フランスの相続税制と課税対象者


フランスには平成27年段階で40,308人の邦人が在留しており、海外在留邦人数ではドイツについて第9位となっています。また在留人数は近年増加傾向にあると言ってよく、平成26年は前年比約18%、平成27年は前年比約5%と順調に在留邦人数が増加しています。

そんなフランスでの相続税の扱いや課税対象者、また万が一課税対象者となった場合にどの程度の課税がなされるのかなどを見ていきましょう。


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フランスの相続税の対象者

「相続税」と言っても国ごとに制度の概要が異なり、各国によって税制が異なるため日本とはまるで異なる制度なっている場合があります。例えば日本では遺産取得課税方式と採用しており、これは相続人のステータスを主な要因として相続税の課税対象者となるかならないかが決まる制度です。一方米国や英国は遺産課税方式を採用しており、被相続人のステータスによって相続税の課税対象となるかどうかが決まります。

フランスはドイツなどと同じく遺産取得課税方式を採用しており、被相続人と相続人両者のステータスを加味して相続税の課税対象となるか否かが判定されます。概要は、被相続人がフランス国内にドミザイル(住居)を有していた場合、国内外の財産全てが課税対象となります。
被相続人が国内にドミザイルを有していない場合は、相続人が現在フランス国内にドミザイルを有しており、さらに過去10年のうち6年はドミザイルを有していた場合のみ国内外すべての財産が課税対象、そうでない場合は国内財産のみ課税対象となります。
日本のように相続人、被相続人ともに10年以上国内に住居が無いという条件を満たさないと国外財産への課税が外れない日本よりは優しい相続税と言えるかもしれません。

フランスにおける相続税の概要

遺産課税方式か遺産取得課税方式かといった課税方式の他に相続税にはよくある分類が存在し、それが直接税の形をとっているか、それとも登記制度に伴う間接税の形を取っているかです。
フランスの相続税や贈与税は後者の形をとっており、相続や贈与による無償の財産移転に対して課税される登録税の1種という位置付けになっています。

なお、フランスでの相続税の導入は1703 年にまで遡ります。当時フランスは太陽王と呼ばれた名君ルイ 14 世の治世下にありました。世界中に植民地を獲得し、植民地を合わせるとフランスで太陽が登っていない時間帯がなくなったことから太陽王と呼ばれています。
そのように強大な君主であるルイ14世の勅命によって、死亡による財産移転(登記移転)に対して課税が行われるようになったのです。当初は直系相続の場合この税制から対象外となっていましたが、1790年の制度改正で正式に法的な枠組みとして相続税が整理される中で直系相続も対象に含まれるようになります。

ただそれでも導入当初の相続税は税率も低く、それほど重いものではなかったようです。状況が変わったのは20世紀に入り、植民地獲得競争の帰結として列強諸国館の軍事衝突が活発化し戦費調達の必要性や、共産主義思想の一般化による社会格差削減への機運が高まってからです。
1901年に被相続人との血族関係および取得遺産額の多寡に応じ、相続税率が累進税率で適用されるようになりました。

相続税率や税計算の流れ

フランスにおける相続税の計算の過程や基礎控除、及び税率などを見ていきましょう。まず、計算の過程は以下のようになります。

①相続及び、被相続人の死亡15年以内に行われた贈与によって相続人が取得した財産の価額を合計する
②当該合計額から一定の基礎控除額を控除し、課税価格を計算する
③ここで求められた課税価格に税率を乗ずる
④一定の税額控除額を控除した金額をもって相続税額の納付税額を計算する

基礎控除の金額

日本では基礎控除は被相続人の死亡1件の相続に対して「3000万円+(600万円×法定相続人人数)」と決まっています。しかし、フランスの相続税制ではドイツと同じく相続人と被相続人の続柄によって課税される金額に差をつけようという思想が強いため、基礎控除額も被相続人との身分関係によって変わります。

①直系の子孫、もしくは祖先には10万ユーロの控除
②兄弟姉妹間の相続には1万5932ユーロの控除
③甥及び姪には7967ユーロの控除
④相続人が障害者の場合、家族関係の有無を問わす15万9325ユーロの控除
⑤前述1~4のいずれにも該当しない場合は1594ユーロの控除

相続税の税率

相続税の税率も相続人と被相続人の関係性によって異なります。

対象 課税価格 税率
直系の祖先又は子孫 8,072EUR 未満 5%
8,072EUR 以上 12,109EUR 未満 10%
12,109EUR 以上 15,932EUR 未満 15%
15,932EUR 以上 552,324EUR 未満 20%
552,324EUR 以上 902,838EUR 未満 30%
902,838EUR 以上 1,805,677EUR 未満 40%
1,805,677EUR 以上 45%
兄弟姉妹 24,430EUR 未満 35%
24,430EUR 以上 45%
4 親等以内の血族 一律 55%
5 親等以上の血族及び親族以外 一律 60%

 
こうしてみると、最高税率は60%であり、相続税はかなり高めと言えるでしょう。ただ直系存続からの相続税率は最高でも45%であり日本よりも少なめになります。

課税価格計算の特例

日本にも小規模宅地等の特例や、最近では企業承継円滑化法の適用など相続税の評価計算や課税の際に特例が利用できることが増えてきました。フランスにも事業や産業を維持するために、そのような特例がいくつか存在します。

まず最もメジャーなのは事業用資産に関する特例です。事業用資産まで相続税の対象としてしまうと、相続税のために破綻する事業者が多数出てしまいかねません。
そこではフランスでは、商業・工業・農業又は自由業を行う事業用資産又は株式は、一定の要件を満たすとこうした資産への相続税が75%免除されるのです。
また森林や農地に関しても流石農業大国というべきかきちんと免除規定が存在します。

申告や納付の手続き

相続税の申告期限は日本は相続時から10ヶ月ですが、フランスでは申告期限までは被相続人の死亡日(相続時)から6ヶ月です。また申告期限までに納税も行わなければならないというのは日本をはじめとした他の国と同じです。
また一定の条件を満たし、将来の支払い能力が認められた場合は分割納税も可能です(ただし延滞税の類が発生します)。

以上、フランスの相続税制の概要をお届けしました。


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