小規模宅地の特例①〜住宅用の宅地の場合〜


一般家庭の相続では、「自宅」である不動産が財産額として大きな割合を占めるものになるでしょう。被相続人(故人)が居住していた自宅や、あるいは事業に用いていた店舗や事務所など宅地にかかる相続税の納税資金のために、住んでいる家を売り払って換金しなくてはならないような事態になれば、相続人の生活や事業が成り立ちません。
相続税制も、相続人である家族が生活の拠点となる自宅を売却しなくてはならないような事態にはならないように手当がされており、一定の条件を満たした宅地(自宅が建っている土地)の相続税の計算時には、相続税を計算する財産の評価額を50%から最大で80%減額できることになっており、この減額ルールを「小規模宅地等の特例」と言います。
例えば、100坪(330㎡)までの自宅土地について、配偶者、同居親族(主に同居している子ども)、別居であっても相続開始前3年以上持ち家がなく賃貸物件で生活している子ども(いわゆる「家なき子特例」)などが、遺産分割により自宅土地を引き継いで取得した場合は、80%減額になります。自宅が都心部で路線価が30~50万円ほどの住宅街で100~200㎡の自宅があると土地の相続税評価は3000万円~1億円になりますが、その20%の評価になるということは、かなり大きな減額になることが分かると思います。

今回は特に居住用の宅地の場合を中心に、制度の概要を見ていきましょう。
居住用小規模宅地等の特例は要件が同居か同居でないか、生計が一であるかどうかなど、複雑ですので、ご自身の状況が相続時に「小規模宅地等の特例」を使えるのかの確認は、きちんと税理士等に確認しましょう。

小規模宅地の特例の制度概要

小規模宅地の特例は上述のように、一定の要件を満たす宅地の相続の際に、その評価額を減額できる制度です。ここでは、どのような条件の宅地が対象となるのか、また減額の計算などを確認します。

対象宅地の種類

小規模宅地の特例の対象となる宅地ですが、これは自宅として用いる「特定居住用宅地」と事業に用いる「特定事業用宅地」に大別されます。それぞれ、被相続人あるいは被相続人と生計を共にする人が利用していたものでなければなりません。そのため、更地のまま置いてあった土地には特例の適用ができなくなります。

ここで言う「事業」には小規模アパートの経営などの事業的規模に至らない不動産賃貸業も含まれ、小規模宅地の特例の恩恵にあずかることが出来ます。

誰が利用出来る制度か?

この制度の利用は、法定相続人であるかどうかは問われません。遺贈によって宅地を取得(遺言により相続財産の取得)した法定相続人でない親族でも利用が可能です。親族の範囲は、六親等内の血族・三親等内の姻族までのため、兄弟、甥・姪、配偶者の親子といった関係は十分に親族の範囲に含まれます。

ただし、居住や事業の継続のために小規模宅地の特例制度は存在するため、宅地を取得した人は少なくとも相続税の申告期限までは用途通り活用する必要があるなど、取得者ごとの要件があるので注意しましょう。要件の詳細は後述します。

減額の規模

減額される規模は居住用宅地と事業用宅地で異なります。
特定居住用宅地の場合は330㎡までの土地が評価時に80%減額されます。

小規模宅地の特例を利用出来る人(特定居住用宅地)

制度を利用出来る人の詳細や取得時の要件を見てみましょう。
下記の場合は要件さえ満たせば330㎡までの部分に対して、80%の評価減を受けられます。

配偶者が相続をする場合

生前被相続人が居住用に用いていた宅地を配偶者が相続する場合、取得時の要件などなく無条件で小規模宅地の特例の適用が可能です。
また、被相続人が居住していた以外の宅地でも、生前に生計を共にしていた親族が居住用に用いていた宅地を相続した場合であれば、小規模宅地の特例の適用が可能です。これは例えば子供が親の土地に家を建て住んでいたような場合です。ただし、生計を共有している必要があるので、片方からもう一方への生活費の提供実績などがあったかどうかが重要になります。(生計が一が別かの判定の詳細は別の記事で解説したいと思います)

同居親族

被相続人が同居していた親族が対象となる宅地を相続した場合も特例の適用対象です。ただし、この場合は配偶者と異なって無条件ではなく、相続税の申告期限まで居住と所有を続けていた場合に限ります。
例えば同居をしていた子が親の土地を引き継ぐ場合などがこれにあたります。

別居親族(3年借家住まい)

被相続人に配偶者や同居していた法定相続人がいない場合に限り、被相続人が居住していた土地を別居している親族が相続した場合も特例の対象となります。持ち家を持たない子どもなどが対象になるため、「家なき子」特例とも呼ばれています。
ただし、この場合はその他の要件も厳しく、まず相続の開始までに自分、もしくは配偶者の持ち家に居住したことのある人は特例の適用を受けられません。また相続税の申告までの間は、その土地を売却してはいけません。
例えば、別居していて既に配偶者がいない親の自宅の土地を子供が相続する場合などに適用されます。

生計を共にしていた親族

被相続人が居住していたわけではないけれども、被相続人が所有し被相続人と生計を共有していた親族が居住していた土地を、その居住していた親族が相続する場合も特例の適用対象です。
ただし、ここでも生計を共有していたとう証拠として、生活費を渡していた実績があったかどうかが重要になります。

以上、住宅用の宅地に関する小規模宅地の特例の概要をお届けしました。なお、下記は国税庁のホームページより引用した、小規模宅地の特例を受けられるかどうかを分ける要件の表になります。ご参照ください。

区分 特例の適用要件
取得者 取得者等ごとの要件
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 被相続人の配偶者 「取得者ごとの要件」はありません。
被相続人と同居していた親族 相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人
被相続人と同居して
いない親族
①から③の全てに該当する場合で、かつ、次の丸4及び丸5の要件を満たす人

①相続開始の時において、被相続人若しくは相続人が日本国内に住所を有していること、又は、相続人が日本国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること
②被相続人に配偶者がいないこと
③被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと
④相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
⑤その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 被相続人の配偶者 「取得者ごとの要件」はありません。
被相続人と生計を一にしていた親族 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人

実際に相続税申告を行う際には例えば二世帯住宅の場合の規定や、被相続人が老人ホームへ入居していた場合など様々な規定が影響してきます。それらについては他の記事にて情報提供をしていきます。
このように実際に制度を活用できるかはルールが複雑ですので、ご自身の適用可否を正確に把握したい際には専門家へ相談をした方が良いでしょう。

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