を尻込みすることは困るわけです。
そのため、現場では、商品を購入しそこに付随する相続対策を行うことによるリスクやデメリットを十分に説明していない場合も見受けられます。コンプライアンス上でグレーではないかというものは論外ですし、コンプライアンスには問題はないかもしれないが、顧客を誤認させ得る可能性があれば、適切ではないでしょう。
このようなことは、資産管理において、相続対策だけでなく、資産運用の投資信託やファンドラップの販売にも共通します。
相談料を払えば正当なアドバイスを得られるかというのは相談相手次第ですし、営業マンであっても本当に役に立つものだけを提案し得られた信頼関係から顧客の輪を広げるという優秀な人もいます。結局は相談相手の力量・知識・人脈・良心によるもので、相談する方もきちんと注意をもって見極めをして頂ければと思いますが、顧客側が正当な評価をするのも難しいのもまた仕方がない面もあります。

代表的な提案商品は生命保険と不動産

相続のシーンで実際に提案されるコンサルティング内容と商品ですが、基本的には財産の評価を下げたり生前贈与を組み合わせながら不動産、生命保険などを活用したり、遺産分割のための遺言書の作成や遺言信託等になります。事業承継では様々で多様な節税スキームも登場します。企業オーナーであれば、そのほかに資産管理会社や持株会社の活用やM&Aなどの提案が行われる場合もあります。

ここでは、不動産、生命保険、遺言信託について、それぞれの商品の特徴やどのような提案の仕方をされるのか、メリットデメリットを簡単に確認してみましょう。

相続における生命保険の提案

生命保険は相続税の対策や遺産分割、それに遺族の生活保護の観点から提案されることの多い商品です。生命保険の保険金は受取金額が「500万円×法定相続人の人数」までは非課税となるためです(500万円を超えた部分はみなし相続財産に含まれます)。そのため相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人の人数」が生命保険を活用すれば「3000万円+1100万円×法定相続人の人数」まで事実上増やせます。
生前贈与の手法として保険を使うという提案もあります。

この保険を活用した相続税対策のスキーム自体は効果があることは事実ですし、魅力的に感じる方も多いでしょう。実際に私ども相続.tokyoのサポートも、相続対策・相続対策では、保険活用の方法を提案するものでもあります。しかし、保険商品の詳細には注意をしなければなりません。原則として保険料は固定されますが、高齢者の保険料は高額になりがちです。経済効果を適切に計算しなければ、実際には損をしているという可能性もあるのです。
単に「お得になりますよ」という話に乗るだけではなく、経済効果やリスク・留意事項をきちんと理解しましょう。保険の営業マンは懐に入りながらも手数料が増えるよう「過大に」保険の加入を勧めてきているかもしれません。また、保険以外の対策とも合わせてトータルで資産全体を管理をして、部分最適になってしまわないように注意をした方がいいでしょう。

相続における不動産の提案

日本では、多くの場合で、相続対策イコール不動産をどうするか、という問題であると言っても過言ではありません。
これは相続税額が大きくなりがちな資産家の方に対して特に行われる提案です。現金であれば1億円の現金は相続の発生時に1億円として評価され相続税計算対象となります。しかし、不動産は現金と異なり流動性も低いことや一物一価でないなどから相続税評価にあたって様々な税制上の特典があり、市場での売買価格が1億円の不動産であってもそのまま1億円としては評価されません。状況によってまちまちなため明確な基準はありませんが、賃貸不動産の購入では、売買価格1億円の不動産が相続税の計算時には数千万円程度で評価されることも良くあります。そのため、相続税の節税方法として不動産の購入などはよく進められる方法になります。ローンを組み合わせると、少ない元手で大きな効果も得られます。

不動産購入で相続税が下がる、これは事実です。
この方法も顧客の状況に即していて、不動産の選定が適切であれば問題ありません。むしろ相続税対策の王道でもあり、不動産の購入を行ってとても助かったという人も多いでしょう。
しかし、不動産の 購入には様々なリスクが伴うことも忘れてはいけません。過去には、市場環境の変化によって1億円で買った不動産が数千万円程度でしか売れなくなってしまったというようなことも数多く発生しています。賃貸不動産は賃貸経営ビジネスですから、物件の魅力や空室リスクも考慮しなくてはなりません。空室になるとローンの支払いでキャッシュフローがマイナスになります。サブリース契約でも更新時に賃料を下げられる可能性があります。最悪のケースでは、物件に瑕疵があるかもしれません。不動産の購入や運用にはリスクが伴うのですが、物件販売による仲介手数料を得ることありきの立場の営業マンですと、売りさえすれば、極端に言えば後は野となれ山となれですから、適切な説明をしてくれないかもしれません。この点には良く注意しましょう。

相続における遺言信託の提案

最後は、遺言信託の提案です。主に銀行や信託銀行などから提案され、遺言状の作成や遺言執行のサポートを得られるサービスです。諸々の手続きを代行してくれるし銀行なので安心できるし手間も省けそうだという人も多いかと思いますが、このサービスの難点は手数料が割高になってしまうことです(参考記事リンク)。ここまで高い手数料を支払うのであれば、弁護士・税理士・適切なアドバイザーやコンサルタントなどにお願いをした方がずっと少ない金額で同様のサービスを受ける方法も提案してくれる可能性も高いでしょう。

また、遺言信託を行うにあたって金融機関には財産状況を全て開示することになりますが、その行為が上記に生命保険や不動産、あるいは純粋な資産運用目的の金融商品の営業の呼び水ともなります。
もちろん資産状況をより詳細に把握することがより良い提案に繋がりますし、それらの商品が顧客の立場にあったものであれば問題はありませんが、そうとも限らない場合があるので注意が必要でしょう。読者におかれましては、相談相手の経験値や力量、ビジネス上のインセンティブ(どのように収益を得ているのか)をきちんと理解し、大きな金額の意思決定は、複数のプロから話を聞いて、適切な判断をし、失敗のないようにして頂ければと思います。迷った場合には、営業とは別の立場で、信頼できて詳しい人に相談やセカンドオピニオンを聞くのも良いでしょう。

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