人生の最期を考える、リビングウィルとは何か?


2016年秋、オランダで、高齢者は希望があれば重い病気になっているなどの事情がなくとも、加齢を理由に安楽死を選択できるようにしようという法案が提出されました。先進的な国と言われるオランダでは1980年代、1990年代に安楽死についての議論が活性化し、ついに2002年に世界で始めて(一定の条件のもと)安楽死が合法化しました。その後も議論は続き、2016年11月11日現在ではまだ結果は確定していませんが、冒頭の法案(正確には2002年に施行された法律の適用範囲拡大案)提出されるに至りました。

このニュースには世界中が衝撃を受け、各国でも安楽死や尊厳死をめぐる議論が活性化しています。世界でも特に高齢化の進展スピードが速く、少子高齢化の重い問題を抱える日本でも徐々に議論が始まっています。
基本的な原則として、現在の日本では自殺も安楽死も認められていません法的根拠・拘束力は不確かなものの患者本人には治療を拒否し尊厳死を選ぶことは認められており、意思を失った後の治療方針への希望をあらかじめ文章に残しおく「リビングウィル」にも関心が集まっています。

安楽死と尊厳死の違い

誤解している人も多いので、まず安楽死と尊厳死の違いについて確認しておきましょう。そもそも安楽死とは、一般的には薬などを用いて苦痛を与えずに人に死を与えることを指します。日本では原則的に安楽死は認められていません。オランダをはじめとした一部の国では、治る見込みのない重い病気の患者に対し、病気などによる苦しみから逃れるための安楽死が認められています。

一方、尊厳死は人間として尊厳のある最期を迎えられるよう、本人が望まない延命治療をやめて自然な死を迎えようというものです。終末期の延命治療の場合、すでに本人の意識がなく食事もできないけれどもチューブを胃につなぎ、そこから食事を与えて(意識が回復する見込みがなくとも)生命のみを何年も維持させる場合があります。ただそれが本人の望んだ生とは言えない場合には、家族の身体的・精神的・経済的負担も大きくなるため、治療をやめ安らかな死を迎えようというのが尊厳死なのです。

命を無くすために主体的な行動を行うことと、延命行為を止めて自然な成り行きに任せることの違いと言えるでしょう。オランダ、ベルギー、スイスなど限定的にでも安楽死を認める国はまだ少数派です。しかし、尊厳死についてはもっと議論が進んでおり、欧米ではほとんどの国で法律的にも認められています。
一方、日本では、安楽死も尊厳死も法的には認められていません。しかし、尊厳死に関しては厚生省が2007年に発行した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」によって、死に瀕した患者に対する治療についての指針が示されました。それによれば、本人・家族・医療チームによってきちんとした議論が行われていれば治療の中止を含めた判断を行えると明示されています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0521-11a.pdf

終末期の医療

そもそも安楽死や尊厳死がテーマになるほど終末期の医療は過酷なものなのでしょうか。病気を治すためでなく、死を一時的に先延ばしするための治療を「延命治療」もしくは「延命措置」と言いますが、終末期の医療はほとんどがこれに当たります。
意識がない場合も含めて自分の力で食事ができない場合も多いため、胃に穴を開けて管を通す胃ろう栄養法や、鼻から胃まで管を通す経鼻経管栄養法などによって栄養や水分を流し込んで生命を維持させるのです。

そして終末期と言いますが、短期間で終わるとは限りません。2〜3年はこの状態のまま生存することも多いのです。そしてこのような状態になった時に、延命治療(措置)を続けるかそれともこれらを止めて自然の成り行きに任せるかの判断は本人とその家族、そして医師の協議に委ねられているのです。

リビングウィルとは

終末期の延命治療(措置)をやめるべきかどうかに明確な答えはありません。一人一人事情も価値観も異なります。しかし、病魔によって苦しめられている場合も多いため、無理な延命を望まないという方も大勢ます。そのような場合は家族や医師と話し合って結論を出すことになるのですが、問題は意識を失った状態で胃ろうなどによって生命を繋いでいる場合です。意識がある状態では、「もう意識が回復しないのであれば、家族の負担にもなるし延命治療(措置)はやめて欲しい」と思われる方も大勢いると思いますが、意識がないのでその意思表示ができません。

そしてこのような事態を想定し、あらかじめ自分に意識がなくなった場合の治療方針や相続・贈与を含めた財産のことなどについて意思表示をしておく書類をリビングウィルと言います。これは「生きている間に効力をはっする遺言書」という意味の言葉で、日本では法的に認められ拘束力を有している書類ではありません(アメリカでは法的にも認められています)。そのためこの書類に書かれたことが必ず守られるという保証はないのですが、家族や医師が治療方針に悩んだ際に重要な指針にはなるでしょう。多くの医師は患者の意識がなくともリビングウィルがあればそれを尊重するとも言っています。

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