著名人も絶賛、話題の人気書籍「サピエンス全史」(上巻)


2016年に出版された、ユヴァル・ノア・ハラリ氏著の「サピエンス全史」(上下巻)という本が注目を集めています。この本は現生人類=サピエンスという存在を、ネアンデルタール人など他のホモ属と比較しつつその歴史を俯瞰し、今後の未来を予測しようという本です。

今回の記事でも紹介しますが、現生人類がいかに他のホモ属と異なるのか、また、その違いの結果、我々はどのよう歴史を歩むことになったのかという考察が非常に面白く、様々な著名人がコメントを発しています。
例えばオバマ大統領は2016年8月、夏休みの間にこの本を読み「網羅的で濃密な内容で、面白く、挑発的だった」とCNNのインタビューで激賞しています。また、ビジネス界からはマイクロソフトのビル・ゲイツ氏やフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏も推薦しています。
こうした背景もあって、日本でも2016年秋の出版以降、話題の本となりました。

今回の記事では、このサピエンス全史上巻の書評をお届けします。

著名人も絶賛、話題の人気書籍「サピエンス全史」(下巻)

上巻の目次

第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
第2章 虚構が協力を可能にした
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
第4章 史上最も危険な種

第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄を悲劇
第6章 神話による社会の拡大
第7章 書記体系の発明
第8章 想像上のヒエラルキーと差別

第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
第10章 最強の征服、貨幣
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

著書ユヴァル・ノア・ハラリ氏

まず、著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏について紹介します。

ユヴァル氏はエルサレムのヘブライ大学で教鞭を振るう歴史学者で、1976年の生まれです。オックスフォード大学で中世史や軍事史を専攻して博士号を取得という経歴の持ち主で、日本語訳はないものの、本書以外にも軍事史や中世騎士文化についての3冊の著書があります。

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本書のテーマ

もともとはアフリカで細々と暮らしていたはずの人類がなぜ、これほどまでに繁栄することができたのか、またその結果として我々はどこへ向かおうとしているのかというのがこの本の根底に流れているテーマです。

この問いに対して、それは人類の知的水準が他の動物やネアンデルタール人など他のヒト属に比較して、特別高かったからであると多くの人は思われるかもしれません。しかし、決してその様なわけではなく、例えばネアンデルタール人は、現生人類よりも脳を発達させた可能性があると言われています。
しかし現生人類だけが獲得、あるいは特に伸ばすことに成功した能力が存在し、それが虚構=フィクションを信じる能力です。ここでいう虚構とは、実在はしないが存在はしていると認識できるもので、例えば国家や貨幣制度、また神話や宗教なども虚構に含まれます。国家や貨幣制度に物理的実態はありませんが、強力に我々の生活を制約している存在です。

そして、ユヴァル氏は、目に見えない虚構を信じられるから人は集団で連帯し、類として強固な力を持って他のヒト属との競争に勝ち抜き、唯一の人類となって以降は歴史を発展させてきたのだと主張しています。
そして身につけた虚構を信じる能力は、その後農業や科学の発展に大きく貢献し、社会を変革し続けているというのです。

上巻の読みどころ

具体的な上巻の読みどころを見ていきましょう。

認知革命というコンセプト

サピエンス全史の本の中でも最も重要な言葉と言ってもいいかもしれない認知革命について語られた第1部です。ユヴァル氏は人類の歴史には3つの革命があったとしていますが、認知革命が第1の革命であり、人類が歴史というものを生み出せた理由こそが認知革命なのです。
それは7万年前から3万年前に起きた大きな変化でした。

当時すでに人類(現生人類)を含むヒト属は、世界中に散逸していましたが、我々ヒト属は、アフリカ大陸の片隅でひっそりと暮らす生き物でしかなかったのです。しかしこの時代に起きた認知革命によって、人類は大きな力を獲得し、徐々にその勢力圏を世界中へと広げていきます。
それに伴なって、他のヒト属は全て絶滅し、サピエンスのみが唯一のヒト属となるのです。
著者も、ネアンデルタール人など他のヒト属が勝手に絶えたのか、我々の祖先に滅ぼされたのかはわからないとしています。ただ、種族間の争いの形跡は0ではありませんし、我々の祖先の進出が現地の類人種の絶滅に繋がったのは確かです。
(若干、ネアンデルタール人をはじめとした一部の類人種とは交配があったようで、我々のDNAにその痕跡が残されています。)

そして、現生人類にこれほど大きな力をもたらした認知革命とは、虚構を信じる能力でした。これは目に見えないものを認知する能力です。
例えば人間以外の動物も言語能力は持っており、「川辺にライオンが近づいた、逃げろ!」というような号令をかけることは可能です。人間の言語能力が特別なのは、現在は見ても聞いてもいないことについても伝えられることです。例えば、「昨日ライオンに襲われたから、明日ライオンに襲われないようにあそこに近づくのはよそう」という会話を行うことができるのです。
こうしたことができるのも、当時起きた認知革命の賜物です。

この結果、我々サピエンスは集団で柔軟に協力をする能力を獲得しました。動物も集団で狩りをするなど協力は行いますが、人間の協力が凄いのは見えない人とも協力できることです。例えば認知革命以降に人類の遺跡からは、海を跨いだ長距離交易の痕跡が発見されています。こうしたことは、ネアンデルタール人の遺跡からは発見されていません。

この認識革命は、その後の農業革命や化学革命の根底にありますし、人類の歴史を統一へと向かわせます。また「歴史」という概念自体、認知革命なしには存在しなかったものです。

繁栄と不幸をもたらした農業革命

第2部は農業革命とそれがもたらしたものについての説明です。

農業革命とは何かというものについては、それほど説明は要らないでしょう。太古の人類は動物や魚介類の狩猟や、木の実やきのこなどの採集で生活を賄っていましたが、ある時から自ら田畑を耕す農耕を行います。
こうした農耕の結果、単位面積あたりから人類が獲得できるカロリーは大きく増大します。その結果として定住が可能となりましたし、人口も大きく増加しました。狩猟採集の暮らしでは絶えず移動しなければならないため、親の世話が必要な子供は何年かおきにしか産めなかったのです。しかし定住生活の中では、子供を連続して産み育てることが可能になりますし、労働力の確保という意味でそうするインセンティブも働きます。
結果として、農業革命以降、人類の人口は爆発的に増加しました。

サピエンス全史のユニークなのは、まずこのことを単純に良いこととは捉えてはないことです。なぜなら確かに人類は種族として発展しましたが、その代償に個人の暮らしは不幸になりました。

まず現代人の想像に反して、太古の狩猟採集民族の暮らしは豊かだったのです。まず摂取可能な栄養素のバリエーションが非常に豊富でした。様々な動植物を口にしていたのです。また労働(食料の獲得)に費やす時間は短いものでした。また栄養のバリエーションが豊富で、定住していないことから疫病リスクも低く、健康だったのです。身体も動物的に無理のない使い方をしていました。

ところが、それらの暮らしは農業を始めて一変します。まず摂取する栄養素のシ種類は、とても限定的になりました。そして食事を得るためには、今までよりも長い時間苦労して働かなければならなくなったのです。またその労働の中身も、人体の構造上負荷の大きいものであり、腰痛などの苦痛に悩まされるようになりました。また定住は疫病のリスクをあげ、単一作物の栽培は飢饉のリスクを押し上げます。
確かに人類は農業革命を経て拡大しましたが、多産多死と個人の苦痛を引き換えにしていたのです。

農業革命は他にも様々なものをもたらしました。より複雑な協働を人類に要求したので、その中で人類は社会や社会階層、また都市や書記、官僚機構などを発展させていったのです。

普遍的なものとしての貨幣

この本の第3部は上巻と下巻にまたがっており、化学革命の前に人類の未来への予言として、人類の統一をテーマにしています。その詳細は次回の記事に譲るとして、1つポイントあげるとか貨幣の存在でしょう。

貨幣は言うまでもなく認知革命の結果生まれた虚構の産物です。貨幣そのものは実在するものですが、それが交換や蓄財の機能を果たすのは、人がそれをそうだと認識しているからです。
貨幣の凄いところは、それがはじめのうちはローカルな共同体の中でのみ流通するものであっても、交易を通して次第に多くの共同体の中で通用するものへ育っていく(あるいは取って代わられていく)ことです。現在であれば国際的な主要通貨はドルを中心にユーロ・円・ポンド・元辺りにほぼ収束しています。
その結果としてアメリカに反旗をひるがえすようなウサマビンラディンのようなテロリストも、米ドル紙幣はありがたく使用するようになりました。
異なる所属の人間同士も繋げられることに、貨幣の強力な力があります。

貨幣の力が恐ろしいのは、異なる所属の人、見知らぬ隣人同士を繋げる反面、親しい人同士の絆も金に換算し、壊してしまう力を持つことです。
だからこそ人類は次回の記事で伝えるような宗教の存在を必要としているのかもしれません。

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