上昇する地価と減少する取引量には注意が必要?2016年第4半期不動産指数


個別の不動産の取引価格は当事者同士の合意によって個別案件ごとに決まるため、上場株式や上場投資信託のように明確な取引価格が存在するわけではありません。しかしそれでは実務上の様々な不便が生じるため、国などの公共機関が、公示地価や路線価など、目的に応じて不動産価格の参考となるような指標を公表しています。相続税では固定資産税評価(建物や一部の土地)や路線価(土地)という価額が用いられます。
不動産価格指数はそうした公共機関が作成するデータの1つで、個別不動産の価格ではありませんが、不動産市場全体の動向を数値化したものです。IMF(国際通貨基金)等が策定する国際指針に基づいて、国土交通省が調査・発表を行っています。

最新のものは2017年3月29日に、平成28年12月(第4四半期分)の不動産価格指数が発表されており、全体では17四半期連続の上昇となりました。今回は不動産価格指数について最新の発表資料のまとめなどをお送りします。

不動産価格指数とは?

不動産価格指数の調査測定が導入された背景は、2008年に起きたリーマンショック以降の一連の金融危機に遡ります。金融危機の結果、不動産価格の動向を適切なタイミングで的確に把握することの必要性が各国の政府の間で高まりました。
日本もその例に洩れず、2012年8月にIMF等が作成した国際指針に基づいて、不動産価格指数(住宅)として住宅用不動産の価格動向の指数化を試験的に開始します。そして2015年3月には本格運用するに至りました。
住宅用不動産価格の指数化のために始まった不動産価格指数ですが、「不動産価格指数(住宅・商業用不動産)の整備に関する研究会」が開催され、そこでの検討を踏まえて現在では「不動産価格指数(商業用不動産)」の試験運用が開始されています。
なお住宅、商業用不動産ともに2010年の平均を100とし、そこからどれだけ変動したかを表しています(「110」の場合、2010年の平均から10%上昇)。

国土交通省が行っている事業ですので、ここで得られたデータは、一義的には国の経済政策や財政政策、金融政策などに役立てられますが、不動産投資の参考指標等としても利用価値があると言えるでしょう

なお具体的なデータの作成方法ですが、国土交通省では、不動産の買い主に対してアンケート調査を行い、取引価格等について調べています。その上で個人情報を秘匿化し、不動産取引価格情報として年間約 30 万件をホームページ上で提供しています。
このデータに、商業用不動産などの場合はJ-REIT による信託受益権取引のデータも反映させて不動産価格指数は作成されるのです。

2016年第4四半期(16年10~12月)の公表結果

ここから、2016年第4四半期(16年10~12月)の不動産価格指数の公表結果を見ていきましょう。この期に限りませんが、近年は商業用不動産の上昇が大きくなっています。

住宅

全国の住宅総合指数は106.3となり、前年同月に比較して+1.7%の上昇です。その内容を詳しく見ますと住宅地は同+0.1%の上昇、戸建住宅は同+0.2%の上昇、そしてマンションは同+3.4%の上昇という結果になりました。上昇分のほとんどがマンションの上昇のためと言えるでしょう。
基本的にマンションは郊外よりも街の中心部、また首都圏や関西圏などの方が多くなるため、都会の地域ほど地価が上昇しているとも言えそうです。

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出典:不動産価格指数(平成28年12月・第4四半期分)の公表(国土交通省)

商業用不動産

全国の商業用不動産総合指数は113.9となり、これは対前年同期比で+2.0%と大きく上昇しました。これで2012年の第4四半期より17期連続でのプラスです。
要因としては公示地価の上昇要因と重なりますが、外国人観光客の増加などによるホテル需要の活性化や、繁華街の活性化などの影響が大きいと言われています。
特に用途別では、店舗が124.2(同2.2%上昇)、オフィスが125.0(同5.4%上昇)、倉庫が106.1(同9.8%上昇)、工場が96.5(同4.6%上昇)、マンション・アパート(1棟)が127.8(同2.4%上昇)となっています。これらを総合した建物付土地総合は121.8(同3.2%上昇)と19期連続でのプラスとなりました。
ただし、商業地は95.7(同2.7%下落)、工業地は99.3(同0.4%上昇)です。そのためこれらを総合した土地総合は97.2(同1.4%下落)で、6期ぶりのマイナスとなりました。

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出典:不動産価格指数(平成28年12月・第4四半期分)の公表(国土交通省)

東京都に限定すると、2016年の商業用不動産総合指数は133.0となり、対前年比+9.3%の上昇を遂げています。また愛知県の商業用不動産総合指数は 110.9と同+5.3%の上昇を遂げ、大阪府の商業用不動産総合指数は115.7と同+5.0%の上昇です。商業用不動産は三大都市圏で特に上昇していると言えるでしょう。

不動産取引件数減少の不安

不動産指数では、不動産の価格だけではなくその取引量や取引面積も統計の対象となっています。

今回発表された2016年12月分のデータで全国の集合住宅の取引件数を見ますと、マンション(区分所有)が15,803 件と対前年同月比は+8.8%の上昇で5ヶ月連続のプラスです。またマンション・アパート(一棟)は 3,198件と対前年同月比は+2.8%の上昇となり、こちらも2ヶ月連続のプラスとなりました。
一方、戸建住宅は 15,571件と対前年同月比は-3.6%の下落、オフィスは 772件、対前年同月比は-0.3%の下落、倉庫は354 件、対前年同月比は-1.9%の下落、工場は 239 件、対前年同月 比-7.4%の下落となっており、いずれも2ヶ月ぶりのマイナスとっています。また店舗も価格は上がっているものの取引量自体は777 件と対前年同月比は-2.3%の下落となり、5ヶ月ぶりのマイナスとなりました。

なお、2016年は世界的に不動産取引件数が減少傾向にあった年でした。例えばEU離脱などの是非を取る国民投票があったり、そこで離脱が採択されたりして大きな混乱が生じた英国では特に大きく不動産の取引件数が減少しています。その他にも米国などでも年の中頃までは減少傾向にありました。
(ただ2016年は11月の米大統領選でトランプ新大統領の当選が確定して以降、トランプ氏の経済政策への期待から市場のトレンドが大きく変わりましたので1年を通して見ると異なるかもしれません。)

日本でも日銀によるマイナス金利政策が採られているように、現在は世界的に低金利で運用難が続いています。そうした状況の中で投資対象としての不動産に注目が集まり、実際に資金が動いていることが不動産価格の上昇要因の1つでもあるでしょう。しかし不動産価格の上昇はある一定水準まで進むと、取引量の減少を引き起こし、その後は不動産価格が下落する場合も多いと言われています。
こうしたことも踏まえて見ると、不動産価格の上昇と取引量の減少という今回の不動産価格指数の結果には注意をした方が良いのかもしれません。

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