孫への贈与を自己信託で行うメリットとは?


数世代にわたる相続に係る資産管理を考えるには、子どもや、その先の孫にまでどのように資産を残していくかを考えていくことになります。
誰しも子供や孫のことはとても大切に感じますし、出来れば財産を遺してあげたいと思います。また、子供の場合は距離が近すぎるために時に喧嘩をしてしまったり、関係が不仲になってしまったりということもありますが、孫に対しては適度な距離感を保ちやすいのでかなり多くの方は無条件に純粋な愛情を抱いているようです。
(なお生物学的には女性に比べて男性の方が子供より孫へ愛情をより感じやすいと言われています。)

ただ、愛する子や孫に財産を遺そうと思っても、「子孫に美田を遺さず」という諺にあるように、その遺し方は難しいと言えるでしょう。特に相続税などを回避しようと生前のうちに暦年贈与を行う場合がありますが、小さいうちから子どもや孫に大金を渡す行為が相手にとって本当にためになるかはわかりません。学費や生活のための資金として渡したつもりでも遊興費として消えてしまう場合もあります。
贈与した親側が資金を管理していると贈与の成立をしていないため税務署に生前贈与が否認される可能性もあります。
そこで今子や孫に対する適切なお金の遺し方、渡し方として信託の仕組みを活用することに注目が集まっています。
他の方法とも比較しながら、どのような仕組みなのかを見ていきましょう。

一般的な方法の問題点

通常の贈与や相続の場合

通常の贈与や相続で子や孫に財産を渡したり遺したりする場合を考えてみましょう。
1つ目の問題が金額によっては贈与税や相続税の対象となることです。近年は毎年の贈与金額を抑えて、適用される税率を下げる暦年贈与による節税すら税務署は目を光らせており、適切に行わなければ贈与が適切に成立しておらず相続財産(名義預金等)と扱われてしまう可能性があります。

【贈与の成立要件についての解説記事はこちら】
贈与を使った相続税対策の注意点

また、税金の問題を無視したとしても、一度贈与した財産は受け取った相手のものになりますので、子や孫が自分の望むようにその財産を活用してくれるとは限りません。分不相応な遊びを覚えてしまい、かえって身を持ち崩していわゆる放蕩息子のようになってしまうということも現実に見られることです。

教育資金一括贈与の場合

上記のような税金や使途の問題を解決する方法の1つとして、教育資金の一括贈与などを活用したいと思う人が増えてきています。これは信託銀行などを活用した贈与であり、信託銀行の特別口座にプールした教育資金(学費や留学に関する生活費など)の贈与に限り1500万円まで贈与税の対象となりません(ただし学習塾費などが非課税となるのは500万円まで)。この方法の場合、贈与資金自体は一括で動きますが、子や孫は教育資金の使用の都度や30歳になるまで自由にお金を引き下ろすことができません。教育費の支出があったときのみその領収書を銀行に提示することでその分のお金を引き下ろすことができる仕組みです。

【教育資金一括贈与の解説記事はこちら】
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ただこの方法にも問題点があり、子や孫が30歳となる時点で口座に残金がある場合はそれらは贈与税の対象なって課税されてしまいます。
また使途が教育資金に限定はされますが、一度に贈与を受けるためそれほどありがたみが続かず、継続的に勉学に励むモチベーションになるかは微妙です。

自己信託の活用

そこで教育資金の渡し方として新たに注目が集まっているのが、自己信託を活用した仕組みです。この方法であれば、ある程度の節税を実現させた上で子や孫のやる気を保たせるようなお金の渡し方ができます。祖父が孫に対して贈与する場合を想定し、どのような仕組みか見てみましょう。

お金に色をつけられる自己信託の仕組み

信託というのは契約により委託者が第三者に財産を「託す」もので、財産の管理・運用を預かる第三者がいます(受託者)。また、財産上の利益や権利を受け取る人を定めます(受益者)。委託者・受託者・受益者の三者の関係により成り立ちます。(「相続問題の解決に有効な信託を理解する(前編)」参照)

自己信託とは自分の財産を一定の目的のもと「自分を受託者として」信託する仕組みです。自己信託にすると、その財産は自分が管理可能ですが、自分で定めた目的以外には使えない財産となるのです。
なお信託の特性として、委託財産・受託財産ともに破産時でも差し押さえの対象とできなくなります。その分その利用には厳しい制約が伴いますが、確実に財産を遺す方法としても活用できます。

柔軟に設定できる渡し方

そして当初設定する目的に祖父と孫の両名を「受益者」として設定し、「受託者(この場合は祖父の本人)の判断により、例えば、孫の学業成績が一定の基準をクリアし、素行にも問題が無い場合は学費として資金を給付する」というような財産の目的を定めます。
このような目的が定められますと、孫は財産を受け取る権利を得られるのですが、そのためには常に一定の成績を維持する必要があるので、勉強を頑張るインセンティブになるのです。(教育上の意義や成績に対してお金をインセンティブとすることの是非は考えないといけませんが、ここでは仕組み上の説明と思ってご理解下さい。)

自己信託による給付金額を「祖父が負担する扶養義務の範囲内とする」としておき、そのルールを守る範囲においては、お金の受け渡しは課税の対象になりません。扶養義務者の生活費の受け渡しは贈与税の対象にはなりません。例えば孫が私立の医学部に入って年間500万円の授業料が必要だからこの仕組みでお金を渡すとしても、贈与税(通常なら約50万円)の対象となりません。もともと扶養義務者が学費や生活費の面倒を見ることは贈与税の対象とならないからです(両親や祖父母から学費をもらったという人で、その贈与税を支払ったという人はいないはずです)。

もっとも、生活費の範囲内であれば、財産をその都度渡せばよく、子や孫に言い聞かせておけば経済効果は事実上同じとも言えますが、自己信託した財産は法的にはその人のものではなくなるので破産時にも守られるという点が大きな特徴とも言えます。

子や孫へのお金の渡し方や教育に悩んでいる人であれば、このような仕組みがあること、1つの方法として知っておき検討する価値はあるでしょう。

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