今年の中の相続時精算課税の利用が有利か?広大地の評価方法の変更(平成29年度税制改正のまとめ③)


2016年12月8日に発表された平成29年税制改正にて、相続税制に関する変更も何点か行われ、相続tokyoでもいくつかの解説をしてきました。平成29年度税制改正の相続税改正関係は、特に租税回避的な行為を抑制する狙いがあると見受けられる改正が目立ったのが特長です。

例えば、以前の記事で、被相続人相続人の両者が5年以上日本お非居住者であった場合、国外財産に関しては当該国の相続税制のみが適用され日本の相続税制の対象外となる通称5年ルールが10年へ変更される可能性について触れましたが、平成29年度税制改正により2017年4月から5年ルールという期間から10年ルールに変更になります。計画的な海外移住による生前贈与による資産課税回避に対する封殺的な動きと言えるでしょう。

その他にも非上場株の評価方法の変更や、相続税の物納制度の変更などもあったのですが、今回の記事では広大地に関する評価方法の見直しについてお伝えします。
相続税における不動産評価において、広大地とは500㎡以上(三大都市圏以外は1000㎡以上)の土地のことであり、広大地は利用が難しい場合が多いため、相続税評価の際に評価減を行える特例があります。ただ広大地の状況によっては市場価値が大きく下がることがない場合も多いため今回の改正が行われました。各々の土地により、相続税の計算において「広大地にあたるかどうか」は税理士あるいは税理士と課税当局間によっても見解が分かれることも多い論点になります。

これまでの評価方法や今回の改正内容などを見ていきましょう。

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これまでの広大地の評価方法

冒頭でもお伝えしましたが、広大地とは三大都市圏であれば500㎡以上、それ以外の地域であれば1000㎡以上の広大な土地で、かつ以下のような要件に該当するものを指します。

・その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく面積が広大であること
・中高層集合住宅の敷地に適さない
・大規模工場用地に該当しない
・マンション適地でないこと(戸建分譲が最有効使用である)
・開発行為を行う場合、道路などの公共公益施設用地の負担が必要
など

広大地判定における三大都市圏は首都圏、近畿圏、中部圏の一定区域ですが、首都圏とは東京都の23区及び埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県及び山梨県の区域が当たります。(首都圏整備法第2条及び同施行令第1条より)

広大地について国税庁では以下のように説明しています。

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいいます。ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。

広大地の評価

具体的に説明すると、上記のような要件を満たす土地を実際に開発し不動産活用する場合、集合住宅や工場として活用するわけではなく、住宅用地にするにせよ商業用地にするとしても、土地を分割し、開発道路なども敷かなければなりません。その分利用できる土地の減少や各種負担が発生するため、広大地は相続の際に評価額がその他の土地よりも安くなるような規定があるのです。

そもそも一般的な土地の相続税評価は、土地ごとに設定された路線価に地積(土地面積)を掛け合わせて求めます。一方、広大地はそこからさらに広大地補正率を掛け合わせた金額が土地の評価額となるのです。(この「広大地補正率」が平成29年度税制改正のポイントとなります)

【広大地の評価額】
路線価×地積×広大地補正率

【広大地補正率】
0.6-0.05×地積÷1,000㎡

【広大地補正率計算例】
500㎡ 0.575
1000㎡ 0.55
2000㎡ 0.50
3000㎡ 0.45
4000㎡ 0.40
5000㎡ 0.35
(※5000㎡以上の広大地は全て0.35)

改正にいたる背景

上記の計算は今年、平成29年度税制改正で変更される可能性が高いため、2017年末までしか使えない予定です。

そもそも評価方法が変更される背景として、現状では広大地の定義があいまいという問題があります。面積の規定はともかくとして、その他の要件、例えば、その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく面積が広大であるのかどうか、中高層集合住宅の敷地に適するかどうかなど、個別判断が難しいものです。そのため実際は市場価格が広大な土地だからといって安くなっていないのに、相続税の申告時は広大地と申告する例も多く、税務署と納税者の間で争いになることが起こります。
また、同じ面積の広大地でも、正方形に近い綺麗な形の土地と、極端に歪曲した土地では市場価格が異なりますが、現状の評価方法では相続税評価額は同じになってしまいます。

平成29年度税制改正大綱における改正案

上記のような問題を解決するために、今回の税制改正で広大地の評価方法にも変更が加えられることとなりました。

広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化する。

平成 29 年度税制改正の大綱(平成28年12月22日閣議決定)

つまり現在のように路線価×地積×広大地補正率という一律の評価方法ではなく、各土地の面積や形状などの個性を踏まえて評価する方法に見直すということです。またあいまいさの残る広大地の認定基準も明確化される可能性が高いでしょう。

なお、現在具体的な計算方法はまだ開示されていませんが、自由民主党税制調査会資料によると、下記のような計算式になる可能性が高いようです。

評価額 = 路線価 × 地積 × 補正率(※1)× 規模格差補正率(※2)
(※1)奥行距離や不整形地を考慮した補正率
(※2)地積を考慮した補正率

この広大地の改正は、平成30年1月1日以後の相続等により取得した土地について適用されます。平成29年中の相続等は従前の補正率で計算します。

平成29年度税制改正大綱による改正の趣旨は、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化であるのですが、上記のような評価方法の見直しの結果、全体としては広大地の評価額は上がってしまう可能性は考えられます。近年の国の課税トレンドは法人税の減税と消費税の増税、そして富裕層課税の強化にあると言われいるからです。
特に整形地である広大地については、補正率による減額が少なくなり、相当評価額が上がる可能性が高いでしょう。

広大地を保有する方は、改正の動向や自分の保有不動産の状況ではどのようになるのかを検討し、必要によっては改正前の広大地補正率による評価が適用できるうちに、例えば贈与時の評価で確定できる相続時精算課税制度による贈与などの方法を考慮し、生前対策を行った方が有利になる場合がありそうです。


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