2017年1月より対象者拡大、個人でも節税可能な個人型確定拠出年金(iDeCo)とは?


2016年5月24日に成立した「確定拠出年金法等の改正案」が、 2017年1月から正式に施行されます。今回の法改正では個人型確定拠出年金(愛称「iDeCo」、略称で「個人型DC」とも呼ばれます)の加入対象者の大幅な拡大などが行われますが、改正により従来は個人型確定拠出年金での資産運用ができなかった公務員や主婦(主夫)の方も含め加入できるようになりました。
個人型確定拠出年金での資産運用は税制面での優遇処置が大きいため、加入対象者の方には是非活用いただくと有利な制度になっていますし、今回の対象者拡大はとても注目が集まっています。

野村総合研究所が行ったアンケートより試算すれば、1000万人以上の人が加入に関心を示しており、もし仮に関心を持つ人が全て加入すれば年間の拠出額が1兆円増加するとも言われています。そのため、各金融機関もこのマーケットを取りこもうとサービスの拡充に励んでいます。

今回の記事では、個人型確定拠出年金の概要やその対象者拡大の影響、また金融機関によるサービス拡充などについての概要をお届けします。

確定拠出年金の概要と節税効果

個人型確定拠出年金は2016年9月に公募の愛称募集により「iDeCo」という愛称が決まりました。これは個人型確定拠出年金の英語表記である 「i」ndividual-type 「De」fined 「Co」ntribution pension plan より採用されました。個人を意味する「i」と、元々、確定拠出(Defined Contribution)の略称として使われていた「DC」を強調した形と言えるでしょう。
本稿でも個人型確定拠出年金のことを以後iDeCoと表記します。

iDeCoの制度内容ですが、そもそも日本の年金制度は基礎年金=国民年金を1階部分とし、企業に勤務する人などはその上に厚生年金などの2階部分が乗っかります。そして、その上に企業によっては企業年金などの3階部分が乗るのですが、iDeCoは同じように3階部分として上乗せして給付を受けられる私的年金の一種となります。

企業年金においても「(企業型)確定拠出年金」の導入が増加しています。「確定拠出年金」というのは、確定拠出とは給付金額(将来もらえる年金の額)はお金を出した時に決まっていないけれども、現在年金に回す拠出金額は決まっており、拠出したお金を運用しその利回りによって将来の給付額が変わる年金という意味です。年金というのは、現在拠出したお金が何十年後かの年金受給時にもらうことになるのですが、その間の運用成果に応じてもらえるお金が変わるのが確定拠出年金ということです。つまり、年金をもらう個人が指定した運用方法により、将来もらえる年金額が変わってくる、ということになります。
個人型確定拠出年金はその個人版になります。
企業年金の場合には確定給付型というのがあり、将来お金をもらう金額が決まっている年金制度で、従前の企業年金制度の主流です。(企業型)確定拠出年金の導入背景には、企業が不確実な年金運用のリスクを抱える財務上の課題解消のためでもあります。

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今、iDeCoには大きな注目が集まっているのですが、その理由は「拠出時」「運用時」「受取時」でiDeCoは大きく税制優遇されているからです。

拠出時

iDeCoでの掛け金は全額所得控除の対象となるため、その分税計算時の所得が減少し所得税の節税が可能となります。ただし、拠出金額は無制限というわけではなく、加入者の状況によって月額の上限金額が設けられています。
詳しくは後述しますが、掛け金の上限は、大まかに、自営業者では月額6.8万円(年額81.6万円)、企業年金のない会社に勤務する会社員や専業主婦(第3号被保険者)では月額2.3万円(年額81.6万円)、会社に企業型確定拠出年金制度がありマッチング拠出の導入がなく企業型確定拠出年金の事業主掛け金が月額3.5万円(年間40万円)以下の場合の会社員では月額2万円(年額24万円)、公務員や企業型確定給付年金の会社勤務の会社員等では月額1.2万円(年額14.4万円)となります。

これらの年額の拠出額の全額を所得控除できることになります。
なお、もし例えば課税所得1000万円の場合(所得税・住民税で税率43.693%と想定)、iDeCoに加入して上限額満額を拠出した場合、自営業者は35.6万円、企業年金のない会社員が12万円、公務員の方が6.2万円程が年間での節税額になります(掛け金×税率が節税額と試算できます)。年収が1,800万円超~4,000万円以下の人(所得税・住民税で税率50.840%と想定)では、自営業者は41.4万円、企業年金のない会社員が14.0円、公務員の方が7.3万円程が年間での節税額になります。通常の資産運用は所得税支払後の手取り額で行うことになりますが、実質的には節税額を上乗せした金額で長期の資産運用を行えるということになります。

運用時

本来金融商品の運用益には年間20.315%の所得税が分離課税されますが、iDeCoの場合、少額投資非課税制度(NISA)と同様に運用益への課税がありません。これにより受取時までの運用効率が向上します。

受取時

拠出時の所得控除や運用益への非課税によって課税コストが少ないiDeCoですが、受け取り時には課税が発生します。受け取り方法は、退職金のようにまとめて受け取るか(一時金受け取り)、年金のように定期的に受け取るかが選べますが、それぞれ「退職所得控除」もしくは「公的年金控除」の対象となるため、そのまま所得税が課税される場合に比較して課税額は抑えられます。

※「退職所得控除」の控除額の説明は以下の通りです。確定拠出年金とは別に、勤務先からの退職一時金がある場合は本稿では説明を省略しますが税額が変わりますので注意しましょう。
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このようにメリットの大きいiDeCoですが、運用時には注意点も存在します。
iDeCoは金融機関で専用口座を作り、そこに入金して運用を行うのですが、原則として60歳になるまでその口座からお金を引き出すことができません。個人型確定拠出年金制度は、あくまで長期的な老後資金の資産形成を自助努力により行うことを助ける制度ということです。

2017年1月からの法改正による変化

上記のように節税効果が大きく、主に老後資金の確保を目的とした資産運用にお勧めのiDeCoですが、法改正があり2017年1月から制度概要が少し変わりました。主な変更点は加入対象者の拡大と小規模事業主掛金納付制度の創設などになります。

対象者の拡大

2017年1月からは、従来ではiDeCoに加入出来なかった専業主婦や公務員の方も加入が可能となりました。これまでiDeCoの対象は約4000万人だったのですが、今回の対象拡大によって約6700万人と現役世代のほぼ全員が対象となります。また野村総合研究所が新たな加入対象者に行ったアンケート調査では、iDeCoの節税メリットを提示された場合、約4割の方が加入に前向きな回答をしており、1000万人以上の潜在需要の拡大が起こるものと予想されています。

なお、新制度による加入対象者とその拠出上限金額は以下の通りです。

 

対象者 拠出上限額
第1号保険者(自営業者) 月額6.8万円(年額81.6万円)
第2号被保険者
(会社員・公務員)
会社に企業年金がない会社員 月額2.3万円(年額27.6万円)
企業型DCに加入している会社員 月額2万円(年額24万円)
DBと企業型DCに加入している会社員 月額1.2万円(年額14.4万円)
DBのみに加入している会社員
公務員
第3号保険者(専業主婦・専業主夫) 月額2.3万円(年額27.6万円)

 

またそれぞれの上限額を拠出した場合の拠出時の節税金額は下記のようになります。

所得控除による年間の税制メリット(イメージ)
課税所得 税率
(所得税・住民税)
月額掛け金
68,000円 23,000円 20,000円 12,000円
年間節税金額(千円未満切り捨て)
195万円以下 15.105% 12.3万円 4.1万円 3.6万円 2.1万円
195万円超~330万円以下 20.210% 16.4万円 5.5万円 4.8万円 2.9万円
330万円超~695万円以下 30.420% 24.8万円 8.3万円 7.3万円 4.3万円
695万円超~900万円以下 33.483% 27.3万円 9.2万円 8.0万円 4.8万円
900万円超~1,800万円以下 43.693% 35.6万円 12.0万円 10.4万円 6.2万円
1,800万円超~4,000万円以下 50.840% 41.4万円 14.0万円 12.2万円 7.3万円
4,000万円超 55.945% 45.6万円 15.4万円 13.4万円 8.0万円

出所:大和証券(一部加筆)

小規模事業主掛金納付制度の創設

iDeCoの今回の法改正によるもう一つ大きな変更は、小規模事業主掛金納付制度の創設です。これは従業員が100人以下の中小企業のみが対象となるのですが、事業主がiDeCoに加入している従業員に対して追加で掛け金を拠出する場合、その掛け金は従業員の所得扱いにならず、さらに事業主側も損金算入が可能となります。
これは事実上の企業型確定拠出年金とも言えるでしょう。福利厚生としての企業年金制度を整えやすくする狙いがあると言われています。

実際の加入方法拡充する各金融機関のサービス

iDeCoに加入をするためには、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関で専用の口座を作成しなければなりません。そして個人が作成できる口座は1つまでと決まっていますのでなるべく有利な条件で口座開設ができる金融機関を選ぶと良いでしょう。
特に資産運用で日々の運用コストをどれだけ抑えられるかは最終的なパフォーマンスにも影響を与えてしまいます。月額の掛け金が2万3千円であったとしても、手数料が月額500円だった場合実際の掛け金は2万2500円になってしまいます。たった500円と思うかもしれませんが、拠出額の約2.2%であり、同じだけの運用利回りを維持する大変さを思えば手数料は少しでも安い方が良いのです。

なお1人で1口座しか作れないということもあって、金融機関はiDeCoの口座獲得数を競い合っており、様々な優遇措置を設けています。自分の利用状況とあわせて、最も有利なところを選ぶと良いでしょう。

りそな銀行 手数料下げに加え、土日や祝日でも相談できる拠点を整備
三井住友銀行 メガ銀で唯一、全国にある本支店の窓口で加入や変更手続き
野村證券 手数料を最大4割引き下げ
楽天証券 講座開設で1年目の手数料が無料。残高10万円以上なら2年目以降も
日本生命 宿泊施設やスポーツクラブを優待価格で使える福利厚生サービス
第一生命 資産残高が150万円以上だと管理手数料が無料に

2016年12月20日の日経新聞朝刊より引用

料金の引き下げ以外でも投資家の使いやすさを重視し付加価値をつけていこうという動きも広がっており、例えば三菱東京UFJ銀行では運用商品を絞ってコストの少ないファンドのみで運用できるようなコースを設けましたし、みずほ銀行ではiDeCo様に国内外の指数に連動するインデックス投信の提供を開始します。
また上記の様な手数料や金融商品の工夫以外にも、例えば日本生命では旅行やショッピングの割引が受けられる福利厚生サービスを設けて差別化を図ろうとしています。

年金への不安が人がる中、今後もiDeCoをめぐる動きは活性化していくことでしょう。
相続tokyoでも、引き続き個人投資家の資産形成に有益な情報提供をしてまいりたいと思います。

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