相続税の税務調査はどのように行われるのか?


法人税や所得税の確定申告と同様に、当然ながら相続税の税務申告も税務調査の対象になりますが、法人税・所得税に比べて特に調査が行われる可能性が高いのが相続税です。
国税庁の発表では、相続税の納税件数に対しておよそ20%もの件数の税務調査が行われています。それというのも、相続税は単純に納税額が大きく、税負担の公平性という観点から税務署にとっても見過ごせないというわけです。また、毎年行われる法人税や所得税と比べて申告側も不慣れだったり、事業を行っている場合のように法定帳簿を継続的に作成しているわけでもないので財産を全て把握できていなかったりすることも要因としてあるでしょう。実際に税務調査に入ったうちの約8割では何らかの税務署からの指摘を受け、追徴が発生しています。

今回の記事では、もし税務調査の対象になってしまっても慌てないで済むように、税務調査の概要とその切り抜け方について見ていきましょう。

税務調査の行われる時期や行われる日の流れ

相続税の税務調査が行われる時期は、相続税の申告・納税から1年ほど経過してからということが多いようです。税務署が税務調査を行う場合、過少申告をしているのだろうと相当程度の確信をもって行っていることが多く、時間をかけて金融機関への内定などを進めてきているのです。分かりやすく言えば、相続人が故意か知らなかったかに関わらず、納税者の知らないところで税務署は金融機関に被相続人が口座を持っているか、その入出金の内容まで照会して財産を把握できるからです。また、近年では重点管理富裕層という区分を設けていることも明らかにしていますが、生前から財産内容を追っており、いくらくらいの財産があるはずか目星を付けています。

そして、納税者の側から見た税務調査の流れですが、まず税務署から電話連絡が来て、大体その2〜3週間後に担当者が自宅にやってきて始まります。電話連絡は通常は税務申告を担当した税理士へいきます。脱税や財産隠しの恐れがあるなどの悪質性が高い場合は、強制調査と言って、事前連絡なしでやって来ることはありますが、相続税ではあまり多くはないでしょう。
基本的には税務調査が入らないようにきちんとした申告書を作成し納税を行うことが大切なのですが、もし税務調査に関して連絡が税務署から来た場合は、この期間にきちんと準備を行うと良いでしょう。
税務調査が行われる日の流れですが、大体、午前10時ごとに担当者が2名体制でやってきて、午前中はヒアリングなどの口頭調査、午後は通帳や金融機関の書類などの現物調査が行われます。午前中は雑談を交えながら納税者を安心させるためか油断させるためか、比較的穏やかに進み、午後から書類等の確認に入ることが多いでしょう。
口頭調査では、税務署の調査官は自分たちに有利な情報や発言を引き出すため、調べが付いていることに対しても知らないふりをしてきたり、逆にかまをかけてくることもあるので十分注意してください。調査官は、例えば、被相続人の趣味がゴルフと聞けば会員権はなかったか、申告財産に含まれていない金融機関のカレンダーや粗品が置いてないか、トイレに行った際には家に置いてあるものを観察したり、アンテナを張り巡らせているものと思っておきましょう。
通常は、申告を依頼した税理士に同席してもらうことになるでしょうが、事前に質問事項のリハーサルや求められることが分かってある書類等は準備しておくと良いでしょう。また、よくあるパターンとして、生前贈与の内容や、預金関連の移動などが特に注視されます。

実際に税務調査でよく見られるポイント

次に、税務調査にてよく見られるポイントや、自宅での実地調査でよく聞かれたり調べられたりする内容について見ていきましょう。主に以下のような点がよく見られています。

被相続人の生活や転居、住所・月々の生活費

税務調査で、特に見られるポイントは被相続人(亡くなった方)や相続人の預貯金の増減です。贈与税の申告をせず、申告漏れをした形の贈与をしていないか、名義預金(他の家族名になっているが実質所有者は故人のものとみなされる預金)を相続財産に含めずに相続税の申告をしていないかを見ているのです。そのため、被相続人の生前の暮らしぶりや、どのような住居を辿ったか、また不動産の売却記録などが詳しく調査されます。被相続人の収入に関しては、所得税の情報等から確認できているので、その情報と照らし合わせて不審な点がないかを見ようというのです。

預金通帳からの移動、お金の引き出し

時々、被相続人の死期が近づくと相続税を逃れるために預金を卸す人もいるのですが、卸した現金相当額が申告財産に含まれていなければ、その使途等については追及がされることとなります。また、死亡時期の直前の相続人への贈与は贈与ではなく相続に含まれるため、卸した分の金額も相続税の申告時に含めなければなりません。相続時の3年前の贈与は相続財産に含められるというのが相続税のルールになっています。
こうした財産漏れを見逃さないよう、被相続人が亡くなる直前の金融機関口座の動きはチェックされます。特に不審な引き出しや送金が見られる場合は、実地調査の際に詳しく聞かれるので説明できるようにしておく必要があります。

手術代や入院費などの医療費がどれくらい掛かったか

税務調査の中で、被相続人の生前の医療費についても確認が入ります。多くの方が亡くなる前に手術や入院などで出費が多くなることは自然なため、どこまでがそうした医療関係の支出で、どこからがそうでないのかを確認するための医療費の確認がされるのです。

被相続人の通帳や印鑑などの保管場所

これは預金調査や財産の移動の一環として行われるのですが、実際に預金通帳などをよく見てみると、特に年配者ほどメモを残している方が大勢います。そうしたメモの内容からも預金調査の実態を把握しようとするためです。通帳だけでなく保管場所を確認する理由も同じで、通帳の近くにメモや日記などないか確認するためです。
調査官は、被相続人の印鑑は紙に押してみます。インクの跡があると、税務調査時から最近で何らかの工作に使用した可能性を疑われます。保管場所を見せてくれと言われることがあります。やましいことがなくてもプライベートなところを他人の税務調査官に見せるのは抵抗がある人が多いでしょうが、協力しないと何か相続財産を隠しているのではないかという見方をされるので、税務調査をすんなり終わらせるためにも、協力的な姿勢でいる方が得策です。

金融機関などとのやりとりの履歴

税務署は徴税権限を駆使し、取れる全ての手段を使って、被相続人の所有している預金口座や証券口座などを把握しようとしますが、その全てを確認し切れるとは限りません。そこで、被相続人がどの金融機関と付き合いがあったかを確認しようとするのです(付き合っている金融機関がわかれば、そこから情報は入手できます)。そのため、調査官は、例えば香典帳など葬儀の参列者がわかる書類などにも目を通し、参列者の中に金融機関の人間がいなかったかどうかを確認したりもしています。マイナンバーの金融機関口座との紐づきが網羅的に浸透すれば、金融機関口座のチェックの精度は格段に上がるでしょう。

相続人の持つ財産の実際の管理者

調査官が税務調査で見てくる項目は、被相続人に関することだけとは限りません。特に名義預金に関しては厳しく目を光らせていますので、相続人の所有する財産が、本当に相続人が管理していたのかなども詳しく確認を取ってきます。専業主婦の配偶者に不相応の預金残高があれば、それは被相続人の収入が原資ではないのかと調査官は考えます。へそくりをこっそり貯めたものであっても名義預金とされてしまうのが相続税のルールです。

相続人の資産の形成のされ方

上記と同様、名義預金の確認や過少申告を暴き出すための方法で、相続人に一定の財産がある場合は、それが相続に由来するものなのかどうか確認してきます。

相続財産は分割協議書の通りに分けられているか

相続には、例えば配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、遺産の分け方で相続税の金額が変わる特例があります。こうした特例を悪用するために、被相続人の配偶者が多く相続したことにして申告し、実際は別の相続人の財産にしているという不正も時々見受けられてしまいます。そうしたことを発見するために、遺産がきちんと遺産分割協議書の通りに分けられているのかも確認されます。

税務調査のその後

上記のように税務調査が行われたその後なのですが、過少申告や名義預金などの怪しい点が見つけられた場合、さらに裏付け調査が行われ、確定されれば1〜2ヶ月ほどで修正申告の案内がきます。その際に財産漏れを指摘されると「過少申告加算税」が課されることになります。また、もし悪質な隠蔽などが有った場合には更に重いペナルティが付く「重加算税」が課されます。
なお、今までは税務調査の連絡段階で過少申告が見つかった場合、税務署の調査官が実際に来る実地調査前の修正申告であれば、追加納税と延滞税のみの支払いで済ませられ、過少申告加算税は課されませんでした。平成29年1月1日以降に申告期限が到来する税目については税務署から税務調査の事前通知を受けた後に修正申告をしてもペナルティが掛かるようになり、過少申告加算税が課されるようになります。

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